産後の体操は自己判断NG
「出産したら腹筋がなくなった」「ぽっこりお腹が気になる」など、体の大きな変化にとまどう出産後のママさん。腹筋のエクササイズに注目が集まりがちですが、産後の筋力・体力はいきなり取り戻そうとしないことが大切です。妊娠中~出産時の体への負担は計り知れないもの。少しずつ可動域を広げていく簡単な体操メニューを、産後1日目より紹介していきます。ただし、産後の日数はあくまで目安とし、助産師さんと相談しながら無理なく行いましょう。
〈POINT〉
・産後だいぶ経っていても【産後1日目】の体操から始める
・腹筋を使うトレーニングは後回し
・簡単な動きから徐々に体を慣れさせる
・体の感覚を観察しながら無理をしない
・腹筋トレの開始タイミングは助産師さんに相談を
【産後1~4日目】徐々に体を慣らす体操
産後1日目は、準備体操レベルの簡単な呼吸法から。そして、2日目・3日目と、少しずつ可動域を広げていきます。「運動するぞ!」という意気込みよりも、体をリラックスさせる意識が大切。気持ちよく取り組めるストレッチから始めましょう。
【産後1日目】腹式呼吸
体の疲れや緊張を鎮めてリラックス。腹式呼吸は横隔膜の上下運動(腹筋運動)。血流をよくしたり、冷えやむくみ・便秘の解消も期待できます。また、呼吸が浅い人にもおすすめ。
《普段の呼吸は?》
一般的に私たちが日中に行っているのは“胸式呼吸”。肺を広げるようにして呼吸しています。妊娠中は呼吸が浅くなりがち。日中は胸式の“深呼吸”を時折意識しつつ、腹式呼吸のトレーニングも行いましょう。
《腹式呼吸のやり方》
1. 仰向けになり、体の力をゆるめます。
2. お腹に手を乗せて動きを確認。
3. 鼻からゆっくり息を吸いながら、お腹を膨らませていきます。
4. 口からフーッと息をゆっくり吐きながら、お腹をへこませていきます。
◆腹式呼吸がうまくできない場合
昔懐かしいおもちゃ『吹きもどし』。息を吹き込むだけで腹式呼吸ができます。
体を起こした状態や仰向けの状態で『拭きもどし』を使い、お腹の動きを確認しながら感覚をつかみましょう。
懐かしいおもちゃ… じゃない!? 実はアソコにめっちゃ効く♡
【産後2日目】足先のストレッチ
妊娠中の体をずっと支えてくれていた足。負担がかかって凝り固まってたり、動きにくくなっている関節をほぐしてストレッチしましょう。寝ながらゆったりと行い、むくみもやわらげて。
まずは仰向けになって足先を腰幅に開き、左右にゆらゆら動かします。
次に、つま先を左右交互にゆっくり遠くへ伸ばしたり引き寄せたり。足の甲側やアキレス腱をじっくり伸ばすイメージで動かします。
【産後3日目】ガス抜きのポーズ
妊娠中、便秘に悩まされていた人は、便通のペースも取り戻していきたいですよね。ガス抜きのポーズは、便秘がちな人やガスが溜まってお腹が張りやすい人におすすめのエクササイズです。
1. 仰向けになります。
2. 腹部に太ももを引き寄せ、ヒザを抱えたまま呼吸を5回繰り返します。
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【産後4日目】膣トレーニング
産後の体の状態で気になる尿モレ。数ヶ月で回復すると言われていますが、骨盤底筋を鍛えることで回復を早めることが期待できます。
1. 仰向けになり、ひざを立てます。
2.「膣を締める→緩める」を繰り返します。
※キツイと感じる場合は、短い時間から始めましょう。
【産後5~10日目】ちょっぴり負荷をかける体操
さまざまなストレッチを織り交ぜながら継続することで、少しずつ体が慣れてくる5日目。これまでと違う体勢を加えてみたり、ゆっくり負荷をかけていきます。ただし、こちらも助産師さんと相談しながら取り入れてください。
【1】呼吸を深めるストレッチ-1
呼吸が浅くなりやすい妊娠後期。妊娠中の体の歪みが回復していないため、呼吸も浅いままということも少なくありません。無意識に繰り返している呼吸こそ、意識してストレッチしていきましょう。
1. 左側を下にして横向きになり、ひざを軽く曲げます。
2. 腕は肩の高さでまっすぐ前に伸ばし、重ねます。
※腰を反らさず、背中を一直線に保つのがポイント。
3. 上体をゆっくりねじりながら、右腕をうしろに引き、胸を大きく開きます。
※右腕は床につかなくてもOK。そのまま90秒キープします。
※反対側も同様に行いましょう。
【2】呼吸を深めるストレッチ-2
こちらも胸を開き、呼吸を深めるためのストレッチ。テニスボールを使って行います。
1. 肩甲骨の下に、背骨を挟むようにしてテニスボールを2個並べます。
2. そのまま仰向けになり、両手を大きく左右に開いたり、頭上に伸ばしたりしながら、90秒ほど胸を開きましょう。
