七難八苦とは
七難八苦は「しちなんはっく」と読み、あらゆる困難や苦しみ、あるいはそれらに遭遇することを意味する仏教の言葉です。7つの困難と8つの苦しみが同時にやってくるほどの、耐えがたい状況を表します。
しちなん‐はっく【七難八苦】
出典:小学館 デジタル大辞泉
七難と八苦。多くの苦難が重なること。
「七難」とは
経典により内容は異なるため諸説あるものの、「七灘」とは以下のような困難を指すことがあります。
・火難(かなん)・水難(すいなん)・羅刹難(らせつなん)・刀杖難(とうじょうなん)・鬼難(きなん)・枷鎖難(かさなん)・怨賊難(おんぞくなん)
いずれも、人間の欲がなんらかの原因になって起きる困難といえるでしょう。
しち‐なん【七難】
出典:小学館 デジタル大辞泉
1 仏語。火難・水難など7種類の災難。内容は経典により異なる。七苦。
2 いろいろな難点。多くの欠点。「色の白いは七難隠す」
「八苦」とは
「八苦」とは、以下の苦しみのことです。
・生(せい):生まれる苦しみ
・老(ろう):老いる苦しみ
・病(びょう):病を患う苦しみ
・死(し):死ぬ苦しみ
・愛別離苦(あいべつりく):愛する者と離別する苦しみ
・怨憎会苦(おんぞうえく):恨み憎む相手に会う苦しみ
・求不得苦(ぐふとっく):欲しいものを手に入れられない苦しみ
・五陰盛苦(ごおんじょうく):自分の心や、自分の身体すら思い通りにならない苦しみ
仏教において上記の8つは、人間が生きる上で避けては通れない根源的な苦しみとして表しています。
はっ‐く【八苦】
出典:小学館 デジタル大辞泉
仏語。人間の八つの苦しみ。生・老・病・死の四苦に、愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五陰盛苦を加えたもの。
悲劇の武将として知られる山中鹿介の名言とは
七難八苦は、悲劇の武将として知られる山中鹿介(やまなかしかのすけ)が「願わくば我に七難八苦を与えたまえ」と口にした言葉としても知られています。
尼子(あまご)家の家臣であった山中鹿介は、毛利家の策略により窮地に立たされたとき、尼子家の再興と引き換えに、たとえ私にどのような苦難が降りかかっても構わないと決意をしました。そして、「願わくは我に七難八苦を与えたまえ」と言ったとされています。
七難八苦の使い方と例文
七難八苦は、困難や苦しみが重なる耐えがたい状況を表す言葉です。しかし、どちらかというと、「大変な状況を乗り越えてここに到達した」というポジティブなニュアンスで語られることが多いといえるでしょう。
具体的な例文は、以下のとおりです。
・七難八苦に打ち勝ったからこそ、今の自分がいる
・七難八苦の人生だったが故に、小さな幸せを見逃さないでいられる
・どんなときでも、七難八苦を乗り越えてここまでやってきた
七難八苦の類語・類似表現
七難八苦には、似たような意味の類語・類似表現がいくつかあります。ここからは、類語・類似表現である、「七転八倒」「四苦八苦」「千辛万苦」「艱難辛苦」の意味と使い方を確認しましょう。
七転八倒
七転八倒は「しちてんばっとう」と読み、ひどくもがき苦しむことのたとえで、「七転八倒の苦しみ」などと使います。「7回転ぶ」「8回倒れる」と、それぞれ回数が多いことから、立ち上がるたびに再び倒れるような、苦難だらけの状況を表す言葉です。
七転八倒と混同しやすい言葉に「七転八起(しちてんはっき)」があります。七転八起は、七転び八起きと同じ意味です。
七転八起は、たとえ7回転んだとしても8回起き上がるため、何度失敗しても諦めずに立ち上がることを意味し、前向きな言葉であることから座右の銘としても人気があります。
しかし、七転八倒は何度も苦しむ状況を表す、ネガティブな言葉です。一見すると似ている2つの言葉ですが、意味は正反対であることに注意しましょう。「七転八倒の日々」などと使います。
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四苦八苦
四苦八苦は、非常に苦労することを意味する言葉です。「四苦」は仏教における「生・老・病・死」の苦しみを表し、「八苦」はそれにさらに「愛別離苦」「怨憎会苦」「求不得苦」「五陰盛苦」の4つの苦しみが加わった計8つの苦しみを指します。
思い通りに物事が進まなかったり、思い悩んでいたりするような辛い状況を表す言葉です。「馴れない仕事に四苦八苦した」といった使い方をします。
千辛万苦
千辛万苦は「せんしんばんく」と読み、さまざまな苦しみや難儀にあうことを意味する言葉です。「千」「万」はそれぞれ数がとても多いことから、非常に骨を折って苦労することを表します。「千辛万苦して成功を得る」というように使います。
艱難辛苦
艱難辛苦は、大変な苦労に遭い悩み苦しむことを表す言葉です。「かんなんしんく」と読みます。「大変な困難で苦しむこと」という意味の艱難と、「辛い状況にあって苦しむこと」を意味する辛苦の組み合わせによって、苦しみを強調しています。
「艱難」は「困難」と間違えやすいですが、「困難辛苦」という言葉はないことに注意が必要です。「艱難辛苦な経験だった」などと使います。
七難八苦の意味や使い方をマスターしよう
七難八苦は、7つの困難と8つの苦しみが同時にやってくるほどの、耐えがたい苦しみや困難を意味する仏教の言葉です。
困難や苦しみが重なる耐えがたい状況を表す言葉ですが、実際に使われる際は「大変な状況を乗り越えてここに到達した」というポジティブなニュアンスで語られることが多いといえるでしょう。七難八苦の意味を正しく理解して、使い方をマスターしましょう。
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