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この記事のサマリー
・「万事休す」は、打つ手が尽きて見込みがない状態を表す言葉です。
・読み方は「ばんじきゅうす」で、「万事窮す」と書くのは誤りなので注意しましょう。
・類語は「万策尽きる」「お手上げ」など、手段が尽きた状態を表す表現が挙げられます。
「万事休す」という言葉を見聞きして、何となく切羽詰まった場面を思い浮かべる人は多いかもしれません。けれど、正しい読み方や表記、似た言葉との違いまで自信を持って説明できるでしょうか?
由来や例文をたどりながら、使いどころを確かめていきましょう。思わぬ発見があるはずですよ。
「万事休す」とは?
「万事休す」は「ばんじきゅうす」と読みます。注意したいのは「万事窮す」と書かないこと。音が同じで、言葉の意味を知っていると余計に「窮す」と書いてしまいそうになりますが、気をつけましょう!
意味
「万事休す」とは、「これ以上打つ手はなく、すべて終わりだ」という意味です。「もう何をしてもだめだ」「手段が尽きた」という状況で使います。
辞書では次のように説明されていますよ。
万事(ばんじ)休(きゅう)す
《「宋史」荊南高氏世家から》もはや施す手段がなく、万策尽きる。
もはやおしまいで、何をしてもだめだという場合に使う。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「万事」は「すべての物事」を指し、「休す」はここでは「やむ」「おしまいになる」という意味で使われています。
由来
「万事休す」の由来は、中国の歴史書『宋史』の「荊南高氏世家(けいなんこうしせいか)」に記された故事にあります。
中国の宋の時代、高従誨(こうじゅうかい)という人物は、第十子の保勗(ほきょく)をたいそうかわいがっていました。どれほど機嫌が悪いときでも、保勗の顔を見るだけで怒りがおさまったといいます。
その様子を見た人々は、「荊人目為万事休(荊人、目して万事休すと為す)」と言ったと伝えられています。
参考:『日本国語大辞典』、『デジタル大辞泉』(ともに小学館)
使い方を例文でチェック!
耳にしたことはあるけれど、自分で使う機会は少ない「万事休す」。具体的な例文を用いながら、自然な使い方をチェックしてみましょう。
「残り時間に対してこの点差は、万事休すだ」
スポーツ観戦などをしていると、試合終了が近づくにつれて得点差が気になり、「もう勝てない、諦めよう」と思ったことはありませんか? 残り時間でひっくりかえせないような点差がついてしまっているときは、まさに「万事休す」です。
「万事休すというにはまだ早い! 最後まで諦めずに調べよう」
その場にいる大多数の人が「もうこれ以上できることは何もない」と思っても、本当にそうとは限りません。希望を捨てたくないときや諦めたくないときは、「万事休すというにはまだ早い」と言うことができますよ。
「最後の頼みの綱だった友人からも断られ、万事は休した」
「万事」と「休す」の間に助詞を入れ、「万事は休した」と表現することも可能です。このときも「窮した」と書かないように気をつけましょう。「万事休す」よりも文章になじみやすく、会話やエッセイ調の文でも使いやすい表現だといえます。

類語や言い換え表現は?
「万事休す」に類語や言い換え表現はあるのでしょうか? より身近で、使いやすい言葉が見つかるかもしれません。さっそくチェックしていきましょう。
万策尽きる
「ばんさくつきる」と読みます。「まんさく」と読まないように注意しましょう! 文字の通り、「すべての手段が尽きた」という意味で、「万事休す」のように、何もできることがない状況で使います。若干堅い表現ではありますが、「万事休す」よりも、漢字から意味を推測しやすいのではないでしょうか?
お手上げ
両手をあげる動作に「降参」という意味があることから、「お手上げ」は「もうどうしようもない」という意味を表します。「万事休す」よりも身近で柔らかく、使いやすい言葉ですね。
刀折れ矢尽きる
戦で刀や矢などの武器が尽きた様子から、「立ち向かうための方法が何もない」「力を尽くしたものの、これ以上はどうにもならない」という意味で使われます。刀ではなく「弓折れ矢尽きる」と表現することもあります。
日常会話ではあまり使わないかもしれませんが、文章表現として知っておくと、切迫した状況を印象的に伝えられるでしょう。

