捲土重来とは? 意味と読み方
捲土重来は、失敗や過ちによって勢いを失った者が、再び巻き返すことを意味する言葉です。「捲土」は、土煙をあげるほどの激しい勢いを表します。
一度勢力を失っても、激しい勢いで盛り返すことを表すため、選挙運動において前回の選挙で負けた立候補者が、「捲土重来を目指す」などと演説することがあります。
読み方は「けんどちょうらい」
「捲土重来」は、「けんどちょうらい」あるいは「けんどじゅうらい」と読みます。けんどちょうらいと読むケースが多いものの、けんどじゅうらいという読み方も誤りではありません。
とくに読みにくいのが「捲土」。この機会に、読み方を覚えておくことをおすすめします。
由来は中国の故事
「捲土重来」は、中国の詩人であった杜牧(とぼく)の詩、「烏江亭に題す」が由来といわれています。秦末期、楚の将軍家の血筋である項羽(こうう)は、庶民出身の劉邦(りゅうほう)に戦で敗れ自決してしまいます。
杜牧が項羽をしのんで詠ったのが、「巻土重來未だ知る可(べ)からず」とされています。「土煙をあげるほどの勢いで出直していたら、結果はどう転んでいたかわからなかった」という意味です。この漢詩が、やがて弱った者が再び巻き返せる可能性を表す故事成語として現代に伝わったといわれています。
捲土重来の使い方と例文
捲土重来は、日常会話に登場することはほとんどないかもしれません。しかし、ビジネスシーンや選挙演説などで用いられることがあり、基本的にポジティブな意味合いで使われます。
そのまま単語のみで使われることもあるものの、「期す」や「果たす」などの言葉と一緒に使われることも少なくありません。
・先日の商談の捲土重来を果たすべく、入念に準備を行った。
・捲土重来を期して次の選挙に臨む。
・前回は敗北に終わったが、今度こそ捲土重来を狙う。
捲土重来の類語・類似表現
捲土重来と同じような意味を持つ、類語や類似表現は以下のとおりです。
・臥薪嘗胆
・起死回生
・名誉挽回
順番に、言葉の意味を解説します。
臥薪嘗胆
臥薪嘗胆は「がしんしょうたん」と読み、目的を達成するために苦労を耐え忍ぶことを意味する言葉です。
「臥」は横たわって休むこと、「薪」はたきぎ、「嘗」はなめること、「胆」は苦い肝を指します。もとは敗戦の仇を討とうと、たきぎの上で寝たり、苦い肝をなめて過ごしたりすること、つまり苦しいことを自身に課す様子を表す言葉です。
そこから転じて、目的を遂げるために苦心し努力を重ねることを意味するようになったといわれています。
苦労を課し努力を重ねることにフォーカスされた言葉ですが、再び盛り返そうとするという意味では、捲土重来と近い部分のある言葉といえるでしょう。
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起死回生
起死回生は「きしかいせい」と読み、捲土重来と同様の意味で使われる言葉です。もとは死にかけた者を生き返らせる状況を指します。
「起死」も「回生」も、ともに死にかけた人を生き返らせるという意味です。やがて、敗戦や敗北などに直面した状態から、一気によい方向に立て直す意味で用いられるようになります。
捲土重来と同じように、敗北や危機的な状況から一気に巻き返しを図るという意味であることから、言い換え表現として活用できます。
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名誉挽回
「名誉挽回」の読み方は「めいよばんかい」で、一度失った信用や評判を、その後の言動で取り戻すことを意味する言葉です。
名誉挽回も、捲土重来と同じようにマイナスの状態から再度成功を目指すという意味で使われますが、対象が信用や名誉、評判などに限定されることが特徴といえます。
捲土重来の対義語・反対語
捲土重来と対照的な意味の対義語や反対語としては、例として以下のものがあげられます。
・再起不能
・一蹶不振
それぞれの意味を確認しましょう。
再起不能
再起不能は「さいきふのう」と読み、失敗や挫折から立ち直れないことを表す言葉です。
捲土重来が、一度は失敗しても土煙をあげるほどの勢いで巻き返しを図ることを指す言葉であるため、反対の意味の表現として使うことが可能といえます。
一蹶不振
一蹶不振の読み方は、「いっけつふしん」で、一度の失敗で立ち直れなくなってしまうことを表現する言葉です。「一蹶」とは一度つまずくことで、「不振」は、勢いが出ないさまを表します。
捲土重来は一度失敗をしたものの、勢いよく巻き返しを図ることを意味するため、反対の意味を示す言葉といえるでしょう。
捲土重来の意味や読み方を理解しよう
捲土重来は「けんどちょうらい」と読み、失敗や過ちによって勢いを失った者が、再び巻き返すことを意味する言葉です。「捲土」は、土煙をあげるほどの激しい勢いを表します。
日常会話において使う機会はあまりないかもしれませんが、ビジネスシーンや選挙演説などで耳にすることがある言葉のひとつです。基本的にポジティブな意味で使われることを押さえておきましょう。
そのまま単語のみで使われることもあるものの、「捲土重来を期す」あるいは「捲土重来を果たす」のように、「期す」や「果たす」などの言葉と一緒に使うことが多いです。
捲土重来という表現を使うことで、失敗しても粘り強く成功を目指す、強い意志を伝えられます。捲土重来の言葉の意味や読み方を理解して、いざというときに正しく使えるようにしましょう。
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