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2024.05.21

ことわざ「弘法にも筆の誤り」とは? 使い方や言い換え表現を解説

「弘法にも筆の誤り」とは、「名人や達人でも時には失敗することのたとえ」。書道の達人である平安時代の名僧・空海に由来のあることわざです。本記事では、言葉の意味や使い方、似た意味を持つことわざを解説します。

いつもなら簡単にできるはずなのに、今日にかぎって失敗してしまった! という経験はありませんか? 得意なことであればこそ、「どうしてあの時ミスをしてしまったんだろう…」と悔やむこともあるかもしれません。

そんな時に、「弘法にも筆の誤り」ということわざを知っておけば、「失敗しても仕方ない」と気持ちを切り替えられるようになるはずです。

本記事では、「弘法にも筆の誤り」の意味や使い方、似た意味を持つことわざを解説します。

「弘法にも筆の誤り」の意味

「弘法にも筆の誤り」は、「こうぼうにもふでのあやまり」と読みます。一体どんな意味なのか辞書で確認してみましょう。

弘法大師のような書の名人でも、書き損じることがある。その道に長じた人でも時には失敗をすることがあるというたとえ。猿も木から落ちる。

『デジタル大辞泉』(小学館)より引用

書道に優れた弘法大師でも間違えることはあるのだから、どんな名人や達人でも失敗しても仕方ないという意味ですね。

ちなみに弘法大師とは、真言宗の開祖・空海のこと。弘法大師は、能書(字を書く技術が高いこと)で知られ、嵯峨天皇、橘逸勢(たちばなのはやなり)と共に三筆と称されました。弘法大師は漢詩文にも優れ、左右の手足と口に5本の筆を持って一度に5行書き、「五筆和尚」とも呼ばれたとか。

(c) Adobe Stock

由来

そんな数多くの伝説が残る弘法大師ですが、一体何を間違えたのでしょうか? そのエピソードは、『今昔物語』に収められています。

大師は、大内裏の応天門の扁額を書いた時、書き終えて掲げられた扁額の「應」の字に、点が欠けていることに気がつきました。そこで、なんと額に筆を投げつけて、点を打ったと伝えられています。

歴史に名を残す天才は、間違いの直し方も普通ではありませんね。ただ、「こんなにすごい人でも間違えることがある」と思えば、少し気が楽になるのではないでしょうか?

使い方を例文でチェック!

「弘法にも筆の誤り」は、会話の中でどのように使えば良いのでしょうか? さっそく例文で確認していきましょう。

1:しっかり者の田中さんが書類を忘れてくるなんて、弘法にも筆の誤りですね。

普段抜け目なく仕事をする人が、今日にかぎって書類を忘れてきた! ということもあるでしょう。そんな時に、例文のように伝えることで、「〇〇さんがミスをするなんて珍しい」という意味を伝えられますね。

2:チームの得点王のA選手がシュートを外すなんて、弘法にも筆の誤りだね。

優秀なスポーツ選手が珍しく失敗をした時にも、例文のように表現することができます。どんなに優れた人でも、コンディンションに波があるもの。どうも調子が出ない、という時期には、このような簡単なミスをしてしまうこともあるでしょうね。

(c) Adobe Stock

類語や言い換え表現は?

どんな名人でも失敗するという意味を持つことわざは他にも! ここでは、「猿も木から落ちる」「河童の川流れ」「天狗の飛び損い」をチェックしていきましょう。

1:猿も木から落ちる

「猿も木から落ちる」の意味を辞書で確認してみましょう。

木登りがじょうずな猿でも時には誤って落ちる。その道にすぐれた者でも、時には失敗することがあるということのたとえ。弘法にも筆の誤り。上手(じょうず)の手から水が漏れる。

『デジタル大辞泉』(小学館)より引用

猿といえば、木登りが得意でどんなに高い木でも、いとも簡単に登ってしまうイメージがありますよね。そんな猿でも、たまには木から落ちることもあるのだから、ミスをしても仕方ないという意味で用いられます。ただし、相手を猿に例えることになるので、気を悪くされる可能性も! 使う際は相手に配慮したいですね。

(例文)
・得意の短距離走で転んで落ち込んでいたら、友達から「猿も木から落ちるっていうし、仕方ないよ」と言われた。

(c) Adobe Stock

2:河童の川流れ

「河童の川流れ」はどんな意味でしょうか?

泳ぎのうまい河童でも、水に押し流されることがある。その道の名人でも、時には失敗することがあることのたとえ。弘法にも筆の誤り。猿も木から落ちる。

『デジタル大辞泉』(小学館)より引用

河童は空想上の生き物で、頭に皿を乗せ、背中に甲羅を背負っている姿がおなじみですね。水辺を好み、指の間には水かきがあり、泳ぎが得意だと言います。そんな河童でも、たまに水に流されることがあるということから、転じて名人でも失敗することのたとえとして使われるようですね。

(例文)
・いつも成功するところで、ミスをしてしまった。まるで河童の川流れだ。

3:天狗の飛び損い

「天狗の飛び損い(てんぐのとびそこない)」とは、日頃自慢している者でも、失敗することがあるという意味。天狗は顔が赤く、鼻が長いのが特徴ですが、翼があり空を飛ぶことができるのだとか。得意なことはつい他人に自慢してしまいがちですが、失敗したら格好がつきませんよね…。

(例文)
・計算が得意だと威張っていたB君だが、数学のテストで赤点を取っていた。これでは天狗の飛び損いだね。

英語表現は?

「弘法にも筆の誤り」と同じようなニュアンスを持つ英語のことわざを紹介します。「Homer sometimes nods.」。ここで出てくるHomer(ホメロス/ホーマー)とは、紀元前9世紀のギリシアの叙事詩人のこと。

ホメロスでも、時には居眠りをして書いたような凡句が見受けられることから、このことわざが生まれたようです。どこの国にも、似たような言葉はあるものですね。

最後に

「弘法にも筆の誤り」とは、「どんな名人や達人でも時に失敗することがある」というたとえです。同じ意味を持つことわざもいくつかあるので、合わせて覚えてみてください。失敗してめげそうになった時こそ、本記事で紹介した言葉を思い出して自分を励ましてみてくださいね。

TOP画像/(c) Adobe Stock

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