他人の空似とは?
他人の空似(たにんのそらに)とは、血筋がつながっていないにもかかわらず、偶然によく似ている人のことです。
・本当に空港で見たのは彼なのか? 他人の空似ということも考えられるよ
・他人の空似とは言うけれど、信じられないほどあの2人は似ている
・他人の空似という言葉はあるが、私はまだ自分に似た人を見たことがない
親子や兄弟姉妹、甥姪でもないのに、血縁関係にないことが不思議なくらいに似ている人に対して使われます。
他人の空似
出典:小学館 デジタル大辞泉
血筋のつながっていない者が偶然によく似ていること。
空似とは?
空似(そらに)とは、まったく血縁関係がないのに、顔つきなどがよく似ていること。「他人の空似」と同じ意味で使われます。
・彼女と君は、空似が信じられないほど似ている
・彼が空港にいるはずはないから、空似かな?
・空似なのか双子なのか、とにかく驚くほど似ている
そら‐に【空似】
出典:小学館 デジタル大辞泉
まったく血縁関係がないのに、顔つきなどがよく似ていること。「他人の空似」

猿似とは?
猿似(さるに)も、血縁関係がないにもかかわらず、顔立ちや雰囲気がよく似ていることを指す言葉です。「他人の猿似」ともいいます。
・新しく研究室に入った田中さんは、博士課程の鈴木さんと猿似と言うほどに似ている
・猿似とは言うが、ここまで似ているとは思わなかった
・彼女と私はよく猿似と言われる
猿似は、13世紀後期にはすでに使われていた言葉で、『貞享版沙石集』の「猿似なる木律僧をばはなれつつ犬時者にもやなりにける哉」が初出とされています。
猿が皆似ているように人間には思えることから、元々は「猿似」や「他人の猿似」と表現されていましたが、江戸時代の後期から音が近い「空似」が使われるようになったといわれています。
さる‐に【猿似】
出典:小学館 デジタル大辞泉
血縁関係がないのに、顔かたちが似ていること。そらに。「他人の猿似」
他人の空似の言い換えに使える言葉
「他人の空似」のように、血縁関係がないことが信じられないほどよく似ていることを指して、次の言葉が使われることもあります。
・瓜二つ
・生き写し
・そっくり
・酷似(する)
いずれも似ているときに使われる言葉ですが、それぞれニュアンスが異なります。例文を交えて見ていきましょう。
瓜二つ
「瓜二つ(うりふたつ)」とは、縦に二つに割った瓜のように親子や兄弟などの顔かたちがよく似ていることです。
・彼は彼の父親に瓜二つだ
・瓜二つの兄弟だ
・彼女と彼女の姉は見た目は瓜二つですが、性格は真逆です
他人の空似とは異なり、実際に血縁関係があるときに使われます。
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生き写し
「生き写し(いきうつし)」とは、外見や態度が見分けがつかないほどよく似ていることです。「瓜二つ」や「他人の空似」は基本的には見た目が似ているときだけに使われますが、「生き写し」は行動や性格などにも使われます。
・納得できないことに対して安易に妥協しない姿勢は、彼の父親に生き写しだ
・彼女の顔かたちは、彼女の母親の若かりし頃に生き写しだ
・思わず振り向いてしまうほど、兄の声は亡くなった父親に生き写しです
なお、「生き写し」は生きているものをそのまま写しとったように似ていることを指すため、生き写された側(似ていると指摘された側)が生きているか亡くなっているかは問いません。
また、生きた姿をそのまま写しとることや、写しとった絵のことも「生き写し(いきうつし)」と呼びます。「生写し(しょううつし)」と呼ばれることもあります。
そっくり
「そっくり」とは、非常に似ている様子を指す言葉です。
・彼の話し方は彼の兄とそっくりだ。話し終わったときに唇を下げる仕草も、わざと真似ているかのようにそっくりだ
・彼女があの芸能人とそっくりだという話を聞いたことはあるが、まさかここまで似ているとは思わなかった
・そっくりさんコンテストに出られるほど、彼ら三兄弟は似ている
「そっくり」は似ているときに使われる言葉ですが、「欠けることなく」や「残らず」「全部」といった意味でも使われます。
・お盆に集めた銀杏の葉を、そっくりそのまま袋に入れた
・余ったお菓子は、そっくり冷蔵庫に片付けておいて
・母はすでに亡く、兄は子どもがいないまま亡くなったため、父の遺産はそっくり私の手に渡った
いずれも口語的な表現のため、ビジネス文書や目上の方への手紙などにはあまり使われないといえるでしょう。
酷似(する)
「酷似(こくじ)」も「そっくり」と同じく非常によく似ていることを指す言葉です。「酷似する」と、動詞で使うことが多いです。
・写真で見た指名手配犯と酷似しているが、うかつなことは言えない
・この筆跡は、彼のものと酷似していた
・手口だけでなく犯行時刻も先月の未解決事件と同じだ。ここまで酷似することがあるだろうか
酷似するの「酷(こく)」は、「酷い(ひどい)」とも読みます。度を超えていると感じられるほどよく似ている場合には、「空似」よりも「酷似」の方がより的確な表現となる場合もあるでしょう。
「他人の空似」を正しい意味で使おう
「他人の空似」は血縁関係のない人同士が似ているときに使われる言葉です。血縁がある場合には、「そっくり」や「生き写し」「瓜二つ」など、より適切な言葉を選びましょう。
また、「ドッペルゲンガー」も似ているときに使われる言葉ですが、不幸や死といったニュアンスもあるため、使う場所や相手に注意が必要です。適切な言葉か迷ったときは、「似ている」や「とても似ている」などの中立的な表現を選ぶようにしましょう。
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