「肝胆相照らす」とは?
肝胆相照らすとは「かんたんあいてらす」と読み、お互いに心の底を打ち明けられるような、心が通じた人付き合いのことです。
肝胆相照ら・す
出典:小学館 デジタル大辞泉
互いに心の底まで打ち明けて親しくつきあう。「彼とは—・す仲だ」
「肝胆」とは肝臓と胆のうを指し、いずれも近い場所にある、生命を支える重要な臓器です。このことから、「肝胆」は「心の奥底」や「真実の心」などのたとえとして用いられるようになりました。
このことから「肝胆相照らす」は、お互いの心を照らし合わせるように包み隠さず話すことや、関係を表します。
出典は中国の「故事成語考」
肝胆相照らすの出典は、中国の故事を集めた「故事成語考」の中にある章「朋友賓主」の中の文章だといわれています。
「本心を探り合う」という意味ではない
肝胆相照らすの「照らす」を「探る」と捉えると、「本心を探り合う」という解釈をしてしまいがちですが、これは誤りです。
あくまでも、お互いの心を照らし合わせるように包み隠さず話すことや関係を指す、ポジティブな言葉であることを押さえておきましょう。
「肝胆相照らす」の使い方と例文
肝胆相照らすは「肝胆相照らすというように~」などとそのままの形でも使いますが、「肝胆相照らす仲」というような使い方をするケースが多くみられます。以下、肝胆相照らすを使った例文です。
・彼とはすぐに意気投合し、肝胆相照らす仲になった
・いつかは肝胆相照らすような相手に出会えると信じている
・本音でぶつかり合える彼女のような存在は貴重だ。まさに肝胆相照らす仲といえるだろう
・一緒に厳しい練習を乗り越えてきた彼とは、いつのまにか肝胆相照らす間柄になっていた
「肝胆相照らす」の類語・類似表現
肝胆相照らすには、似たような意味を持つ類語・類似表現がいくつか存在します。肝胆相照らすの類語・類似表現は以下のとおりです。
・胸襟を開く
・昵懇
・蜜月関係
・管鮑の交わり
・水魚の交わり
それぞれの意味や使い方、例文を紹介します。
胸襟を開く
胸襟を開くとは「きょうきんをひらく」と読み、思っていることをすべて打ち明けることです。「胸襟」とは「胸のうち」や「心の中」を指します。
「胸の内をさらす」「心の中を開く」から転じて、「思っていることをすべて話す」「隠し立てせずに本心を見せ合う」という意味で使われるようになりました。
【例文】
・お互いに胸襟を開いて語り合った
・胸襟を開いて話せる友人がいると、人生が豊かになる
・彼は、昔からの友人との胸襟を開いて語り合うことはほとんどない
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昵懇
昵懇は「じっこん」と読み、親しく打ち解けて付き合うことや、そのさまを意味する言葉です。「昵」には「近づく」や「なじむ」という意味があり、「懇」には「お互いに打ち解けて親しい」といった意味があります。
日常会話で使うことはほとんどなく、ビジネスシーンなどで使われることが多い言葉といえるでしょう。ビジネスの場では、「仕事上の付き合いが深い」といったニュアンスで用いられます。
【例文】
・彼とは長い間昵懇の仲だ
・あの2人の昵懇の仲には、誰も入り込む余地がない
蜜月関係
蜜月関係とは、非常に親密な関係や仲のよいさまを意味する言葉です。一般的には結婚して間もないことを指すことが多いですが、そこから転じて、仕事相手との仲が親密である場合などにも使われます。
【例文】
・両社は蜜月関係にある
・長い期間をかけて築いた蜜月関係が、あっという間に失われた
・A国と蜜月関係にあったのは、かなり昔のことだ
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水魚の交わり
水魚の交わりとは「すいぎょのまじわり」と読み、非常に親密な友情や交際をたとえた言葉です。水のないところでは、魚は生きられません。そこから転じて、切っても切り離せない親密な関係を表すようになりました。
中国の三国時代の武将であった劉備(りゅうび)と、その軍師である諸葛孔明(しょかつこうめい)の関係を表したとされる故事成語です。
【例文】
・幼少期から仲のよかった2人は、大人になっても水魚の交わりを続けている
・彼らの立場は異なっていたが、やがて水魚の交わりといえるほどの仲になった
・あの2人は今や、水魚の交わりといえる親友だ
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管鮑の交わり
「管鮑の交わり」は「かんぽうのまじわり」と読み、お互いの利害にとらわれない親密な交際を意味する故事成語です。
「管鮑」は、中国春秋時代の偉人である管仲(かんちゅう)と鮑叔牙(ほうしゅくが)の2人の名前を合わせた言葉です。
管仲と鮑叔牙が共同で商売をした際、分け前を余分に取った管仲に対して、管仲が貧しいことをよく知っていた鮑叔牙は何も言いませんでした。管仲は「我を生む者は父母、我を知る者は鮑叔」と言い、2人はますます親密になったとされています。
【例文】
・彼とは昔、管鮑の交わりを約束した
・彼らの友情はまさに管鮑の交わりといえるものだ
・長年対立していたA国とB国がついに管鮑の交わりを果たした
「肝胆相照らす」の意味や使い方をマスターしよう
肝胆相照らすは、お互いに心の底を打ち明けられるような、心が通じた人付き合いのことを指す言葉です。
「肝胆」とは肝臓と胆のうのことで、いずれも生命を支える重要な臓器であることから「心の奥底」や「真実の心」などを表します。そこから転じて「肝胆相照らす」は、お互いの心を照らし合わせるように包み隠さず話すことや、関係を意味するようになりました。
肝胆相照らすの「照らす」を「探る」と捉えてしまうと、「本心を探り合う」という解釈をしてしまいかねないため、誤った意味で覚えてしまわないように注意が必要です。この機会にぜひ、胆相照らすの正しい意味や使い方をマスターしましょう。
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