【3】“下腹ぽっこり”を引き締めるストレッチ
お腹まわりと骨盤底筋群の筋力アップを目指せる、簡単ストレッチです。
1. 仰向けになって、ひざを立てます。
※反り腰の人は、丸めたタオルやクッションを腰の下に置きましょう。
2. 両足を揃え、息を吐きながら右側に倒します。無理のない位置まででOK。
3. 息を吸いながら両足を中央に戻し、また息を吐きながら両足を左側に倒します。[1]~[3]を5回程度繰り返しましょう。
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【4】内ももと股関節のストレッチ
だいぶ体が慣れてきたところで、うつ伏せのストレッチにトライしてみましょう。読書をしながらでもできちゃいます。
1. うつ伏せになり、左ヒザを直角に曲げます。
2. 左足首も直角に曲げるのがポイント。
3. 両ヒジは肩の下につきます。
4. その体勢のまま足のつけ根をゆっくり優しく床に押しつけます。
5. 基本の呼吸を5回行います。
※反対側も同様に。
【5】下半身を引き締めるストレッチ
お腹だけじゃなく、お尻も気になる! という人におすすめの、ヒップリフトトレーニングです。お尻・太ももの裏を鍛えられます。
1. 仰向けになり、両ヒザを90度に曲げて立てます。
2. 無理のないところまで、お尻を持ち上げます。
3. お尻をゆっくりと下ろして、スタートのポジションに戻します。
※10~15回を目安に、2~3セット行いましょう。
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【6】むくみにアプローチするストレッチ
産後にホルモンバランスが乱れたり、育児や家事などで同じ姿勢・体制でいることでむくみやすくなる足。ストレッチには“むくみ対策”も取り入れましょう。
1. 仰向けになり、足を高く上げてブラブラと小刻みに揺らします。足先の力を抜くことがポイント。反り腰の人は、丸めたタオルやクッションを腰に置きましょう。
2. 両足を揃えて高く上げ、つま先を手でつかみ、かかとを天井に向けて突き出します。キツイときはヒザを軽く曲げてもOK。90秒ほどキープしましょう。
【産後1ヶ月頃目安】骨盤まわりの体操
産後の、ゆるんで開いた骨盤を整えるためのおすすめストレッチ。グッズで矯正する方法もありますが、“自分の筋肉で改善する力”を高めることから始めましょう。ストレッチに体が慣れてきた頃、助産師さんに確認の上、取り組んでください。
【1】椅子に座って行うストレッチ
腰痛やお尻のコリにもアプローチ! コリ固まった筋肉をほぐしながら、骨盤の歪みを整えるストレッチです。
1. 丹田に力を入れ、坐骨をまっすぐ立てるようにして椅子に座ったら、足を肩幅に開いて左足首を右ヒザに乗せます。
2. 手を足の上に軽く添え、息を吐きながら上半身を45度くらい前傾。背中をまっすぐに保ち、10秒キープします。
※反対側も同様に行いましょう。
【2】寝たままストレッチ
背中が丸まって姿勢が悪い人は、骨盤が傾いている可能性が! 腰痛を起こす原因にもなりかねません。先ほどの「椅子に座ったストレッチ」か、やりやすい方を取り入れましょう。
1. 仰向けになり、立てたヒザに反対側の足首をのせます。
2. [1]の状態のまま、両手でヒザを抱えて胸に引き寄せます。そのまま3分キープ。
※反対側も同様に行いましょう。
【3】真珠貝のポーズ
骨盤まわりの筋肉をほぐし、血流をアップしながらむくみの解消もサポートするストレッチです。体を前傾させることで、背中や腰もしっかり伸ばせます。
1. あぐらの状態から左足を前に出し、両足のかかとがおへその位置に縦に並ぶようにします。
2. 息を吸い、吐きながら上体を前に倒して両手を前について、3回呼吸。
3. 前傾した状態のまま、体を右に移動させて右斜め前に手をつき、3回呼吸。反対側も同様に行います。
※体が力まない体勢をとるのがポイント。
※無理のないように、足の位置を調整しましょう。
【4】スワンのポーズ
股関節の柔軟性を高めて、下半身の血流・リンパの流れをUP! 長時間の座り仕事などで骨盤の歪みが気になる人におすすめのストレッチです。
1. 先ほどの「真珠貝のポーズ」の[3]の体勢から続けてトライ! 上体を起こし、左足を大きく後ろに引いて足の甲を寝かせます。
2. 息を吸いながら背筋を伸ばし、吐きながら背中を反らせて3回呼吸を。
※ゆっくりとあぐらに戻り、左右の足を入れ替えて反対側も行いましょう。
最後に
産後すぐに始める人も、少したってから始める人も、体操・ストレッチのスタートラインは同じです。無理なく体を慣らしていくことから取り組みましょう。心も肌も肉体も。いつまでも健やかさをキープするため、体のケアやメンテナンスを習慣に!