「固唾」と「固唾を呑む」とは?
「固唾」という漢字をすらすらと読むことはできますか? 本記事では、「固唾」とともに「固唾を呑む」の意味を解説します。
そもそも「固唾」って?
「固唾」は、「かたず」と読みます。時々「かたづ」と表記してある場合もありますが、文部科学省が設定しているルールでは「ず」が正式。但し、歴史的に「づ」が使われていたこともあるので、その使用は許容範囲といったところでしょうか。
それでは、そもそも固唾とは? これは、「人が緊張したり息を殺しているときなどに出る、粘液性のつば」のこと。この、ネバネバとしていて呑み込みにくく自然と口の中にたまってしまうようなつばを、固い、と表現したものです。
慣用句「固唾を呑む」の意味
固唾は単体で使われることはまずなく、多くは「固唾の呑む(かたずをのむ)」という慣用句として用いられます。こう表現すると、ごくりと固いつばを呑み込むイメージが伝わりますね。そして、正常時には起こらない心理的現象であることがわかります。
「固唾を呑む」の意味は、「事の成り行きが気になって緊張している様子」。息もできず、身動きもできないほど「緊張したり集中して、次の動向を見守っている」状態のことです。
参考までに「飲む」を使うのは、液体など飲料物を飲むときで、それ以外は「呑む」を使うのが慣例というのか、一般的。ただ、「吞む」は常用漢字ではありませんので、新聞などでは「飲む」が使われます。迷ったら平仮名の「のむ」にしてもいいでしょう。
「息を呑む」との違い
混同される表現として「息を呑む」がありますが、これは、恐れや驚き、あまりの感動などから、一瞬、息が止まるような状態になること。「固唾を呑む」のように、その状態がある程度続くのとは異なります。また「息を呑む」には「事の成り行きを見守る」という意味は含まれませんので注意しましょう。
使い方を例文でチェック!
ここでは慣用句「固唾を呑む」の使い方を紹介します。「固唾を呑む」のがどういう状態なのか、よりイメージがつかみやすくなりますよ。
1:「白熱する試合を固唾を呑んで見守った」
「固唾を呑んで見守る」というのもひとつの慣用句。ハラハラ、ドキドキ、緊張し集中しながら見守っている様子がよく伝わりますね。
2:「審査結果が発表されるのを固唾を呑んで待った」
どうなるのか期待と不安が入り混じり、緊張している様子が伝わります。試験やオーディションなど何かの結果を待つときは、得てして「固唾を呑む」状態になるものですよね。
3:「ふたりの口論が白熱するのを、誰もが固唾を呑んで見ていた」
激しい口論に、その成り行きが気になりつつも、口出しもできず、ただ唖然と見守っている様子です。緊張感がみなぎっているのがよくわかります。
4:「これからの会社の方針を固唾を呑んで聞いた」
何を言われるのだろうという不安やこれからの心配のため、緊張して聞いている、つまり、緊張しながら事の成り行きを見守ろうとしているということです。じっと聞いていたと表現するよりも、不安感などがリアルに伝わってきて、固いつばが出そうな現場ということがよくわかります。
類語や言い換え表現は?
「固唾を呑む」の言い換えのポイントは、ただ緊張しているだけではなく、気を揉みながら事の成り行きを「見守る」「様子を伺う」状態であることを表す、ということです。
1:注視する
意味は「注意深くじっと見る」。たとえば、「事の成り行きを注視する」、「彼の動向をこれからも注視しなければならない」など、緊張感を持って、物事や人の動向を見るというイメージで使われます。
2:手に汗握る
「見たり聞いたりしながら、興奮したり緊張したりする」こと。気を揉みつつ、次はどうなるのだろうと見守っている状態ですね。
たとえば「手に汗握る熱戦」、「スリリングな映画に思わず手に汗を握った」などと使います。
3:息を殺す・息を凝らす
「呼吸をおさえて静かにしている。息をつめてじっとしている」こと。自分の気配を消して、物事の成り行きを見たり、様子を伺うイメージです。
たとえば「誰かの気配がしたので物陰に隠れて息を殺した」、「ふたりの真剣勝負の行方を息を凝らして見守った」などと使えば臨場感が溢れます。
対義語は?
ぴったりとくる対義語を見つけるのは難しいですが、「息を吐く(つく)」が近いでしょう。
「息を吐く」は、溜めていた息を吐く、大きく呼吸する、のほかに、「緊張や苦しみから開放されてほっとする」「一安心」「一休み」という意味でも使われ、「固唾を呑む」ような緊張感から解き放たれて、「ほっと息を吐いた」というように使うことができます。
英語表現は?
「固唾を呑む」の英訳で最もよく使われるのは、「hold one’s breath」。
直訳すると「息を止める」ですが、比喩として、ドキドキして待つ、期待して待つ、という風に使われます。「固唾を呑む」と同じように、先行きの不安などから、緊張して見守る状態のときにもぴったりとくる表現です。
「holding one’s breath」とing形にすると「固唾を飲んで」。
(例文)
I’m holding my breath for my exam results.「私は固唾を呑んで試験の結果を待っていた」
また、「固唾を呑んで見守る」なら「watch with bated breath」
(例文)
We watched the football match with bated breath.
「私たちは固唾を呑んでサッカーの試合を見守った」
ほかに、「breathlessly watch~」「固唾を呑んで~を見守る」
という表現もありますよ。
最後に
「固唾を呑む」は、その一言で臨場感や緊張感が伝わる表現。どちらかというと不安で事の成り行きが気になるときに使われますが、映画やスポーツのスリリングな展開にハラハラしたり、期待感でドキドキしたり。さまざまな場面で使うことができます。
ポイントは、一瞬の緊張感ではなく、時間がある程度継続しているときに使うということ。言い換え表現もいくつかありますが微妙にニュアンスが異なりますので、自分の心理状態やその場の雰囲気でうまくチョイスしたいですね。
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