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「鬼の首を取ったよう」の意味
「鬼の首を取ったよう」は、まるで大手柄を立てたかのように得意げに振る舞う様子を指すことわざです。多くは、さほどでもないことに対し、さも得意になる様子を表します。
鬼(おに)の首(くび)を取(と)ったよう
出典:小学館 デジタル大辞泉
大変な功名・手柄を立てたかのように得意になるさま。「—な喜びよう」
言葉の由来は、日本の古い風習にあるとされます。その昔、武士たちは討ち取った敵の首をかき切って持ち帰っていました。持ち帰った首は、武士の活躍を示す証拠になったといいます。
強い武将の首のように、強い鬼の首を取ることは何よりの大手柄といえるでしょう。「鬼の首を取ったよう」は、こうした風習をふまえたことわざと考えられています。
実際には風習を逆説的に捉え、本来の手柄よりも大げさに喜ぶさまを批判したり、からかったりする場面で用いられる傾向もみられます。
「鬼の首を取ったよう」を使った例文
「鬼の首を取ったよう」は、会話のなかで以下のように使用できます。上記の正しい意味をふまえ、ぜひ日常会話やビジネスシーンで活用してみてください。
・ほんのわずかな言い間違いだったのに、それを指摘してきた彼女は、まるで鬼の首を取ったような得意顔だ
・「今日の彼はずいぶん機嫌がよさそうだな」「ああ、昨夜の飲み会で上司に褒められたとかで、今朝からまるで鬼の首を取ったような喜びようだよ」
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「鬼の首を取ったよう」の類語や言い換え表現
「鬼の首を取ったよう」には、以下のような類語や言い換え表現があげられます。
・ここぞとばかりに
・好機(こうき)と捉えて
シーンによっては、これらの言葉のほうが適している場合もあるかもしれません。それぞれの意味を知り、「鬼の首を取ったよう」と上手に使い分けましょう。
ここぞとばかりに
「ここぞとばかりに」は、ある物事をチャンスと捉え行動に移すことです。「ここぞ」は漢字で「此処ぞ」と書き、重要な場面や局面を意味します。
「鬼の首を取ったよう」は、得意げな様子を批判したり揶揄したりする際にも使われる言葉です。一方で「ここぞとばかり」には、そのような意味合いはほぼありません。
ただし、以下の例文にあるように、使い方によってはネガティブな印象を受けることも。他者との会話で使用する際は気を付けましょう。
・彼女の腕時計を褒めたら、ここぞとばかりに自慢話を延々と聞かされた
・お気に入りのブランドのセールが始まったので、ここぞとばかりに商品を買いあさった
好機(こうき)と捉えて
「好機」とは、物事をするのにちょうどよい機会のことです。チャンスと同じような意味合いがあり、「捉えて」と続けることで、何かをチャンスと捉え行動に移す様子を表します。
「ここぞとばかり」と似た表現ですが、「好機と捉えて」はネガティブな印象を受けることは少なく、ビジネスシーンに適した表現といえるでしょう。
・株価の変動を好機と捉えて、次の一手へ乗り出した
・辛い時期をあえて好機と捉え、地道な努力を重ねたことで今の成功がある
「鬼」を使ったことわざや慣用句
想像上の怪物である「鬼」は、古くから物事の例えとして日常会話で用いられてきました。近年は、程度を超えた様子を表す言葉として「鬼のように忙しい」や「鬼うまい」のほか、何度も電話をかける「鬼電」のように用いられます。
ここでは、「鬼」を使った以下のことわざや慣用句をピックアップして紹介します。
・鬼が笑う
・鬼が出るか蛇(じゃ)が出るか
・鬼に金棒
・鬼の居ぬ間に洗濯
それぞれの意味を知り、会話のなかで活用していきましょう。
鬼が笑う
「鬼が笑う」は「予想がつかないことに思いをはせるのは気が早い」と、からかう意味を込めたことわざです。おもに「来年のことを言うと鬼が笑う」や「明日のことを言うと鬼が笑う」のように用いられます。
未来に関する確かなことは、誰にも予想がつかないものです。それを考えるなんて、怖い鬼でも笑ってしまうという意味が含まれています。
・プロジェクトの成功を案じたところで鬼が笑うだけ。それより今できる努力をするべきだ
鬼が出るか蛇(じゃ)が出るか
「鬼が出るか蛇が出るか」は、将来の運命は誰にも予測できないことを表しています。かつて、からくり人形師が観客に対し、投げかけた言葉から生まれたとされることわざです。
鬼も蛇も、人にとっては恐ろしい存在です。そのどちらかが現れるかもしれないという「鬼が出るか蛇が出るか」は、この先何が起こるかわからないという状況に適しています。
・システムの不具合で会社から呼び出しを受けた。至急駆けつける予定だが、鬼が出るか蛇が出るか、まったく予測がつかない状態だ
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鬼に金棒(かなぼう)
強い鬼が金棒を持つ「鬼に金棒」は、強いものに一層の強さが加わることを意味します。金棒は「鉄尖棒(かなさいぼう)」とも呼ばれ、鬼が手に持つ武器のことです。
日常会話では 、強い味方や条件などを金棒にたとえるケースが見受けられます。もともと強いものや、優れている人がさらなる力を得たときに適したことわざです。
・輸出の業績がよかったチームに海外赴任経験のある新メンバーが加わるとは、まさに鬼に金棒だな
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鬼の居ぬ間に洗濯
「鬼の居ぬ間に洗濯」は、怖い存在がいない間にくつろぐ様子を表すことわざです。怖い人や厳しい人を「鬼」、つかの間の休息を「洗濯」にたとえています。
一緒にいると気が休まらない人が不在で、思う存分くつろぐ状況などに使われる表現です。具体的には、以下のように使用してみてください。
・厳しい上司が今日から一週間出張らしい。どおりでメンバーが鬼の居ぬ間に洗濯とばかりに思い思いに過ごしているわけだ
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「鬼の首を取ったよう」の意味を正しく理解しよう
「鬼の首を取ったよう」は、ささいなことであるにもかかわらず、さも大手柄を取ったかのように振る舞う様子を表しています。相手を批判したり、からかったりするニュアンスが含まれることわざです。
言い換え表現には「ここぞとばかり」や「好機と捉えて」などが挙げられます。それぞれの意味や違いを知り、日常生活で正しく活用しましょう。
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