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漬物大国・日本! そもそも、漬物の役割って?
和食の基本の並べ方は、左手前にご飯、右手前に汁物。そして、左奥から副菜、副々菜、右奥に主菜。その中央に並べられるのが、“漬物”です。
漬物は、これらのさまざまな料理の合間に食べるいわば箸休め的な存在。さっぱりとした味わいで、口の中をすっきりとリセットしてくれて、次に食べる料理の味を引き立たせる和食において欠かせない存在だといっても過言ではありません。
また、日本は世界的にも類を見ないほど、多くの漬物が存在する漬物大国でもあります。その数はなんと、600種類以上! そこからざっくり・大きく分けると、“発酵漬物”か“無発酵漬物”かに分類することができます。
発酵漬物と無発酵漬物の違いは?
発酵漬物は、文字通り乳酸菌や酵母などの微生物によって発酵させた漬物のことをいいます。なかでも、乳酸発酵させた漬物のことを乳酸発酵漬物といい、塩漬けや麹(こうじ)漬け、ぬか漬けなどがその代表例です。
対する無発酵漬物は、発酵をともなわずに酢や醤油といった調味料で味つけをしたものをいい、梅干しや福神漬け、紅ショウガなどが挙げられます。どの漬物も美味しく、彩りも鮮やかで、食卓に花を添えてくれますよね。
そんな数ある漬物のなかから、今回ご紹介するのは乳酸発酵漬物の“ぬか漬け”。
ここ数年、発酵食品の健康効果に注目する方が増えてきました。「自宅でぬか漬けを漬けている」という方も少なくありません。では、ぬか漬けとは、一体どのような漬物なのでしょうか。
発酵漬物「ぬか漬け」って、こんなにすごい!
ぬか漬けとは…
米ぬかと塩水を混ぜて、乳酸発酵させたぬか床に野菜などを漬け込んだもののこと。日本を代表する漬物のひとつで、近年の発酵食品ブームによって、大きな注目を集めている食べ物でもあります。というのも、野菜などを漬け込むことで、ぬかにもともと含まれているビタミンやミネラルが食材に移り、生のまま食べるよりもはるかに栄養価が高くなるから。
例えば、きゅうりをぬか漬けにした場合、疲労回復に働くビタミンB1は、生の状態よりも5~10倍にも増加すると言われています。しかも、ぬか漬けは、一般的に火を通さずそのまま食べますよね。そのため、熱で失われやすい栄養素を効率よく取ることができるのも大きな魅力のひとつです。
ちなみに、食物繊維においては、漬物の水分が塩の浸透圧で抜けることで、同じ重量の野菜と比べて2~4倍に凝縮。加えて、発酵漬物に含まれる乳酸菌は、過酷な環境下でも生き抜く力が強いことでも知られており、腸内の善玉菌を増やすとともに、悪玉菌の増殖を抑制するなど、整腸効果にも期待できます。
ぬか床のなかに生息する乳酸菌や酵母などの微生物が、米ぬかに含まれる栄養素を分解しながら活発に増殖を繰り返すことで生まれる独特な香気・風味もまた味わい深く、定期的にかき混ぜることで微生物のバランスを整えておけば、ぬか床そのものを長く使うこともできるでしょう。
ぬか漬けにNGな野菜はない?
