気がつけば、また同じことを考えてた…… ってことはありませんか?
せっかく楽しい時間を過ごしていても、心がふっと過去の暗い思い出にもっていかれたり、グルグル同じことを考えてしまったり…… 誰しも、そんな心ここにあらずの状態になることはあるはず。
そのような心の状態を脱して、自分がいま本当にやるべきこと、やりたいことができるようになる心理療法こそ、1980年代に米国で生まれ、WHO(世界保健機構)もストレス対策として推奨している“ACT”。
そこで、このACTの理論を豊富なイラストでわかりやすく解説している書籍『ACT 不安・ストレスとうまくやる メンタルエクササイズ』より、ACTの考え方や、自分でできるメンタルエクササイズをご紹介!
※書籍より一部引用・再編集してお届けします
前回(第1回目)の記事はこちら>>人間は頭の中で問題をこねくり回す! 悩みを生み出しているのは自分の言葉だった……
私たちは知らず知らずのうちに“フュージョン”している
フュージョンとは、何かと何かが溶けて混じり合い、一つになってしまったような状態。日本語に訳すと「融合」となります。
たとえば五円玉は、銅と亜鉛を混ぜ合わせてつくった真鍮(黄銅)という金属です。五円玉を見て「銅と亜鉛が混じっている」とは少しも思わず、「金色だから金かもしれない」などと思ってしまいますよね。これがフュージョンです。
同じように、私たちは私たちのマインドとフュージョンしがちです。
たとえば、「私は太っている。だから彼に愛されるはずがない」というのも認知的なフュージョンです。
太っていることと、愛されないことは別問題です。にもかかわらず、それが絶対的に正しいことだと言じて疑わない、それを「認知的フユージョン」といいます。
前回の記事で述べたように、自分の中にあるマインドさんはいろんなことをつぶやきますが、「〇〇が悪い」「〇〇のせいだ」「〇〇が怖くてしかたない」などブラックなつぶやきをする黒マインドさんには注意が必要です。
黒マインドさんの考えにフェージョンしてしまい、それを信じ切ってしまうと、ほかの方向から物事を考えることができなくなってしまうのです。
「妖怪マインドさん」の着ぐるみを脱ごう
黒マインドさんとフュージョンしてしまっても、私たちはそれになかなか気づくことはできません。
だってそれが自分の考えだと、それが正しいことなのだと、思い込んでいるからです。
イメージしてください。夢の国のねずみさんや、ゆるキャラさんたちの姿を。
外見は世界的に有名なねずみや、ご当地の威信をかけたオリジナルキャラクターですが、中にいるのは熟練のダンサーさんだったり、自治体の職員だったりします。
でも、中の人の姿は見えません。だから私たちは中の人とキャラクターをフュージョンさせてしまいます。
同じように私たちも、疑心、固定観念、思い込み、自信のなさにとりつかれてしまいます。妖怪になってしまったマインドさんの着ぐるみと、すっかりフュージョンしてしまっている状態です。
その着ぐるみを脱ぐのが、脱フュージョンなのです。でも、その前にもっと大事なことがあります。
それは自分が着ぐるみを着ていることに気づくこと。実はこれが難しいのです。
「思考は、着ぐるみでしかない」「思考は、思考でしかない」。そう考えようとしても、マインドさんは「いやいや、なに言ってんのさ。私は私でしょ?」と主張します。
「ACTなんてバカバカしいにもほどがある。着ぐるみってなによ、それ。くだらない」と言ってきます。
その声を聞き流して、着ぐるみを脱ぐのってけっこう大変なのです。
そこで、このようなエクササイズをしてみてください。
たとえば、「私は母親失格だ」と思ったら、語尾に「と考えている」とつけ加えてみること。
「私は母親失格だ、と考えている」です。それだけでいいんです。
これだけで、ほんのわずかですが、思考との距離ができます。
ほかの例も同じ。「きっと失敗する」ではなく、「きっと失敗する、と自分は思っているんだなぁ」に変換するのです。
そして着ぐるみを脱いだら、ちゃんと見てみてくださいね。それがどんな着ぐるみなのか、いつどんなときに自分をのっとり、自分にどんな影響を与えていたのか。
その確認こそが、マインドさんと距離をとるために必要なことなのです。
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TOP画像/(c)Adobe Stock
『ACT 不安・ストレスとうまくやる メンタルエクササイズ』(武藤崇 著/主婦の友社)
ACTは、ストレス対策として、WHO(世界保健機関)も推奨する注目の心理療法。自分ですぐ実践できるよう、イラスト満載で、世界一わかりやすく解説した画期的な1冊です。