台風一過とは? 意味を解説
台風一過(たいふういっか)には、二つの意味があります。一つは、台風が通り過ぎたあと、空が晴れ渡りよい天気になること。もう一つは、台風の後に晴天になることから転じて、“騒動が収まり、晴れ晴れとすること”を指す比喩表現です。
台風一過の由来
台風一過の由来といわれている説は2つあります。それぞれ解説していきます。
1. 中央気象台長の岡田武松博士が、著書『近世気象学』の中で使用した説
1910年頃、当時中央気象台長で“気象学の父”と呼ばれる岡田武松博士が出版した著書『近世気象学』の中で、台風(颱風)という言葉が使用されています。英語の「typhoon」を音訳して「台風」と記述したと言われています。
こちらは台風一過というより、「台風」の由来ですね。
2. 小説家・北条清一が小説内で使用した説
もう一つの説は、小説家の北条清一が著書『武州このごろ記』で使用したいう説です。こちらは1935年頃で、「血腥い台風一過、熊谷宿も明治五年には戸長制度に、〈略〉文明開化に向って進んで来たわけだ」という記述があります。
ここで使われている「台風一過」は、比喩表現で使われる場合と同じ意味合いなので、「台風一過」という四字熟語の由来としてはこちらが近いかもしれませんね。
台風一家・台風一号との違い、類語を解説
台風一過には、台風一家や台風一号といった似た言葉があります。それぞれ台風一過との違い、類語も解説します。
台風一家とは
「台風一家」は、実は「台風一過」の誤記です。「いっか」と聞くと、つい間違えてしまう人が多いのかもしれませんね。
ちなみに、2014年に公開された日本映画に「台風一家」という奥秀太郎監督の作品があります。鍛冶職人の男性とその家族、住み込みで職人見習いをする若者との暮らしの中で、徐々に家族関係が壊れていくというストーリーで、さまざまな社会問題も絡めたヒューマンドラマです。
台風一号とは? 台風の名前の付け方も解説
テレビの気象情報などでたまに耳にする「台風一号」という言葉。これは、その年の1番目に発生した台風の名称です。毎年1月1日以降、最も早く発生した台風を第一号とし、その後も台風の発生順に番号がつけられています。
ちなみに、台風の名前は台風委員会に加盟する14ヶ国がそれぞれ名前案を持ち寄りリストにし、そこから発生した順番につけられています。
北西太平洋または南シナ海の領域で発生する台風にはアジア名が付けられます。これは、アジア各国の文化の尊重や連帯の強化、相互理解の推進、そして防災意識を高めるという目的があるそうです。
台風一過の類語
台風後の晴天は「雨過天晴(うかてんせい)」、騒動が落ち着いた状態は「雨降って地固まる(あめふってじかたまる)」という言葉が類語になります。
雨過天晴(うかてんせい)
書いて字の如く、雨が上がり、晴れた空が広がるという意味があります。悪い状況が好転する比喩表現としても使われることがあり、台風一過と同じく2つの使い方ができる四字熟語です。
雨降って地固まる(あめふってじかたまる)
もめ事や問題が一段落し、良い状況になるという意味があることわざです。もめごとが起きたあとは、かえって基盤がしっかりしてよい状態になることのたとえで、日常会話でも使われることの多い言葉ですね。
台風一過の使い方・例文
台風一過には、上述した通り2つの意味があります。それぞれの意味別、ビジネスシーンでも使える例文を紹介します。
台風後の晴天を指す場合の例文
台風一過のおかげで、沖縄旅行を満喫できた
時期によっては、台風の上陸が多い沖縄。その分、台風が通り過ぎた後の気持ちの良い晴天を楽しむチャンスもあります。悪天候から晴天に変わり、旅行やアクティビティを楽しめるようになった時などに使います。
台風一過で澄んだ青空が広がっている
台風が過ぎたあとの高気圧で雲が発生しにくい状態になり、台風後はいつもより空気が澄んで晴れやかな晴天になることが多いです。嵐の後の晴天を表現するときに使います。
騒動が落ち着いた状態を指す比喩表現の例文
親戚の集まりの後は、まるで台風一過のような状態だ
お盆や年末年始など、家族や親戚の集まりは何かとバタバタしますよね。集まりが終わってホッと一息、という状態を表すときに使います。
やっと引っ越しの片付けが終わって、まさに台風一過のような気分だ
荷解きはもちろん、ガス回線やインターネットや役所での手続きなど、何かとやることの多い引っ越し。段ボールだらけの部屋がきれいに片付いた時は、まさに台風一過という言葉がぴったりの状態です。
「台風一過」をビジネスシーンで使用する場合の例文
ビジネスシーンで「台風一過」を使う場合は、気象用語ではなく、騒動が落ち着いた状態を指す比喩表現で使われることがほとんどです。仕事でのアクシデントが解決した時などに使える、ビジネスシーンにおける台風一過の例文を紹介します。
繁忙期で慌ただしかったが、やっと落ち着いて台風一過という雰囲気だ
繁忙期は、まるで職場に台風がやってきたようにバタバタしてしまうもの。忙しい時期がひと段落した時に使います。
システムエラーがやっと復旧できて、台風一過の気持ちだ
職場では思わぬアクシデントも起こるもの。思いがけず発生した問題が解決した時などに使えます。
台風一過を英語で言い換えると?
英語で台風一過を表す時は、「台風が過ぎる」と「晴天」を一緒にした言い方になります。
clear weather after a typhoon has passed
「clear weather」で晴天、「after a typhoon has passed」で台風が通り過ぎた、となります。「clear weather」は「clear sky」など別の言い方にしても使えます。
the calm and pleasant weather after the typhoon
「the calm and pleasant weather」は「穏やかで心地よい天気」、「after the typhoon」で「台風の後」となります。
the calm after the storm
かなりシンプルな言い方なので、日常会話ではこちらが使いやすいかもしれませんね。「typhoon」は「storm(嵐)」と言い換えても伝わります。
最後に
台風後の晴天を表す気象用語だけでなく、騒動がひと段落した様子を比喩的に表すこともできる「台風一過」。ビジネスや公的な手紙でも、「拝啓 台風一過の候」のように、秋の初めの時候の挨拶として使うこともあります。
日常生活はもちろん、ビジネスシーンでも使える「台風一過」。2つの意味があることや、「台風一家」の誤記に気をつけて使いましょう。
言葉の意味/デジタル大辞泉
TOP画像/(c)Shutterstock.com