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「転んでもただでは起きない」の正しい意味とは
「転んでもただでは起きない」とは、たとえ何かに失敗しても、そのままでは終わらないことを意味します。「転んでもただは起きない」と表記することもあり、失敗から何かを得ようとすることや、根性のあることを指す言葉です。
転(ころ)んでもただは起(お)きない の解説
出典:小学館 デジタル大辞泉
たとえ失敗した場合でもそこから何かを得ようとする。欲の深い、また、根性のある人のたとえ。転んでもただでは起きない。
また、それだけ欲が深いことを表すこともあります。何かを欲しい気持ちが度を超えていることや、欲張りのようなニュアンスも併せ持つため、使用時は注意が必要です。
「根性がある」というと頑張り屋でポジティブなイメージですが、「欲深い」にはネガティブな印象を受けることもあるかもしれません。
このように、「転んでもただでは起きない」には2通りの意味があり、使い方によって印象が異なることも押さえておきましょう。
「転んでもただでは起きない」を使った例文
「転んでもただでは起きない」は、ビジネスや日常会話で以下のように使用できます。実際にどのように活用するのか、具体例をぜひ参考にしてください。
・転んでもただでは起きない彼は、契約がうまくいかなかった原因を追求し、さらなる大口の契約を取り付けた
・スーパーで購入したリンゴをうっかり落として傷だらけにしてしまったのだが、転んでもただでは起きないぞ、と時間をかけてジャムに仕立てた
・「デパ地下で有名スイーツ店の行列に並んだけれど、あと一歩のところで売り切れになってしまって。仕方がないので別の有名店の列に並んで、ついでに特売になった中華も買って帰ったわ」「本当に転んでもただでは起きない人だね、君は」
「転んでもただでは起きない」と似た意味のことわざ
「転んでもただでは起きない」と似た意味のことわざには、以下の2つが挙げられます。
・行き掛けの駄賃(いきがけのだちん)
・受領は倒るる所に土を掴め(ずりょうはたおるるところにつちをつかめ)
ここでは例文とともに、それぞれの意味について紹介します。
行き掛けの駄賃
「行き掛けの駄賃」とは、何かのついでに物事を済ませることです。「行き掛け」とは行く途中のこと、「駄賃」は使い走りなどの雑用に対して与える金品を意味します。
この場合の「駄賃」は、馬子(まご) が問屋に荷物を取りに行く途中に、他の荷物を運んで得る金品を指しています。馬子とは、馬を引いて荷物を運ぶことを職業とする人のことです。
メインの用事のついでに、他の何かで利益を得る様子は、以下のように「行き掛けの駄賃」と言い表せます。
・紅葉を見ようと山へ出かけたところ、行き掛けの駄賃に栗をたくさん拾った
・あいさつ回りに出かけた営業先で、思いがけず新規の契約を取り付けた。まさに行き掛けの駄賃といったところだ
受領は倒るる所に土を掴め
「受領は倒るる所に土を掴め」は、転んでもただでは起きないことを意味します。「受領」とは、平安時代に存在した高い位のことです。受領は失敗しても手ぶらでは帰らず、土さえつかむほど貪欲なさまを表しています。
・失敗から何かを得ようとする彼の姿には、受領は倒るる所に土を掴むような根性を感じる
「転んでもただでは起きない」と似た意味の四字熟語
「転んでもただでは起きない」と似た意味の言葉には、四字熟語も存在します。
・七転八起(しちてんはっき)
・捲土重来(けんどちょうらい)
四字熟語は、短い言葉で考えを伝えたいときに便利な言葉です。「転んでもただでは起きない」とのニュアンスの違いも含め、それぞれの意味を確認しましょう。
七転八起
「七転八起」は「ななころびやおき」ともいい、何度失敗してもくじけず、立ち上がり、努力を重ねることを意味します。人生に失敗や挫折が生じても、挑戦を繰り返すさまを表す言葉です。
失敗しても立ち上がる点は「転んでもただでは起きない」と同様です。ただし「七転八起」は、立ち上がる際に必ずしも何かを得ているわけではありません。
欲深さのような意味もなく、あくまでも、失敗に対してあきらめない姿を表す言葉といえるでしょう。
・これまでを振り返ってみれば、七転八起の人生だった
・試験は不合格だったが、七転八起の精神で来年もまたチャレンジしたい
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捲土重来
「捲土重来」とは、失敗から再び勢いを巻き返すことです。「捲土」は土煙が巻き起こることで、「重来」と続けることにより、激しい勢いが再び訪れるさまを意味します。
一度敗れた軍隊が再び勢いを取り戻す様子から生まれた言葉ですが、日々の会話でも以下のように活用できます。
・いつかの逆転負けを感じさせない、捲土重来の奮闘ぶりだった
・一度は失敗にくじけそうになったが、捲土重来を期して立ち上がった
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「転んでもただでは起きない」の類語・言い換え表現
ここからは、「転んでもただでは起きない」の類語についてみていきましょう。
・打たれ強い
・したたか
いずれも何かしらの圧力や逆境に対する言葉といえます。正しい意味とともに、「転んでもただでは起きない」とのニュアンスの違いなども参考にしてください。
打たれ強い
「打たれ強い」は、格闘技で敵の攻撃に耐える力があることや、非難や逆境に対する強さを意味します。
「転んでもただでは起きない」は失敗してもただでは終わらないことですが、「打たれ強い」は、その強さから失敗までは至っていない状態にも使えます。逆境に負けない強い気持ちは、「打たれ強い性格」のように言い表すことも可能です。
・彼はとても打たれ強い性格で、多少の失敗ではくよくよしない
・私の長所は打たれ強く、どんなことでも最後までやり遂げることです
したたか
「したたか」は、粘り強い様子を表す言葉です。漢字では「強か」や「健か」などと書き、他の圧力に屈しないさまを表します。
強くしっかりしている点は、失敗してもそのままでは終わらない「転んでもただでは起きない」とニュアンスが似ているといえます。
異なるのは、「したたか」には「態度がはなはだしい」という意味も含まれる点です。「非常識もはなはだしい」など、通常の度合いをはるかに超えるさまを表す言葉でもあるため、シーンに応じた使い分けを意識しましょう。
・困難な時代を、彼はしたたかに生き抜いた
・彼女は逆境に負けないしたたかな人物だ
「転んでもただでは起きない」の意味を知り言葉の幅を広げよう
「転んでもただでは起きない」は、失敗したままで終わろうとしない様子を表す言葉です。根性があるというポジティブな意味で使うこともあれば、それだけ欲が深いことを指すこともあります。
「転んでもただでは起きない」と似ていることわざや四字熟語などへの理解も深め、言葉の幅を広げていきましょう。
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