「疾風に勁草を知る」の意味と読み方
「疾風に勁草を知る」という言葉をご存じですか? すぐに意味や読み方がわかる人はそれほど多くないでしょう。使われている漢字も、少し難しそうですよね。
「疾風に勁草を知る」は、普段なかなか見聞きしない言葉です。使うこともあまりないかもしれませんが、意味や読み方を調べてみました。「疾風」「勁草」についても、それぞれの意味を見ていきましょう。
辞書で調べた意味と読み方
疾風に勁草を知る
読み方:しっぷうにけいそうをしる
《「後漢書」王覇伝から》激しい風が吹いてはじめて丈夫な草が見分けられる。苦難にあってはじめて、その人の節操の堅さや意志の強さがわかるということ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
苦しいことや困難なことが生じたとき、その人がどれだけ強い意志を持っているかがわかります。自分の信じることや考え、何かをしたいと思う気持ちを強く持ち続けることができれば、さまざまなことが変わるでしょう。
「疾風に勁草を知る」が意味するのは、まさにそのこと。苦難が生じて初めて、その人の強さや賢さがわかることを表しているのです。
「疾風」「勁草」をさらにくわしく
「疾風に勁草を知る」にある「疾風」「勁草」についても意味を確認していきましょう。
「疾風」とは、急に激しく吹く風のこと。この意味が転じて、物事が早いことのたとえとして用いることがあります。
「勁草」は、風雪に耐える強い草を表し、それが転じて、思想や節操が堅固なことのたとえとして使われることも。
「疾風に勁草を知る」は、「疾風」は急に激しく吹く風、「勁草」は思想や節操が堅固なことを意味します。どちらの言葉も、意味や読み方を把握しておくといいですね。
「疾風に勁草を知る」の由来
「疾風に勁草を知る」の由来について見ていきましょう。由来とされているのは、『後漢書(ごかんじょ)』です。
中国の書物が由来
「疾風に勁草を知る」は、中国・後漢の歴史を記した書である『後漢書』のエピソードが由来。その内容を紹介しましょう。
新王朝を倒すために戦っていた豪族の劉秀(りゅうしゅう)でしたが、戦況は不利になる一方。周りの兵士は次々と逃げ出してしまいました。しかし、劉秀は強い忠誠心と堅い節操を持ち続け、最後まで一人で戦います。
この時、劉秀は一人残った王覇に向かって「疾風に勁草を知る」と言ったそうです。その後、劉秀は王覇の助けもあり、天下を統一。後漢王朝を開きました。このエピソードから、「疾風に勁草を知る」は知られるようになったとされています。
困難な状況に陥ると、それまでと態度を変える人や、簡単に逃げ出す人、他人に責任転嫁をして裏切る人などが出てきます。そうせざるをえない状況になることもあるでしょう。
しかし、どのような困難が生じても、逃げずに自分の考えや思想などを貫こうとする人もいます。「疾風に勁草を知る」が表すのは、そのような人といえるでしょう。
「疾風勁草」と書くことも
「疾風に勁草を知る」は、「疾風勁草」と四字熟語で表すことがあります。読み方は「しっぷうけいそう」。意味や使い方は「疾風に勁草を知る」と同じと考えて問題ありません。「疾風勁草を知る」のように使うことが多いでしょう。
「疾風に勁草を知る」の使い方
ここからは、「疾風に勁草を知る」を日常の中でどう使うか見ていきましょう。例文を紹介しますので、参考にしてくださいね。
《例1》わが社のトップ営業マンである先輩は、大手企業からのヘッドハンティングを断った。社長とともにこの会社を大きくしたいからだそうだ。まさに、疾風に勁草を知るだと感じた。
優秀な人材は、ヘッドハンティングされることがありますよね。現状よりもいい条件になることが多いので、転職する人は多いでしょう。例文は、そのような誘いがあったけれど、断った先輩について述べています。
「社長とともに会社を大きくしたい」という大きな目標が、その人の原動力なのでしょうね。
《例2》昨年の業績低迷は大変で、人材流出もあり厳しい状況だった。しかし、疾風に勁草を知る機会でもあり、今は意欲のある社員が残ってくれている。
不況にあえぐ企業は多いもの。業績低迷に陥り、なんとか脱しようと奮闘している経営陣もいるでしょう。業績が低迷すると、避けられないのが人材流出です。最近では、人材不足で倒産する企業もありますよね。
例文では、そのような危機を経て、やる気のある社員が残ってくれている現状を述べています。
注意点
「疾風に勁草を知る」を使う際に注意したいのが、読み間違いや書き間違いです。日常的に使わない言葉が含まれていますので、間違いのないようにしたいですね。変換ミスがないかどうかも、意識するようにしてください。
「疾風に勁草を知る」と似た言葉
「疾風に勁草を知る」と似た言葉を紹介します。「年寒くして松柏の凋むに後るるを知る」を見ていきましょう。
「年寒くして松柏の凋むに後るるを知る」
寒い冬にこそ、他の植物がしおれても、松や柏(このてがしわ)は緑を保っていることがわかるという意味の「年寒くして松柏の凋むに後るるを知る」。
転じて、人の真価は艱難(かんなん)にあって初めて知ることができるという意味になります。読み方は「としさむくしてしょうはくのしぼむにおくるるをしる」。
「真価」は、本当の値打ちのこと。物や人のもつ心の価値や能力を指します。「艱難」とは、困難にあい、苦しみ悩むことという意味。物や人のもつ本当の価値や能力は、困難が生じて苦しみ悩むことで初めて知ることができることを表します。
《例文》経営者だった祖父がよく言っていたのは、「年寒くして松柏の凋むに後るるを知る」。苦しいときや、窮地に追い込まれたときほど、その人の真の人間性がわかると教えてもらった。
「疾風に勁草を知る」に似た意味を持つことがわかりますね。どちらの言葉も、苦しいときほど人としての真価が問われることを表しているといえます。
最後に
「疾風に勁草を知る」について、言葉の意味や由来、使い方、似た言葉をまとめました。言葉自体は難しいと感じるかもしれませんが、意味を知ると日常で使う場面がありそうですよね。
人の真価が問われるのは、平穏な状況ではなく、苦難や困難が生じたときだと教えてくれる言葉です。人を見極めるときはもちろん、自分に対する戒めの言葉として把握しておくのもいいですね。
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