目次Contents
この記事のサマリー
・「デジャブ」はフランス語で「すでに見た」という意味の言葉。
・初体験なのに「前にも体験した気がする」既視感を指します。
・正夢や予知夢との違いは、「時間軸」。
「この景色、どこかで見た気がする」…そんな感覚に襲われたことはありませんか? それは、もしかすると「デジャブ」と呼ばれる現象かもしれません。不思議で印象に残るこの体験は、日常の中でふと現れ、私たちの記憶や感覚に何かを問いかけてきます。
この記事では、デジャブの意味や起こる理由、使い方から注意点まで解説していきます。
「デジャブ」とは?
まずは、デジャブの意味から探っていきましょう。
「デジャブ」の意味と語源は?
「デジャブ(déjà vu)」とは、フランス語で「すでに見た」という意味の言葉です。「デジャビュ」、「デジャブー」と表記することもあります。
初めての体験にもかかわらず、「以前に体験したことがある」と感じてしまう既視感(きしかん)を指します。
辞書では次のように説明されていますよ。
デジャ‐ビュ【フランスdéjà-vu】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
《「デジャブー」とも》
1 一度も経験したことがないのに、すでにどこかで経験したことがあるように感じること。既視感。→ジャメビュ
2 (1の誤用から)過去にどこかで経験したことがあるという実感。

デジャブって、どういう感覚?
例えば、初めて訪れたはずの国で「あれ? この景色、どこかで見た気がする…」と感じたことはありませんか? それがまさに「デジャブ」と呼ばれる感覚です。
筆者自身も、旅先で初めて足を踏み入れた場所なのに、なぜか懐かしさのようなものがこみ上げてきて、思わず立ち止まってしまった経験があります。
単なる思い込みにも思えますが、こうした“既視感”には、私たちの脳の記憶や認知にまつわる不思議な仕組みが関係しているのかもしれません。
なぜデジャブは起こるの? 脳と心理のメカニズム
「なぜこの感覚が起きるのか」、不思議ですよね。ここではデジャブの正体について探っていきましょう。
多くの人が経験している現象
デジャブは、長らく心理学の研究対象としては積極的に扱われてこなかったようです。
その理由のひとつに、過去には主にてんかん患者にみられる記憶障害として捉えられ、健常者にはほとんど起こらないと考えられていた背景があります。
しかし、近年の国内外の研究により、実際には多くの人が日常的にデジャブを経験していることが明らかになりました。デジャブは、ごく一般的な認知メカニズムとして考えられるようになったのです。
「初めてなのに知っている」その正体は「記憶の似て非なる再生」
では、なぜそんなことが起こるのでしょうか?
ひとつの有力な説として、記憶の中にある「類似性認知メカニズム」の影響が挙げられるようです。
私たちは新しい体験をするとき、自動的に過去の類似体験を思い出そうとします。その際、今目の前にある風景と、過去に見た風景との「似ている度合い」が高いと、「知っている気がする」、「体験したことがあるように感じる」といった既知感(きちかん)が強くなるのです。
ただし、ここがポイント。「行ったことはない」、「会ったことはない」と理性ではわかっているのに、感覚だけが「知っている」と訴える… その不一致こそが、私たちに「あれ? おかしいぞ」という違和感を引き起こし、不思議な現象のデジャブとして体験されるようです。
「典型的風景」が脳内に蓄積されている?
さらに注目すべきは、典型的な風景や場面ほどデジャブを引き起こしやすいという研究結果があるということです。例えば、並木道、公園、学校の校舎、寺社仏閣といった風景に対し、「デジャブを感じたことがある」という回答が多いとか。
これらはどれも、私たちが人生の中で何度も目にしやすい光景であり、過去の記憶が「典型的イメージ」として脳に残りやすい傾向があります。
例えば、「寺」と聞けば、山門・石段・本堂といった構造が浮かびますよね。初めて訪れた寺でも、この「典型イメージ」と合致する光景がそろえば、「来たことがある気がする」と錯覚してしまうのではないかと考えられています。。
他にもデジャブは単なる心理的な錯覚にとどまらず、神経的な処理ミスや伝達のズレが原因となっている可能性も指摘されています。こうした研究は現在も続けられており、今後の解明が期待される分野です。
参考:デジャビュ現象はなぜ起こるのですか? | 日本心理学会 (psych.or.jp)

「デジャブ」の使い方と誤用に注意
「デジャブって、会話の中でどう使えばいいの?」、そんな疑問におこたえするために、具体的な例文を紹介します。ありがちな誤用パターンと注意点もチェックしてみてください。
「デジャブ」の使い方を例文でチェック
「この展開、どこかで見た気がする… まさにデジャブだね!」
「彼のセリフ、前にも聞いた気がする。デジャブかな?」
こうした表現は、カジュアルな会話やSNS投稿の中でも自然に使えます。「なんとなく以前にも体験したような気がする」といったニュアンスを伝える場面にぴったりです。
一方で、フォーマルなシーンでは「既視感(きしかん)」という言葉に置き換えることで、より落ち着いた印象を与えることができるでしょう。
ありがちな誤用パターンと注意点
「毎日同じルーティンで、もうデジャブだよ」、このように「繰り返し」や「飽き」を表現する目的でデジャブを使う人は意外と少なくありません。
しかし本来の「デジャブ」は、「初めての出来事なのに、すでに体験したことがあるような感覚」を意味します。退屈さや反復的な状況を表す場合には、「マンネリ」や「ワンパターン」といった言葉の方が的確でしょう。
「デジャブ」と混同しやすい「正夢」や「予知夢」との違い
「正夢」や「予知夢」「スピリチュアル」といった言葉と、デジャブはどう違うのでしょうか? ここでは、違いを見ていきましょう。
「正夢」や「予知夢」とはどう違うの?
「デジャブって、もしかして正夢のこと?」と感じたことがある人もいるかもしれません。ですが、両者は体験する時間軸が異なる、別の現象です。
正夢や予知夢は、「これから起こる出来事を、夢の中で事前に見ること」。つまり、未来を先取りするような感覚が特徴です。
一方、デジャブは「いま体験している出来事を、なぜか過去にすでに体験した気がする」と感じる既視感のことです。
似ているようで、じつは真逆の方向を向いているこの2つ。混同されがちな言葉こそ、意味の輪郭をクリアにしておくことで、会話や表現にも自信が持てます。
スピリチュアルな視点ではデジャブをどう捉える?
「前世で同じ景色を見ていたのかもしれない」、「魂の記憶がよみがえったのでは?」、このように、デジャブをスピリチュアルな視点で解釈する人も少なくありません。
こうした解釈は、個人の価値観等に依存するため、否定も肯定もできません。ただし、科学的にはまだ裏づけが取れていない仮説の域であることを理解しておきたいですね。

デジャブに関するFAQ
ここでは、「デジャブ」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1:デジャブって誰にでも起こるものですか?
A.デジャブは特別な人だけが経験するものではありません。
Q2:「あれ? これ夢で見たような…」という感覚もデジャブですか?
A.夢で見たことが現実になった場合は、「正夢」です。
デジャブは「実際には初めての体験なのに、過去に体験したように感じること」です。
最後に
「デジャブ」という言葉は、感覚的にはなんとなく知っていても、実は誤解されがちです。この記事を通して、意味がクリアになったと感じていただけたなら幸いです。
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