「雌雄を決する」の意味と読み方
「雌雄を決する」は「しゆうをけっする」と読みます。「戦って勝敗を決める」「決着をつける」「優劣をつける」という意味で、雌(し)はメス、雄(ゆう)はオス。これは男尊女卑的な考え方とはまったく関係がなく、メスとオスでは、持って生まれた肉体的なパワーが異なるということです。
多くの動物の世界では雄が強く雌が弱いという考えから、どちらが雄でどちらが雌かはっきりさせよう、という意味合いで使われるようになりました。そこは誤解しないようにしたいですね。
語源は、『史記・項羽本記(しき・こううほんき)』の中の一節、「願わくは漢王との戦いを挑み、雌雄を決せん」というセリフ。これは、長年の戦いに辟易していた項羽が、漢王との一騎打ちを望んで放った言葉とされています。
使い方を例文でチェック!
「雌雄を決する」は、スポーツ、ビジネス、政治などで、勝敗をはっきりつける場面で使うのが適しています。普通の話し合いなどで使うと、かなり大げさな印象に。場合によっては攻撃的な印象になってしまいますので、避けるようにしましょう。
1:「明日は甲子園の決勝戦。いよいよ雌雄を決するときだ」
スポーツでも決勝戦など大一番で使われるのが、「雌雄を決する」。明日がそのとき! という意気込みや緊張感が伝わってきますね。
2:「雌雄を決するべく、ライバルに試合を申し込んだ」
ボクシングや武道、あるいは囲碁や将棋など、1対1でのライバル関係で勝負をはっきりつけようというときにも「雌雄を決する」を使います。
3:「雌雄を決する瞬間から目が離せない」
英雄たちがいよいよ勝負をつけるとき、観客や視聴者もその場を離れられませんよね。世紀の一瞬になるかもしれません。
4:「取引が成立するかどうか、雌雄を決する話し合いとなる」
ビジネスにおいて「雌雄を決する」は、最終的な商談、最終プレゼンテーションなど、会社の業績を左右するような重要な場面にこそふさわしい表現です。
5:「この与野党論戦が、今後の政局の雌雄を決することになるだろう」
国民生活に大きな影響を与える政局。支持率を左右するような与野党の論戦、また選挙においては有力な立候補者同士の激突は、「雌雄を決する」といっていいでしょう。
6:「雌雄を決して優劣をつけるのではなく、それぞれのいいところに着目しよう」
人同士でも、あるいはビジネスにおける企画案や商品でも、「雌雄を決するような」競い合いはやめよう、という場合の例文です。どちらがいいか悪いか、どちらが優れどちらが劣っているかを競うより、歩み寄りや折衷案が最良ということもあるでしょう。
類語や言い換え表現は?
「勝負する」という意味のある類語とともに、もう少し柔らかく、日常生活でも使いやすい「決着をつける」という意味の類語を紹介します。
1:竜虎相搏つ(りゅうこあいうつ)
竜と虎にたとえられるような「いずれ劣らない英雄・豪傑・強豪などが勝負をする」、「力の伯仲した二人の強豪が勝負する」、という意味です。「雌雄を決する」に最も似ている言い換え表現です。
(例文)
「さすがはエース同士。竜虎相搏つ投手戦だったね」
「〇〇社と○○社が同じ日に新商品を発売するらしい。まさに竜虎相搏つだ」
2:白黒つける
勝負というよりも、「物事の是非・善悪・真偽などを決める」という意味で決着をつけるときに使われます。普段でもよく聞く言葉ではないでしょうか。
(例文)
「どちらの言い分が正しいか、白黒つけましょう」
「彼女は何事も白黒つけたがる性格だよ」
3:けりをつける
「結末をつける」「締めくくる」のほか、「決着をつける」という意味もあります。
(例文)
「この勝負にけりをつけよう」
「話し合いが長引くばかりだから、このあたりでけりをつけましょう」
この場合も、そろそろ話し合いに「決着をつけて」終わりにしよう、という意味が込められています。
4:方(かた)をつける
「決着をつける」「始末をする」という意味です。始末するというのは、きちんと処理をして締めくくるということ。「お金で方をつける」と言うように、勝負よりもトラブルを終わらせるときなどに使われます。
(例文)
「過去の揉め事に方をつけなければならない」
5:終止符(しゅうしふ)を打つ
勝負などの「決着をつける」ときの言い換え表現として、また、長く続いた事柄を「終わらせる」というときにも多く使われます。
(例文)
「長いライバル関係に終止符を打つ戦いです」
スポーツなどで雌雄を決し、どちらが真の実力者かを決めるときの例文です。
「町の百貨店がついに終止符を打つようです」
この場合は勝負ではなく、長く親しまれてきた町の百貨店が営業を終わらせることを決めた、という意味になります。
英語表現は?
英語で「雌雄を決する」を表現するときは、「showdown」(対決する、最後の対決で決着をつける、土壇場)を使用するのが一般的でしょう。
たとえば、「have a showdown with」(~と決着をつける)(最後の対決をする)のように使います。
また、「decisive」(決定的な、明白な)とfight(戦う)を組み合わせて、「to fight a decisive battle」(決戦)(決戦に挑む)という風に表現できます。
最後に
「雌雄を決する」は、秦末期の猛将・項羽が放った一言に由来するように、主に決戦、1対1の勝負に対して使われる言葉です。それもスポーツの決勝戦、ライバル同士の最終決戦、政局、企業間の競争など、天下分け目のような大一番にこそふさわしい言葉。
場合によってはあまりにオーバーなイメージになりますので、ビジネスでも通常の打ち合わせや会議、またプライベートではそう多く口にする機会はないでしょう。言い換え表現はいろいろありますので状況に合わせて使い分け、「雌雄を決する」はここぞ! というときに使ってこそ効果があるというものです。
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