それ、「笑顔うつ」のサインかもしれません
「あなたは、悩みを誰かに話したり、弱音を吐いたりしたときに、『誰だってそうだよ』『もっと前向きに考えなよ』などと言われて、モヤッとしたことはありませんか?
そのたびに、『自分はネガティブなんだな』『自己肯定感を高めなきゃ』『もっとがんばらないと』と思って、がんばっている人もいるかもしれません。
でももし、
・ やりたいことはたくさんあるのに、できなくて落ちこむ
・落ちこみはないけれど、体が重く感じる
・働けてはいるけれど、家に帰るとぐったりしてなにもできない
・人といるときは落ち着いているのに、ひとりになると涙があふれる
・つい先走ったことをして、いつも失敗してしまう
こんな状態が続いているのであれば、心と体をいたわってあげてほしいのです。なぜなら、あなたは『笑顔うつ』かもしれないからです。」
ーーそう語るのは、毎月500人以上の患者さんの診察をしながら、SNSなどで生まれつき感受性が強くて敏感な気質を持ったHSP(Highly Sensitive Person/ハイリー・センシティブ・パーソンの略)に関する発信もしている、精神科医・しょうさん。
しょうさんによると、なんとか社会生活は送れているものの、内面で抑うつ症状や身体の不調を抱えている状態を「笑顔うつ」と呼んでいて、簡単にいえば、うつ病や適応障害の軽症か中等症の状態にあたるのだとか。
笑顔うつは、初期の段階では異変の兆候がないことから、甘えや性格の問題と思われ、まわりからは精神の病気を疑われない傾向が。
でも、〝笑顔の仮面〟をつけて、社会生活をなんとか成立させてしまえるために、サポートが得られず、つらい症状が悪化しがちなのだという。
そこで、しょうさんの著書『精神科医が教える 笑顔うつから抜け出す方法』より、自分の心と体に起きていることを知り、不安を解消するための方法を解説!
いつのまにか「笑顔の仮面」をかぶってしまうワケ
一般的に、うつ病などの心に関する病気は、表情が暗くなったり覇気がなくなったりと、わかりやすい変化があることをイメージするでしょう。
でも、それは正しくもあり、間違ってもいます。
なかには、社会生活を送れていても体の不調が長期間続いていたり、ストレス因から離れると笑顔になれたりして、表面的に見えにくい場合もあるからです。
むしろ、異変が目に見えてきた段階では、症状が進んでいるのです。
本来、笑顔はポジティブな気持ちになったときに、自然とつくられるものです。
ところが、意図的に笑顔をつくることでも、神経伝達物質のドーパミンやセロトニンが分泌され、ポジティブな気持ちが生まれます。
ムリにでも笑顔をつくり、元気そうにふるまう人は、神経伝達物質が分泌されて、落ちこみや不安を抱えていても一時的に軽くなるのでしょう。
しかし、これが「限界に気づかず我慢する」「限界が見えずにがんばりすぎる」ことにつながっているのです。
とくに、我慢強い人は笑顔うつになっているのがわかりづらいです。
健康な人であれば、「しんどいな」と感じると、そこでムリをするのをやめようとします。「心と体が一致する感覚がある」ため、ストレスは生じません。
一方、笑顔うつになると、しんどくても「やる気を出してがんばらないと」と考えて、余計にがんばろうとしてしまいます。
次第に「心と体が一致する感覚」がなくなり、思うように動けなくなる、という状態になるわけです。
笑顔うつは、車のガソリンタンクに穴が開いてガソリンが流れ出ているにもかかわらず、エンジンをかけ続けている状態です。
当然、ガソリンが十分ではないので、いくらエンジンをかけても車は思うように動きません。
では、笑顔うつは心身にどんなことが起こるのでしょうか。次回以降でくわしく見ていきましょう!
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『精神科医が教える 笑顔うつから抜け出す方法』(精神科医 しょう著/あさ出版)
・ゆううつな気持ちがずっと続いていたり体が重くなっているにもかかわらず、会社の人や友人たちには明るい表情で接して悟られないようにしてしまう……。
・1人になったら悲しくもないのに涙が止まらなくなる。
・最近うっかりミスが増えてきた。
・やらなきゃと思うのに、体が動かない。
・外ではきちんとできるのに、家の中はめちゃくちゃ。
・しんどくても元気にふるまっているのに、「気持ちの問題だよ」「まじめにやってよ」「誰でもそんなことあるよ」と言われて、理解してもらえない……。
こんなことはないでしょうか。もしかするとそれは「笑顔うつ」のサインかもしれません。
この本では、まわりから理解されにくい「笑顔うつ」をイラストでわかりやすく解説。
「ホントはしんどいのにまわりに言えない人」に向けて、精神科医が体と心のケアの仕方を紹介します。