虚心坦懐とは?
虚心坦懐は「きょしんたんかい」と読み、先入観やとらわれがなく、素直な状態を指します。「虚心」と「坦懐」という2つの熟語を組み合わせた言葉です。
きょしん‐たんかい【虚心×坦懐】
出典:小学館 デジタル大辞泉
[名・形動]何のわだかまりもないすなおな心で、物事にのぞむこと。また、そのさま。「虚心坦懐に話し合う」
ここでは、虚心坦懐の意味や言葉の由来、使う場面を解説します。
言葉の由来
虚心坦懐の「虚心」は「何もない」という意味の「虚」と心を合わせ、「何のこだわりもない、素直な状態の心」を意味します。
「坦懐」の「坦」は、「穏やか」という意味で、「心の中」を指す「懐」と合わせて「物事にこだわらず、わだかまりのないこと」という意味になります。
これら2つの熟語を組み合わせた虚心坦懐は、平穏で素直な心を表すものといえるでしょう。
使う場面
虚心坦懐は日常のシーンではあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、ビジネスではスピーチや会議などの場面で使われることが少なくありません。
スピーチでは、経営者や上司が社員・部下に向け、心がけとして虚心坦懐について伝えることもあるでしょう。座右の銘として紹介することがあるかもしれません。また、会議では「話し合いを虚心坦懐に行う」という表現で使われることもあります。
虚心坦懐の例文
虚心坦懐を使った例文をいくつか紹介します。具体的な文章の中で、虚心坦懐の意味を理解しましょう。
・これまでいろいろなことがありましたが、本日は虚心坦懐の気持ちで話し合いましょう
・初めての営業で緊張するが、虚心坦懐の心境でのぞみたい
・虚心坦懐に話し合える友人がいると、悩みなども相談できる
・これからさまざまなことがあると思うが、何があっても虚心坦懐の気持ちを忘れないようにしたい
・両社は虚心坦懐に意見交換を行い、無事に契約を成立させた
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虚心坦懐と似た四字熟語
虚心坦懐と似た言葉に、次のような四字熟語があげられます。
・明鏡止水(めいきょうしすい)
・自由闊達(じゆうかったつ)
・誠心誠意(せいしんせいい)
どの四字熟語も、虚心坦懐と同じく穏やかな心境を表す言葉です。言葉のニュアンスはそれぞれ異なるため、シーンごとに適切な言葉を選んで使うとよいでしょう。
ここでは、虚心坦懐と似た四字熟語を紹介します。
明鏡止水
明鏡止水(めいきょうしすい)とは、わだかまりがなく澄みきった静かな心の状態を意味する言葉です。明鏡止水の「明鏡」は、澄んで曇りのない鏡のことで、「止水」は止まっているように見えるほど静かな水を指します。これらをたとえに、穏やかな心境を表現しています。
〈例文〉
・彼は明鏡止水を座右の銘としており、いつも穏やかな気持ちで過ごすことを心がけている
・試合には明鏡止水の心境でのぞんだ結果、実力を発揮して優勝できた
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自由闊達
自由闊達(じゆうかったつ)とは、物事にこだわらず、心が広くのびのびとしていることを指します。「闊達」とは、度量が広く、小さいことにこだわらないという意味です。「闊達な性格」など、闊達だけで使われることもあります。
〈例文〉
・彼は高い倍率を勝ち抜いて入社した会社を早々に辞め、自分で会社を設立した。自由闊達な精神を持つ彼のことだから、おそらく成功できるだろう
・我が社は自由闊達な社風があり、社員も生き生きとやりがいを持って仕事をしています
誠心誠意
誠心誠意は、真心がこもっていることを表す言葉です。嘘や偽りなく、常に真心を込めて物事にあたることを指します。
「誠心」と「誠意」という同じような言葉をつなげ、意味合いを強調している言葉です。意気込みを伝えるときや、こちらの落ち度で謝罪をするときなどに使われます。
〈例文〉
・お客様には、今後とも誠心誠意のサービスを提供してまいります
・この度はご迷惑をおかけして申し訳ございません。誠心誠意お詫び申し上げます
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虚心坦懐の対義語
虚心坦懐には、次のような対照的表現があります。
・疑心暗鬼(ぎしんあんき)
・猜疑心(さいぎしん)
どちらも疑いのある不安な心を表し、わだかまりのない平穏な心を表す虚心坦懐とは反対の意味といえるでしょう。
ここでは、虚心坦懐の対義語を2つ紹介します。
疑心暗鬼
疑心暗鬼とは、疑いの心があると、なんでもないことも恐れたり不安になったりするという意味の四字熟語です。「疑心」は仏教用語で、真理を疑う心を指します。「暗鬼」は、妄想から引き起こされる恐れや疑いという意味です。
疑う心があると、暗闇の中に鬼や亡霊が見えてしまうということからきています。中国の故事にある「疑心暗鬼を生ず」が言葉の由来です。
〈例文〉
・彼は長い付き合いで信頼していた友人に裏切られ、人間関係に対して疑心暗鬼になっている
・メンバーの中に犯人がいるとわかり、誰もが疑心暗鬼の心境に陥ってしまった
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猜疑心
猜疑心とは、相手の言葉や行動を疑う気持ちのことです。「猜疑心が強い」「猜疑心の塊」という表現をします。人の親切な言動を素直に受け取ることができず、何か裏があるのではないかと疑うような場合を指します。
「猜疑心」の「猜」は「妬む・疑う」という意味があり、それに「疑」という漢字を合わせ、疑いの気持ちが強いことを表す言葉です。
〈例文〉
・彼は日頃から猜疑心が強く、誰に対しても自分のプライベートに関する話をしたことがない
・彼女は夫に浮気をされてからは猜疑心の塊のようになり、夫の行動にいつも疑いを抱いている
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虚心坦懐は心にわだかまりのない状態
虚心坦懐はわだかまりのない、穏やかな心を指す言葉です。「虚心坦懐の気持ちで取り組む」といった使い方をします。よく似た言葉としてあげられるのが、明鏡止水や自由闊達です。
一方、対照的な表現には疑心暗鬼や猜疑心といった言葉があります。それぞれの言葉も一緒に覚えておくと、表現の幅が広がるでしょう。例文も参考にしながら、虚心坦懐を正しく使用してください。
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