ここまでで、ぬか漬けを食べることで、嬉しい健康効果に期待できることがおわかりいただけたかと思います。
次は、どのような野菜がぬか漬けに適しているのかについて。実は、ぬか漬けに向かない野菜はないと言われています。好みの野菜を漬けてOKです。ですが、ぬか漬けを初めて漬ける方は、まずはそのまま漬けることができる野菜がおすすめでしょう。
ぬか漬けに慣れてきたら、塩もみしてから漬ける野菜、茹でてから漬ける野菜など下処理が必要なものに挑戦してみるといいかもしれません。
そのまま漬けることができる野菜(洗って、皮つきのまま漬けることができる)
にんじん、きゅうり、うり、大根、かぶ、キャベツ、ピーマンなど
【下処理アリ】塩もみしてから漬ける野菜(アクやえぐみのある野菜は、塩もみしてから漬ける)
なす、ごぼう、小松菜、ほうれん草、水菜、かぶ・大根の葉など
【下処理アリ】茹でてから漬ける野菜(生で食べるのに適さない硬い野菜は、茹でてから漬ける)
アスパラガス、かぼちゃ、ごぼう、たけのこ、さといも、じゃがいも、カリフラワーなど
それと、もうひとつ大事なのが“漬け時間”。漬け時間の目安は、季節と野菜の種類によって異なるので、覚えておくといいでしょう。
◆漬け時間の目安
夏:柔らかい野菜… 6時間~
夏:硬い野菜… 12時間~
冬:柔らかい野菜… 12時間~
冬:硬い野菜… 24時間~
さて、ここからは、発酵食品ソムリエの資格を持つ筆者が、実際にぬか床を作り、野菜を漬けていきたいと思います。
自家製のぬか漬けに挑戦してみたいと思っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
自家製ぬか床&ぬか漬け作りを写真付きで徹底解説
それでは早速、ぬか床から作っていきましょう。
◆ぬか床の作り方
【材料(2人分の野菜を漬ける場合の目安)】
・炒りぬか:500g
・水:500ml
・塩:50g
・乾燥昆布(5×10cm程度):1/2枚
・乾燥唐辛子:1/2本
・野菜くず(捨て漬け用):適量
・本漬け用野菜:適量
・お好みで日本酒もしくはビール:少量
【作り方】
STEP 1:炒りぬかに水を加えて、混ぜ合わせる
▲水は3回に分けて加え、炒りぬかとしっかり混ぜ合わせましょう。
STEP 2:水を混ぜた炒りぬかに、塩を加えて混ぜ合わせる
▲塩も3回に分けて加え、よく混ぜ合わせましょう。耳たぶくらいの硬さになればOKです。もしくは、あらかじめ塩水を作っておき、それを数回に分けて加えて、混ぜる方法でも○。
STEP 3:ぬか床に乾燥昆布と、乾燥唐辛子を埋める
▲乾燥昆布は、ぬか床にうま味を与えてくれます。乾燥唐辛子は、風味を増す+腐敗防止効果に期待できるでしょう。どちらも初めてぬか床を作るときに入れ、あとは実際に野菜を漬けたときに味が薄くなったり、塩辛くなりすぎたりしたときや、においが気になりだしたときなどに定期的に入れてみてください。
STEP 4:野菜くずを漬ける
▲本漬けをする前に、野菜くずを漬けて、ぬか床に水分と栄養を与えます。1日ごとに新しい野菜くずと交換し、3日間繰り返しましょう。野菜くずは、にんじんの上の部分や、キャベツの外側の硬い葉、大根の皮などでOK。
ぬか床のうま味・風味をより高めたい方は、乾燥昆布・乾燥唐辛子を加える前に、日本酒やビールなどの残り酒を少量加えるのもおすすめ。
STEP 5:ぬか床が完成したら、あとは本漬け用の好みの野菜を漬けるだけ
◆野菜の切り方・漬け方
・にんじん… 皮を残したまま、縦半分・横半分に切る(見た目を美しくしたい場合は、皮をむいてもよい)
・きゅうり… 皮を残したまま、両端をほんの少しだけ切る(塩もみはしても、しなくてもよい)
・なす… ヘタのまわりに切り込みを入れてガクを取り除いたら、縦半分に切り込みを入れる。塩もみをしたら、断面にもぬかを塗り込んでから漬ける
完成したぬか漬けは、水でぬかをしっかりと洗い流してから食べましょう。
※ このとき、野菜の表面に付着した乳酸菌がすべてなくなることはありません。
ぬか床は、冷暗所(夏は冷蔵庫)で保存し、1日1回かき混ぜてくださいね。
自家製のぬか漬けには手間がかかる分、愛着が増し、より一層美味しく食べることができるでしょう。ぜひ、試してみてください。
ヨガインストラクター/発酵食品ソムリエ 高木沙織
「美」と「健康」を手に入れるためのインナーケア・アウターケアとして、食と運動の両方からのアプローチを得意とする。食では、発酵食品ソムリエやスーパーフードエキスパート、雑穀マイスターなどの資格を有し、運動では、骨盤ヨガ、産前産後ヨガ、筋膜リリースヨガ、Core Power Yoga CPY®といった資格のもと執筆活動やさまざまなイベントクラスを担当。