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長座や片足だけ、立位、いろいろな方法がある前屈ストレッチ
“前屈”とは、読んで字のごとく、体を前に曲げることをいいます。
そして、“前屈ストレッチ”というのは、体を前に曲げて一定時間姿勢を保つ柔軟法のことをいい、床に座って、両足を前に伸ばした長座(ちょうざ)の姿勢でおこなう方法が一般的です。トレーニング前後の準備運動や、リカバリーとして取り入れる方も多いポピュラーなストレッチでもあることから、とりわけ珍しいものではないかもしれませんね。
また、前屈ストレッチには、上記の長座位体前屈のほかにも、同じく長座の姿勢から片足のひざを曲げておこなう前屈や、立位で足を揃えた姿勢、もしくは足を前後に開いた姿勢でおこなう前屈など、いくつかの種類があり、体の状態・柔軟性によって適した方法を選ぶことも可能です。ですが、いざ前屈ストレッチをしてみても、思ったように伸びを深めることができずに「体が硬いから仕方がない」「前屈が苦手・できない」と思う方も少なくありません。
これには、ハムストリングという太ももの裏側の筋肉と、お尻の筋肉の硬さが関係しているため、「体全体が硬い」のではなく、「体の一部の筋肉が硬い」という表現のほうが正しいでしょう。
特に、デスクワークが多めで、長時間座って過ごす方は、ハムストリングとお尻の筋肉が硬くなりやすく、その結果、前屈を深めるのが難しくなってしまうことがあります。
デスクワークが長めだと、前屈ができない!?
前屈を深めるために重要な役割を担うのが、ハムストリング(太ももの裏側にある4つの長い筋肉の総称)。ハムストリングは、ひざを曲げたり、股関節を伸ばしたり、歩く・走る・ジャンプをする・スキップをするときなどに使われる筋肉なのですが、椅子に座って過ごしているあいだはほぼ使われないだけでなく、短縮した状態が続き、筋肉が硬くなってしまいがちです。
それと、お尻の筋肉。お尻の筋肉も、ハムストリングと同様に座っているあいだは動きが少なく、そのうえ体重による負荷がかかることでも硬くなりやすいでしょう。さらに、ハムストリングとお尻の筋肉が硬い=伸びにくい(ストレッチが困難)ことに加えて、もうひとつ。腸腰筋(ちょうようきん)という腰から太ももの付け根に位置する筋肉が硬いと、股関節を屈曲させにくくなるため、体を前に倒すのが難しくなります。
つまり、前屈を深めるには、ハムストリングとお尻の筋肉、腸腰筋の柔軟性を高めてあげることがポイントになるわけです。
ちなみに前屈が深まると、次のような嬉しい効果に期待できます。
前屈が深まることでのメリット
1. ハムストリングの柔軟性が増すことで、下半身の血行が促進されて、冷えやむくみ、疲労の回復などにつながる
2. 体の背面の筋肉が柔らかくなり、腰痛が軽減する
3. 下半身の可動域が広がり、怪我の予防になる
※ ただし、腰痛の軽減に効果的だとはいっても、その原因はさまざまなので、ストレッチをしても変化がない・痛みが強くなるような場合は、無理におこなわないでください。
前屈をグッと深めるストレッチ4選
ここからは、前屈を深めるためのハムストリング、お尻、腸腰筋のストレッチを紹介していきます。
●ハムストリングのストレッチ
STEP 1:両足を伸ばして座る。左ひざを曲げて外側に開き、足の裏を右の太ももにつける
▲左右の座骨(お尻の尖った骨)に、均等に体重を乗せて座ります。体が“L字”になるように、背筋を伸ばしましょう。
STEP 2:息を吐きながら、上体を前に倒して前屈をする
▲右足はひざを伸ばしたまま、かかとを前に突き出すようにします。上体を深く倒すというよりも、足の背面をストレッチすることを意識しましょう。背中は、なるべく丸めないように。呼吸を5回繰り返したら、反対側も同様におこないます。
余裕がある方は、左足の甲を右の太ももの上に乗せて前屈をすると、太ももが床から浮きにくくなって、よりしっかりとハムストリングをストレッチすることができます。
▲股関節から上体を倒すようにするのが、ポイント!
