スマホはあなたの生活を本当に豊かにしている?
スマホは今や私たちの日常生活から切っても切り離せない電子ツール。
連絡手段として用いるだけでなく、旅先で目的地までの道のりを検索したり、電子書籍や映画、ネットショッピングを楽しんだり、SNSで情報収集・発信をしたり……。
スマホ1台でこんなにたくさんのことが行えるのだから、朝起きてから就寝直前まで肌身離さずに生活を送っているという人も少なくないはず!
このようにスマホによって生活の利便性が向上することで、私たちに大きな恩恵を与えてくれているのは紛れもない事実。
でも一方で、私たちの健康への影響について考えると、負の側面ともいえる事態が発生していることも無視できません。
「私はもの忘れに悩む人を対象にした『もの忘れ外来』で診療しておりますが、医療の最前線に立っている者として、このスマホによる健康問題は日に日に深刻化しているように感じています。
特に、これまでは高齢者を中心とした患者さんが大半を占めていましたが、最近は30~50代の患者さんが急増。そのほとんどがスマホを原因とした、認知症のようなもの忘れを発症して来院されます」
そう警鐘を鳴らすのは、日本認知症学会専門医・指導医の奥村 歩先生。
しかし、奥村先生によると、これまでの診療経験と医学的根拠から、スマホ依存による体調不良は生活習慣を見直すことで改善できることがわかっているという。
スマホ=悪ではありません。どんなに素晴らしいツールでも、正しく付き合っていくことが大切ですよね!
そこで今回は、奥村先生の著書『スマホ脳の処方箋』から、スマホと脳過労の関係や生活改善テクニックをご紹介! 4回にわたってプチ連載形式でお届けします。
前回の記事はこちら>>あなたも陥っていない? 【スマホ依存】でこんな体調不良が… 依存度をチェック!
スマホ酷使によるセロトニンの減少で「スマホうつ」に
スマホを酷使することによって、セロトニンやメラトニンの分泌が減少し、不眠症に繋がる可能性が。さらに不眠症が続くとうつ病の発症リスクが高まる可能性があるのです。
『スマホ脳』(新潮社、2020年)の著者として知られるアンデシュ・ハンセン氏の母国スウェーデンでは、「抗うつ剤」の処方を受けている成人は100万人以上。
この数は、スウェーデン人の10人に1人以上がうつ病と診断されていることを意味します。
ハンセン氏は、同書のなかでうつ病の急増はスマホの普及に比例していると述べています。ハンセン氏は、うつ病の危険性を高める生活習慣として、次の項目を挙げています。
1. 睡眠の問題
2. 座っている時間が長いライフスタイル
3. 社会的孤立
4. アルコールや薬物依存
5. スマホの使用
特に5.がうつ病の危険因子となるのは、SNSによる自己肯定感の低下・不眠症・運動不足につながるからだと推測しています。
SNSから膨大に流れてくる情報によって自分と他人を比較し、自己肯定感が下がる。スマホから発せられるブルーライトによって寝つきが悪くなる。いつでも、どこでも持ち歩けるスマホによって運動不足になる。
これらがうつ病を発症する危険を高めているというのです。
ハンセン氏の分析はごもっともです。
ただ、先述しましたが、うつ病は心や身体の問題というよりも脳の問題です。
うつ病の原因は脳過労による脳の機能低下であると考えられており、もっといえば、セロトニンが枯渇し、脳の前頭葉の機能が低下した状態であると考えられています。
ですから、スマホによる脳過労の状態でうつ病を発症することはおかしくありません。脳内エネルギー物質のセロトニンが著しく枯渇しているからです。
スマホ使用に起因するこのうつ病を「スマホうつ」と私は呼んでいます。
「スマホうつ」になると、以下のような症状が出ます。
・不眠症
・不安症
・対人恐怖症
・認知機能の低下
「スマホうつ」でも通常のうつでも、脳内のセロトニンが著しく枯渇する状態は同じなのす。
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冒頭の「スマホはあなたの生活を本当に豊かにしている?」の問いに自信をもって「イエス!」と答えられる生活を送るためにも、ぜひ本書を参考に生活習慣の改善を実践してみてくださいね!
TOP画像/(c)Adobe Stock
『スマホ脳の処方箋』(著者:奥村 歩/あさ出版)
近年、働き盛りの方々をふくめて体調不良をうったえる外来が増えているという。その原因はズバリ、スマホ。認知症に似た症状であるが、「脳疲労(脳過労)」によるもの。その原因は「脳内エネルギー」の枯渇によるもの。
一昨年『スマホ脳』がベストセラーとなり、スマホと脳との関係が話題になった。しかし、その数年前から、著者はスマホと脳との関係を医学的見地から注目していた。最近ではもの忘れはもちろん、「うつ」リスクが3倍になることを指摘している。
スマホはビジネスでは手放せないものとなり、もはや、「いかにスマホと上手に付き合うか」という時代に入ったといえる。本書では、普段の日常生活における、無理のない上手な付き合い方を「もの忘れ外来」「認知症・鬱」の専門家が解説。
また、うつは認知症に移行する可能性が大きいことも紹介するとともに、うつがいかに健康を害するリスクが高いこともお伝えする。
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