反対の意味の言葉は?
類語を確認したところで、「万事休す」と反対方向の意味を持つ言葉も見ていきましょう。ただし、「万事休す」には、辞書的にぴったり対応する一語の対義語があるわけではありません。ここでは、危機から立ち直る、危険な状態を抜け出す、物事が順調に進むといった意味を持つ表現を紹介します。
起死回生
読みは「きしかいせい」。漢字から「死にかかっている状態から生き返る」というイメージが湧きますが、そこから転じて「絶望的な状態から立ち直る」ことを意味します。
虎口を脱する
読み方は「ここうをだっする」。虎口とは、動物のトラの口。つまり「危険な場所」を意味し、「とても危険な状態から抜け出す」ということを意味します。
順風満帆
読みは「じゅんぷうまんぱん」。帆に追い風を受けて船が順調に進む様子から、物事が順調に進むことを意味します。先に紹介した「起死回生」や「虎口を脱する」は、危機的な状態から立ち直る、または抜け出す意味を持つ言葉です。一方、「順風満帆」は、そもそも物事が順調に進んでいる状態を表します。
そのため、「万事休す」の厳密な対義語というより、対照的な状況を表す言葉として押さえるといいでしょう。
英語表現は?
「万事休す」について、最後は英語表現もチェック! 海外の人と会話するときにも自然と使える、シンプルなフレーズを紹介します。
It’s all over
overは非常に多くの意味を持つ言葉で、「〜の上に」「〜以上」という意味だけでなく、「終わって」という意味でも使われます。「It’s all over.」は、「もう終わりだ。」「これ以上どうにもならない。」というニュアンスを持つ表現です。試合や計画、人間関係など、幅広い場面で使いやすい英語表現といえるでしょう。
All is lost.
lostは「失う」という意味の単語です。「All is lost.」は、「すべてが失われた。」「もう望みがない。」というニュアンスで使われます。「It’s all over.」よりもやや重く、希望がほとんど残っていないような深刻な場面に合う表現です。
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)

人間万事塞翁が馬って?
「万事休す」と同じく「万事」を含む言葉に、「人間万事塞翁が馬」ということわざがあります。意味は、「人生の幸・不幸は移り変わるもので、何がいい結果につながるかは簡単にはわからない」というものです。「万事休す」とは意味が異なるため、混同しないように注意しましょう。
ここでは、由来となった物語も紹介します。
由来
昔、中国で1匹の馬を飼っている老人がいましたが、ある日、馬が逃げてしまいました。不幸なことと思われましたが、数か月後、その馬は別の名馬をつれて帰ってきます。
幸運だと思われたのもつかの間、また別の日、老人の息子がその馬から落馬し骨を折ってしまいました。これも不幸なことと思われましたが、その後、骨折していたせいで息子は兵役を免れることができたのです。
類語や言い換え表現は?
「人間万事塞翁が馬」の類語には、「禍福は糾える縄の如し(かふくはあざなえるなわのごとし)」、「楽あれば苦あり」などがあります。
「万事休す」に関するFAQ
ここでは、「万事休す」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q. 「万事休す」とはどういう意味ですか?
A. 「万事休す」は、もう打つ手がなく、物事の見込みがない状態を表す言葉です。「これ以上どうにもならない」「すべて終わった」と感じるような場面で使われます。
Q. 「万事休す」の読み方は何ですか?
A. 読み方は「ばんじきゅうす」です。
Q. 「万事窮す」と書いてもいいですか?
A. 「万事窮す」は誤表記です。「窮地に陥る」という言葉から連想しやすいですが、正しくは「万事休す」と書きます。
最後に
「万事休す」は、追い込まれた場面を表す言葉ですが、意味を知るほど、ただ暗いだけの表現ではないことも見えてきます。打つ手がない状況を冷静に言い表せる言葉だからこそ、文章の中で使うと場面の切実さが伝わりますね。
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