戦で敵に攻め込まれてきたときに、お城の中で主将がいる場所のことを、なんと呼ぶかご存知ですか? 一般的に「本丸」と呼ばれることが多いですが、「牙城」という言葉を使うこともできますよ。
そこで本記事では、「牙城」の意味や使い方、類語を解説します。ビジネスシーンでも応用できる表現なので、ぜひ覚えてみてはいかがでしょうか?
「牙城」の意味
「牙城」は、「がじょう」と読みます。意味を辞書で確認してみましょう。
《「牙」は「牙旗」の意で大将の旗》
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
1 城中で主将のいる所。本丸。「敵の―に迫る」
2 組織や勢力の中心となる所。本拠。「保守の―」
城の中で主将がいる所を「牙城」と呼びます。城の本丸であり、一般的に強敵が攻めてきたときに、立てこもったり、最後の砦となる場所のことを指す言葉です。
通常、城は本丸・二の丸・三の丸と複数の区域に分けられており、その中でも本丸は日本の城郭で中心をなす区画でした。主に城主の居所で、中央に天守閣を築き、周囲をお堀で囲んでいます。石垣による高い壁や、周囲に水をめぐらす濠(ごう)を作ることで、外敵から守っていたようですね。
また、城だけでなく政府や企業など、組織の勢力の中心となる場所のことを表すこともあります。
由来
「牙城」の、「牙」は「牙旗(がき)」のことで、象の牙(きば)を指します。昔の中国では旗の竿の先を象牙で飾り、猛獣が牙で身を守る形を表現したのだそう。そして、大将のいる場所にその旗を立てたことから、「大将旗」や「牙旗」と呼ばれるようになったとされています。
詳しい由来は定かではありませんが、もしかしたら大将がいるお城にも「牙旗」が付けられていたのかもしれませんね。
使い方を例文でチェック!
「牙城」を会話の中で使う場合は、「牙城を崩す」「牙城が揺らぐ」「牙城を築く」などと表現します。使い方を例文で見ていきましょう。
1:軍師の計略通り、みごと敵の牙城を崩した。
「軍師(ぐんし)」とは、大将のもとで、作戦を考え巡らす人のこと。トップに代わって、戦いに勝つためのはかりごとを考える人のことで、今でいうブレーンのような人物のことを指します。例文では、軍師の計画どおり、敵を倒すことに成功したということがわかりますね。
2:その政治家は圧倒的な権力を持って、己の牙城を築いている。
「牙城」は、政治の場面でも用いられます。圧倒的な権力を持ち、揺るぎのない地位を築いている場合、なかなかその立場を切り崩して他の議員が勝利することは難しいでしょう。国民からの支持を得ているならまだしも、権力で人を押さえつけるやり方は考えものです。
3:国内シェアナンバーワンを取るためには、相手の牙城を攻めるつもりで挑まなければならない。
すでにシェアを独占している企業に勝つためには、戦を挑む覚悟で仕事に取り組まなくては結果は出ない、ということですね。商品の品質の良さやコストパフォーマンス、環境への配慮などさまざまな条件をクリアする必要があるでしょう。
類語や言い換え表現は?
「牙城」と同じく、主将がいる場所を指す言葉に「本陣」「本営」「根城」などが挙げられます。それぞれどのような意味なのか一緒に見ていきましょう。
1:本陣
「本陣(ほんじん)」の意味は、以下の通りです。
1 陣営で、総大将がいる場所。本営。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
2 江戸時代、街道の宿駅で、大名・公家・幕府役人などが宿泊した公的な旅宿。
「本陣」とは、戦において総大将がいる場所のこと。「敵の本陣に迫る」「本陣を攻め落とす」などと表現します。「牙城」が城内のことを指すのに対して、こちらは城から出た外に自分の陣地を張る場合に用いられる言葉です。
(例文)
・敵の本陣までもうすぐだ。
・本陣が攻め込まれたら終わりだ。
2:本営
「本営(ほんえい)」の意味は以下の通りです。
総大将・総指揮官がいる陣営。本陣。「大―」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「本営」とは、総大将のいる陣営のことで、「本陣」とも言います。どちらも同じような意味ですが、「本陣」はやや古めかしい言葉で昔の合戦に使い、近代的な戦争には「本営」を使う傾向があるようです。
(例文)
・敵の本営に乗り込む。
・町を占領して本営を置く。
3:根城
「根城(ねじろ)」とはどのような意味でしょうか?
1 本拠とする城。主将の居城。本城。→出城(でじろ)
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
2 行動の根拠とする場所。根拠地。「町はずれの旅館を―に取材を進める」
「根城」とは、「根本となる城」という意味で、主に大将や主将の居城を指します。領国内にいくつかある城がある場合は、その中心となる城のことです。
(例文)
・そこを根城にした戦おう。
・敵の根城を襲った。
4:根拠地
「根拠地(こんきょち)」の意味は以下の通りです。
軍隊・探検隊・登山隊などで、修理・休養・補給など、前線の活動を支えるために設けられた場所。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
物事をするために中心となる場所のことを、「根拠地」と言います。主に戦で用いられる「本陣」や「本営」よりも、会話の中で使いやすい言葉ですね。隊員が休養や栄養補給する中心となる場のことを「根拠地」と言ったり、仕事などの活動をする場所として使うことも可能です。
(例文)
・この町を根拠地とすることにした。
・活動するための根拠地が欲しい。
最後に
「牙城」とは、「城中で主将のいる所」だということがわかりましたね。あまり聞きなれない言葉ではありますが、政治やビジネスシーンにも応用が効く言葉なので、表現の1つとして覚えてみてはいかがでしょうか?
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