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この記事のサマリー
・「地震、雷、火事、親父」は、「最も恐ろしいもの」を列挙したもの。
・「親父」とは父親そのものではなく、家長や職場の権威者など「逆らえない存在」を意味していました。
皆さんは「地震、雷、火事、親父」という言葉を聞いたことがありますか? なんともインパクトのある漢字の羅列。 昔の人はどんな意味で「地震、雷、火事、親父」を使ったのか、気になりますよね。
「地震、雷、火事、親父」という言葉の由来や背景に迫りつつ、現代的な理解へとつなげていきます。
「地震、雷、火事、親父」とは?「親父」が怖がられた本当の理由
まずは「地震、雷、火事、親父」という言葉の意味から確認していきましょう。
「地震、雷、火事、親父」の読み方と意味
「地震、雷、火事、親父」の読み方は、「じしん、かみなり、かじ、おやじ」です。昔から「この世で最も恐ろしいもの」を例える言葉として使われてきました。
辞書には次のように記されています。
地震(じしん)雷(かみなり)火事(かじ)親父(おやじ)
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
世間でたいへん恐ろしいとされているものを、その順に並べていう言葉。
「地震、雷、火事、親父」は、恐ろしいものから順に並べたもので、今でもユーモアや皮肉を込めて使うことがあります。

なぜ「親父」が災害と並ぶのか?|「地震、雷、火事、親父」の語源や由来
「地震」「雷」と、誰もが恐れる自然災害が並びます。続く「火事」も、頭韻がそろい、被害の甚大さから、脅威の一つとして挙がりますよね。ここまでは、異論の余地がありません。
ところが、最後に「親父」です。これは一見すると災害とは無関係に思える存在ですね。しかし、「敵わないほど恐ろしいもの」として並べたら、納得できる人が増えるのではないでしょうか? 語呂の面でも、「火事」「親父」は、口にしやすく耳にも残ります。
当時は、父親の権限が今よりずっと強く、そのうえに、職人の「親方」や町の「親分」など、「おやじ」と呼ばれる存在には、誰もが逆らえない雰囲気があったのです。つまり「親父」は、社会的なかしらのことを指していたのではないかと解釈されています。
その他にも「親父」という言葉は、江戸時代における名主(なぬし)や庄屋(しょうや)といった地域の代表者、まとめ役を指していた、という説もあります。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)

「地震、雷、火事、親父」を言い換えるなら?|類語を紹介
「地震、雷、火事、親父」は、「怖いもの」を集めた言い回しです。似た意味を持つ言葉を調べてみました。
四悪(しあく)
「地震、雷、火事、親父」のように、「恐れるべきもの」を4つ並べて注意を喚起する形式は、古典にも見られます。儒教の教えをまとめた『論語』に、「四悪」という言葉があるので、紹介します。
「四悪」とは、上に立つ者が慎むべきふるまい、として挙げた4つの悪行で、具体的には次のような内容です。
虐:ふだん民を教育しないで、罪を犯したときだけ罰すること
暴:ふだん戒めることをせずに、急に成果を求めること
賊:命令を緩やかにしておきながら、期限を厳しく責めること
有司:必要な物を出し惜しみすること
また、仏教においては「四悪」は別の意味で用います。これは人の口に生じる4つの悪を指し、「妄語・両舌・悪口・綺語」とされています。
このように、人の心や行動に大きな影響を与える力を4つに分類して示す点で、「四悪」と「地震、雷、火事、親父」には共通点があるといえるでしょう。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)

「地震、雷、火事、親父」を英語でいうと?|英語表現をチェック!
「地震、雷、火事、親父」は、最も手ごわいものを並べた言葉ですが、日本独自の文化や歴史的背景に基づいた表現なので、英語で対応するフレーズはありません。しかし、「人類の四大災害」を表す言葉はありますので、紹介しましょう。
“Four Horsemen”
“Four Horsemen (of the Apocalypse)” は、新約聖書『ヨハネの黙示録』に登場する「四騎士」を指します。「戦い・飢え・病気・死」といった人類の四大災害を象徴しています。
参考:『プログレッシブ英和中辞典』(小学館)
「地震、雷、火事、親父」に関するFAQ
ここでは、「地震、雷、火事、親父」に関する、よくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「地震、雷、火事、親父」は今でも使える言葉ですか?
A. はい、日常会話やSNS、雑談の中でユーモアを込めて使うことがあります。
Q2. NGな使い方は?
A.差別的、暴力的な文脈で用いたり、特定の個人を貶める意味で使うのは避けるべきでしょう。
ユーモラスに使うのがポイントです。
Q3. なぜ「親父」だけ人間なの?
A. 江戸時代の社会構造の中で、「親父」は自然災害と並ぶほどの絶対的な存在だったからです。
最後に
「地震、雷、火事、親父」という表現には、時代背景や当時の人々が恐れていたものが込められています。現在ではユーモラスに使うことも多いですが、もともとは生活と密接に関わる「恐怖」の象徴だったことを知ると、言葉の深みが増しますね。
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