●ハムストリング&お尻のストレッチ
STEP 1:足を揃えて立つ。右足をうしろに大きく引き、つま先を外側に開く
▲骨盤をしっかりと立てます。グラグラせずに、安定して立てる足幅に調節しましょう。
STEP 2:息を吐きながら、上体を前に倒して前屈をする
▲左側のハムストリングとお尻のあたりがグーッとストレッチされるところで、姿勢をキープ。前屈の深さは、無理のないところからスタートし、伸びがツラい場合は、ひざを軽く曲げます。呼吸を5回繰り返しましょう。
STEP 3:息を吸いながら、上体を半分起こして目線を上げる
▲ここでも、上体の角度は無理のないところでキープします。足の裏をしっかりと床につけたまま、呼吸を5回繰り返したら、反対側も同様にSTEP 2~STEP 3をおこないましょう。
●腸腰筋のストレッチ
STEP 1:ひざを立てて座る。両手を体のうしろについて上体を倒したら、左足首を右太ももの上に乗せる
▲両手の指先は、お尻のほうに向けます。背中~腰がなるべく丸まらないようにして、背筋を伸ばし、目線を軽く上げましょう。
STEP 2:息を吐きながら、両足を左側に倒す
▲目線は正面に向けたまま下半身をねじり、右側の腰まわりが心地よくストレッチされるところで姿勢を保ちます。足を倒す角度は、無理のないところまででOK。呼吸を5回繰り返したら、反対側も同様におこないます。
●ストレッチチューブを使ってサポートするのも◎
次は、道具を使ってストレッチをサポートする方法です。
STEP 1:足を伸ばして座る。ストレッチチューブを両足の裏にかけ、反対側を手で持つ
▲一度、前かがみになった上体を起こしてきて、背中~腰を伸ばしましょう。
STEP 2:息を吐きながら、上体を倒して前屈をする
▲ストレッチチューブを手で引っ張り、なるべくひざを伸ばしたままで、かかとを前に突き出すようにします。上体を深く倒さなくても、足の背面をストレッチすることができるでしょう。呼吸を5回繰り返します。
仰向けになり、片方の足の裏にストレッチチューブをかけて床から持ち上げると、寝ながらハムストリングのストレッチをすることが可能。ここでも、左右ともに5呼吸繰り返します。
ゆっくりと息を吸って、吐くと、時間にして約10秒ほどかかります。ということは、5呼吸では約50秒。筋膜や靭帯は、90秒以上のストレッチで伸張してくるので、体の状態をみながら呼吸数を増やしていくといいでしょう。
体の背面(ハムストリングやお尻)の筋肉を硬くしてしまう日常生活でのNG習慣
最後に、深い前屈の妨げとなる体の背面の筋肉を硬くしてしまう原因を挙げていきたいと思います。
1. 長時間座ったまま、同じ姿勢で過ごす
2. ハイヒールを履いているとき、ひざを曲げて重心が前にかかったまま、もも裏を伸ばさずにちょこちょこと歩く
3. 腹筋と背筋、どちらかに偏ったトレーニングをしている
ヨガインストラクター 高木沙織
「美」と「健康」を手に入れるためのインナーケア・アウターケアとして、食と運動の両方からのアプローチを得意とする。食では、発酵食品ソムリエやスーパーフードエキスパート、雑穀マイスターなどの資格を有し、運動では、骨盤ヨガ、産前産後ヨガ、筋膜リリースヨガ、Core Power Yoga CPY®といった資格のもと執筆活動やさまざまなイベントクラスを担当。