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四字熟語「多岐亡羊」の意味と読み方
「多岐亡羊」は、選択肢が多いとかえって迷ってしまい、本質にたどり着けないことのたとえです。「多岐」は多くの道、「亡羊」は逃げた羊を見失うことを表しています。
逃げた羊を追っていたところ、道が多方面にわかれ、結局見失ってしまったという故事が言葉の由来です。
学問やビジネスでも、枝葉にとらわれすぎると物事の本質を見失ってしまうことに。「多岐亡羊」は、真理を追求するうえで広い視野を持つことの大切さを説いた言葉といえるでしょう。
たき‐ぼうよう〔‐バウヤウ〕【多岐亡羊】
出典:小学館 デジタル大辞泉
《枝道が多すぎて逃げた羊を見失ってしまったという「列子」説符の故事から》学問をする者が枝葉末節にとらわれると、本質を見失うこと。また、学問の道が多方面に分かれすぎると真理を求めにくくなること。方針が多すぎて、どれをとるべきかに迷うことのたとえ。亡羊の嘆。
「多岐亡羊」の使い方と例文
ここからは、「多岐亡羊」の使い方を例文で確認していきましょう。
ビジネスシーンでは、さまざまな場面で選択が求められます。選択肢が多いと、かえって目的を見失ってしまうかもしれません。
「多岐亡羊」はそのような意味合いで、以下のように活用してみてください。
・活発な意見交換はおおいに結構だが、そろそろアイデアをいくつかに絞らないと。多岐亡羊、かえってゴールまでの道筋が遠のいてしまうよ
・ビジネス英会話を身に付けたいと思い英会話アプリを検索していたら、それだけで1日が終わってしまった。これではまるで多岐亡羊だ
・将来的にやりたいことが多すぎて、このままでは多岐亡羊になってしまいそうだ
・サービス内容に対し、お客様からクレームが入った。多岐亡羊、効率化の方法にこだわるあまりサービスの本質を見失っていたのかもしれない
「多岐亡羊」の類語や言い換え表現
「多岐亡羊」には、次のような類語や言い換え表現が挙げられます。
・亡羊之嘆(ぼうようのたん)
・五里霧中(ごりむちゅう)
・頭を抱える(あたまをかかえる)
・途方に暮れる(とほうにくれる)
いずれも「多岐亡羊」のように、物事に迷ったり、悩んだりすることに関係する言葉です。ここでは例文とあわせ、それぞれの正しい意味を紹介します。

「亡羊之嘆(ぼうようのたん)」
「亡羊之嘆」は、「多岐亡羊」と同じ故事を由来とする四字熟語です。自分が追い求める世界があまりに広く、真理をつかめず途方に暮れるさまを表しています。
また、どうするべきか思案を重ねることのたとえでもあります。ビジネスシーンでは「多岐亡羊」と似たニュアンスで活用してください。
・新メニュー開発に向け試食を重ねるものの、亡羊之嘆、もはやどれが正解かわからなくなってしまった
「五里霧中(ごりむちゅう)」
「五里霧中」とは、物事の判断がつかなくなることです。中国の張楷(ちょうかい)という儒学者が、道術を使い五里にもわたる霧を起こしたという故事に由来しています。
以下のように物事の方向性を見失い、判断しかねるというシーンで活用できる四字熟語です。
・思わぬトラブルが発生したうえに担当者も不在とは……。まさに五里霧中の状態だ
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「頭を抱える(あたまをかかえる)」
「多岐亡羊」のように道を見失い、心配や不安で思案する状況は「頭を抱える」と表現できます。以下のように、これからどうすべきか困ったシーンに適したフレーズです。
・約束の期日を過ぎても取引先から入金がない。かなりの額だったうえに先方と連絡がつかず、すっかり頭を抱えている
「途方に暮れる(とほうにくれる)」
「途方に暮れる」は、考えられる手段はうったものの、問題が解決せずどうするべきかわからない状況を指しています。
「これ以上どうすればよいのか、まったくわからない」、「これ以上の手立ては考えられない」という場面では「途方に暮れる」を使ってみるのもよいでしょう。
・あらゆる手段を尽くしたが状況が改善せず、途方に暮れるばかりだ
「多岐亡羊」と反対の意味をもつ四字熟語
「多岐亡羊」と真逆の場面では、以下の四字熟語を活用してみましょう。
・懸崖撒手(けんがいさっしゅ)/懸崖に手を撒する
・一念発起(いちねんほっき)
・確乎不抜(かっこふばつ)
「多岐亡羊」との違いとともに、使用例も参考にしてみてください。

「懸崖撒手(けんがいさっしゅ)/懸崖に手を撒する」
「懸崖撒手/懸崖に手を撒する」とは、勇気をふるって物事に取り組むことです。物事に迷う「多岐亡羊」と異なり、思い切って何かにチャレンジする姿を表しています。
「懸崖」とは切り立った崖のこと、「撒手」は「さんしゅ」とも読み、手放すことです。ビジネスシーンでは、以下のように一大決心する場面で使用できます。
・今まで自信がなかったが、懸崖撒手、次のコンペには応募してみようと思う
「一念発起(いちねんほっき)」
それまでの考えを改め、新たな気持ちで努力しようと心に誓うことは「一念発起」と言い表します。会話やメール文などで使うと、新しく何かを始めようという意気込みを伝えられるでしょう。
・これまで忙しさを言い訳にしてきたが、一念発起、資格取得に向けた勉強を始めようと思う
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「確乎不抜(かっこふばつ)」
「確乎不抜」とは、物事に動じない様子を表す言葉です。「確固不抜」の表記でも問題ありません。「確乎」は強い信念のこと、「不抜」は抜けないことです。
心がしっかりと定まっている様子や、何事にもくじけないさまなどは「確乎不抜」と言い表しましょう。
・これまでのキャリアを捨て、会社を辞めることを誰もが心配したが、起業を決めた彼女の意志は確乎不抜だった
「多岐亡羊」をビジネスシーンで正しく使おう
「多岐亡羊」は、広い視野をもつことの大切さを説いた四字熟語です。道が枝葉にわかれ羊を見失ったように、選択肢が多すぎると、物事の本質が見えなくなってしまうことを表しています。
何かを成し遂げるためには、さまざまなケースを想定する必要があります。一方で、細かなことにとらわれすぎると、求めるべき本質から遠ざかってしまうかもしれません。
「多岐亡羊」は、多様な選択を繰り返すビジネスシーンで使える四字熟語です。語句への理解を深め、会話やメール文などに取り入れていきましょう。
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