「割り算」の時代に生きるビジネスマンの皆様へ
ここまで3回にわたり、皆さんが苦手とする「計算」をテーマにエッセンスをお伝えしてまいりました。
1.「計算が苦手」をどう克服するか
2.「%」の計算がサクサクできるコツ
3.大きな“桁”が暗算できる簡単法則
いったん締めくくる意味で、最後に現代のビジネスパーソンがもっとも必要な計算とは何かをお伝えします。そしてその説明をするためのキーワードは、「時代」です。
かつて世の中は「足し算」の時代でした。何でもコツコツ丁寧にやって積み上げていけば誰もが幸福になれました。ところがITの普及などにより、世の中は加速度的に変化をしていきます。つまり「掛け算」の時代。ひとつずつ丁寧に、よりも2倍、10倍することが良しとされる時代です。
ところがそこから「引き算」の時代が始まります。モノが溢れ変える世の中。本当に必要なものだけを残し、余計なものは切り捨てる発想が良しとされる時代です。片付けに関する書籍がベストセラーになったり、「フランス人は10着しか服を持たない」といったフレーズが女性の心に響いたり、紙1枚でまとめる技術といったビジネススキルが流行したり。これらすべて、「引き算」の発想です。
ではこれからはどんな時代になるのでしょう。「生産性」といったトレンドワードがひとつヒントになります。女性の生き方に関しても家事・育児・仕事… うまくバランスをとりながらいかに効率的に進めていくかが重要になる時代です。実はこの生産性や効率。これは「割り算」で考える概念なのです。つまりこれからは「割り算」が主役の時代になります。この連載の第4回でお伝えしたことを思い出しましょう。
あなたの仕事の「生産性」はどんなコトバで表現できるでしょう。人によって生産性の定義は異なりますが、仮に営業パーソンであれば受注した売上高に対して要した時間が生産性と定義できるかもしれません。
生産性=売上高÷時間
このように「もっと生産性を高める」「もっと効率よく生きる」といった考え方は、本質的には「割り算で考える」と言っていることと同じなのです。
もしあなたがビジネスマンなら、これからますます「生産性」「効率化」を求められるようになります。そのとき、実際に「生産性が上がりました」「効率化できました」と説明し、評価されるためには必ず割り算の数値が必要になるはずです。整理すれば、このようになります。
かつて:単純な足し算の結果が大きい方が良いとされた
これから:割り算の結果が大きいほうが良いとされる
ぜひ今から自分がするべき効率化に必要な数値は何かを考え、それを実際に定点観測することをやってみてください。たとえば事務職なら、このような割り算がこれから求められる計算かもしれません。
(事務職の効率)=(処理した案件の数)÷(勤務時間)
あるいはマーケティング職ならこのような数字の向上がより求められるかもしれません。
(マーケティング職の効率)=(売上高)÷(広告宣伝費)
もちろんこれら「割り算」で考えることは、これまでも重要なものでした。しかし、その重要性がさらに高まる世の中になるということ。断言しますが、ちゃんと割り算で考えるビジネスパーソンが活躍できる時代になるのです。
まとめます。これまでご紹介した「%」の計算や桁の大きい計算も重要なビジネススキルでした。でも、もっとも大切な計算は「割り算」と考えましょう。そして少しだけ考えてみてはいかがでしょうか。
あなたの仕事がもっとうまくいくためには、どんな割り算で考えると良いでしょう?
あなたの人生がもっと豊かになるためには、どんな割り算で考えると良いでしょう?
「計算」のお話はいったんここまで。次回からは新しいテーマで数字とのうまい付き合い方をお伝えしてまいります。
深沢真太郎 ビジネス数学の専門家/人材教育コンサルタント
深沢真太郎 ビジネス数学の専門家/人材教育コンサルタント
BMコンサルティング株式会社代表取締役/多摩大学非常勤講師/理学修士(数学)
ビジネスパーソンの思考力や数字力を鍛える「ビジネス数学」を提唱し人財育成に従事。著作多数。
文化放送「The News Masters TOKYO」ニュースマスター
ラジオ『深沢真太郎のビジネス数学カフェ』パーソナリティ
パールハーバープロダクション所属(文化人タレント)
国内初のビジネス数学検定1級AAA認定者
公式チャンネル「ビジネス数学TV」