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近年、再注目されている「発酵食品」
私たちの食卓に馴染みの深い、和食。
今から約9年前の2013年には、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されるという快挙を成し遂げたことも、まだ記憶に新しいのではないでしょうか。それ以降、日本の伝統的な食文化は、世界で注目を集めるようになったのですが、その中心にあるのが“発酵食品”だといっても過言ではありません。
なんといっても、発酵食品の歴史は非常に古い! 自然の成り行きで偶然生まれた発酵食品は、人類の歴史が始まった当初から存在していると考えられているので、これには驚かされますよね。
また、湿度が高い日本は発酵に適した環境でもあり、世界的にも例がないほど多くの発酵食品が存在するいわば“発酵食品大国”。調味料から漬物、水産発酵食品にいたるまで、日本国内における発酵食品の数は600種類を超えると言われています。
ところでみなさんは、発酵食品の魅力が今再び注目されていることをご存じですか?
街中には、発酵食品専門店やカフェなども増え、これまで以上に発酵食品を取り入れやすくなった背景には、ここ数年における人々の健康意識の高まりが大きく関係しているのでしょう。
では、発酵食品とはそもそもどういう食品で、取り入れることでどのような健康効果に期待できるのでしょうか?
そもそも、発酵食品とは
発酵とは、一般にカビ・酵母・細菌などの微生物が、炭水化物やタンパク質などの有機化合物を分解する過程で、人間にとって有益な物質を作りだす現象のこと。そして、発酵食品とは、それらの発酵をもたらす微生物の働きによって作られた食品のこと。もともとは、保存食として誕生しました。
それからの長い歴史の中で、各地の食材・気候風土を反映しながら改良が重ねられた結果、今のようにバラエティに富んだ発酵食品が世に出まわるようになったというわけなのです。
その代表的なものは、以下のとおり。
・カビ… 甘酒、鰹節
・酵母… ビール、ワイン、パン
・細菌… 納豆、ヨーグルト、キムチ
ほかにも、味噌や醤油、酢、みりん、日本酒、焼酎、ブルーチーズ、カマンベールチーズなどといった発酵食品は、これらのうちの複数の微生物が関わってできたものに分類されます。
それと、発酵と並んでよく耳にする“腐敗”についても気になるところですよね。
実は、腐敗も科学的には発酵とほぼ同じ現象なのですが、発酵のように風味がよくなったり、体に有益な現象をもたらしたりするのではなく、味が悪くなったり、においが不快になったり、さらには毒素が産生されて体にとって有害な現象をもたらしたりするのが腐敗…。
発酵と腐敗は、似て非なるものなのです。
発酵食品を取り入れることで期待できる効果
それでは、発酵食品を取り入れることで、どのような効果に期待できるのかを具体的にみていきましょう。
【1】腸内環境の改善
腸内環境が改善されると、お通じがよくなるだけでなく、体内に溜まった老廃物を排出する効果にも期待できます。ぽっこりお腹がすっきりしたり、肌の調子が上向きになったりするのは、そのためです。
さらには、腸壁には全身の免疫細胞のうち約60~70%が集中しています。腸が体の免疫機能を担っているため、腸内環境が良好であれば免疫力も高く、悪化していると免疫力の低下につながるでしょう。ウイルスなどに負けない体を作るためにも、腸内環境を改善することが大きなカギとなるのです。
そこで取り入れたいのが、ヨーグルトや漬物などに多量に含まれている乳酸菌。この乳酸菌自体が善玉菌であるだけでなく、ほかの善玉菌を助ける働きを持ちます。納豆に含まれる納豆菌には、悪玉菌の働きを抑制する力が認められており、これらの発酵食品を取り入れることによって、腸内環境を改善する効果に期待できるでしょう。
【2】代謝アップ
代謝を促進するビタミンB群が豊富なところも、発酵食品の特徴です。納豆に含まれるビタミンB2や、米麹に含まれるビタミンB1、B2、B6、パントテン酸などは、エネルギーを生み出したり、消費したりするのによく働いてくれます。
ダイエット中の方にとっても、これらの発酵食品は強い味方になってくれるでしょう。
【3】ストレスの軽減
甘酒やヨーグルト、漬物には、GABA(ギャバ)という神経伝達物質が多く含まれています。GABAには、興奮した神経をしずめてイライラを和らげたり、精神をリラックスさせたりする抗ストレス作用が認められているので、気持ちを落ち着けたいときにもおすすめです。
【4】料理の風味がよくなる
食べ物を発酵させることによって、アミノ酸や核酸といったうま味と関係する成分がグッと増加。加えて、微生物の作用によって生成される香気成分が、独特な香りをもたらしてくれます。
発酵食品や発酵調味料の使用によって、いつもの料理の風味がさらによくなるでしょう。
取り入れる頻度の目安
このように、健やかな体作りに欠かせない要素が詰まったうえに、食べ物の美味しさにまで関与してくる発酵食品。
実際に、取り入れるときのポイントはあるのでしょうか?
まずお伝えしたいのは、発酵食品の効果を引き出すためには、“継続して取り入れる必要がある”ということ。
せっかく口から取り入れた菌の多くも、数日で便と一緒に排出されてしまうからです。そのため、なるべく毎日、続けて発酵食品を食べることが大事になってきます。
とはいっても、自分の体質と合わない発酵食品(特に、乳製品)もあるので、まずは便の状態や体調をチェックしながら2週間ほど続けてみて、改善されれば継続。されなければ、別の発酵食品を試してみるといいでしょう。
発酵食品同士は相性もいいので、食べ合わせの悪さもほぼありません。むしろ、複数の発酵食品を取り入れることで、それぞれのいいものが体内に入ってきます。納豆×キムチや、甘酒×ヨーグルト、味噌(味噌汁)×酒粕など、発酵食品をダブルで組み合わせるのも◎。
ただし、体にいいからといって、発酵食品だけに偏りすぎるのは気を付けたいところ。なかには、塩分が多いものもあるので、毎日の食卓にバランスよく取り入れてみてください。
発酵食品 × 発酵食品のおすすめな組み合わせ
◆納豆 × 醤油麹
納豆のたれの代わりに醤油麹を混ぜると、コクが深まります。
◆味噌 × ヨーグルト
味噌とヨーグルトを1:2の割合で混ぜたたれを作れば、青魚の臭い消しにもなります。
最後に…
残念ながら、“万人の腸に有効な食べ物”というのはないと言われています。
腸内環境の改善や、そのほかの健康効果に期待されている発酵食品も然り。食べ続けているのに、期待するような効果があらわれない、お腹が張る・緩くなったなどの症状がある方は、その食品が体質に合っていなかったり、腸に何かトラブルを抱えていたりすることも考えられるでしょう。
何を食べ続けたら調子がよくなったのか、反対に悪くなったのかを把握して、上手に発酵食品と付き合っていきたいものですね。
ヨガインストラクター/発酵食品ソムリエ 高木沙織
「美」と「健康」を手に入れるためのインナーケア・アウターケアとして、食と運動の両方からのアプローチを得意とする。食では、発酵食品ソムリエやスーパーフードエキスパート、雑穀マイスターなどの資格を有し、運動では、骨盤ヨガ、産前産後ヨガ、筋膜リリースヨガ、Core Power Yoga CPY®といった資格のもと執筆活動やさまざまなイベントクラスを担当。