「心のSOSに耳を傾ける」メンタルケアの教科書
毎日を忙しく過ごす私たちの周りには、心の空模様を曇らすモヤモヤやイライラがそこかしこに散らばっています。そこで、読者から寄せられた心のお悩みに、元サラリーマンの精神科医がお答え! ストレスを軽くするコツを、Q&A形式で紹介します。
【仕事編】働く私たちの、心の“しんどみ” Q&A
Q. 業務量が多すぎます…
「転職して配属された部署の上司が過度な業務を課してきて、毎日3〜4時間残業をする日々…。業務削減の相談にも応じてくれません」(34歳・製薬)
A. 上司に話してらちがあかなければ、人事や産業医に相談を
毎日3~4時間ということは、月に換算すると60~80時間の残業、ということですね。まだ転職したばかりということなら、上司の期待値の裏返し、ということも考えられます。ラクではないでしょうが、今は自身に必要な成長の機会と考え、踏ん張ってみるのもアリだと思います。
もちろん、長期化するようなら改善が必要。直属の上司に言っても改善が見込めないようなら、人事や労務担当に働きかけたり、産業医に直接相談したりする方法も。適切な相談先があると思うので、一度調べてみてください。
Q. 転職後、自分の仕事のできなさにガックリ
「英語ができない&IT未経験なのに、外資系IT企業に転職してしまった。できない仕事が多すぎて、毎日不安と焦りが募ります」(23歳・エンジニア)
A. できるようになる! でも、時間はかかるかも
心配事が「仕事ができるようになるか」なら、「できるようになるので安心して」と答えます。ただ、SNSなど“デキる人”が簡単に目に入る今、自分も一足飛びに活躍できると錯覚しがちですが、実際に経験を積むには時間もかかるし根気も必要。
「早く活躍する」のが目的なら、今あるスキルを生かしたほうが手っ取り早い。なぜ転職したのか、目指す自分像はなんなのか、考え直してみて。
Q. 後輩との距離のとり方に迷います
「後輩のケアをしっかりしたいけれど、あまり踏み込むとハラスメントと思われそう。私も詮索されるのが苦手なタイプなので迷います」(30歳・IT)
A. まずは後輩のキャラを知ることから
何かと“ハラスメント”にされないか、ビクビクする世の中だけど、ハラスメントは相手と信頼関係があれば起こらない問題。一概に「プライベートに踏み込むのはNG」と考えるのはもったいないと思います。
大切なのは、後輩がどんな性格か考えること。もし詮索が苦手な性格なら「私もそうなの~」なんて言ってほどよい距離感を保てばいい。逆にコミュニケーションをしっかりとりたそうなら積極的に関わってあげて。
後輩のペースに合わせるのが大変なら、話し好きな同僚の力を借りるといいですよ。
Q. フルリモートで働くのがしんどいです
「コロナ禍でフルリモート勤務になりました。通勤がないぶんラクなのですが、孤立感があり、この働き方が自分に向いていない気がします」(34歳・事務)
A. たまの出社を提案してみたら?
相談者の方も気づいているとおり、リモートワークには向き不向きがあります。“孤立感がある”ということなら、業務自体に問題がないにしても、今の状況が続けばしんどさが増えていってしまうと思います。
まずは「月1度はリアルでミーティングをしませんか?」など職場に提案してみましょう。それが叶わないなら、孤立感なく働ける環境への転職を視野に入れたほうが、健全だと思います。
教えてくださったのは…
精神科医・産業医|尾林誉史(おばやし・たかふみ)
1975年生まれ。VISION PARTNERメンタルクリニック四谷院長。東京大学理学部卒業後、リクルートに入社。30歳で退社し弘前大学医学部を経て医師に。著書に『元サラリーマンの精神科医が教える 働く人のためのメンタルヘルス術』(あさ出版)など。
2023年Oggi5月号「働く私のメンタルヘルス」より
撮影/河内 彩 ラスト/オカヤイヅミ 構成/佐々木 恵・酒井亜希子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部