目次Contents
慣用句「血も涙もない」の意味とは
「血も涙もない」とは、人間らしいあたたかみがまったく感じられないことです。本来であれば、血も涙も人間に備わったもの。生活していれば、他者が困っている姿に胸を痛めたり、同情して涙したりする場面も少なくありません。
「血も涙もない」は、そういった様子がうかがえないほど、冷酷で非情な様子を表す言葉です。そのため、他者に対して使う際は注意する必要があります。
「血も涙もない人」というと、単に「冷たい人」と言うよりも冷酷な雰囲気が強まるためです。他者に対して「人としての良心がない」と伝えたいときは、その場に応じた表現を心がけましょう。
血も涙もな・い
出典:小学館 デジタル大辞泉
全く人情味がない。冷酷そのものである。「―・い借金の取り立て」
「血も涙もない」の使い方と例文
「血も涙もない」は、他人の痛みに無関心な様子を表す言葉として、以下のように活用できます。
・体調が優れないと知っていながら残業を押し付けるなんて。血も涙もない仕打ちとはこのことだ
・行政の対応は、困窮者の声に耳を傾けず、むしろなかったものにしようとする血も涙もないものだった
・彼女は最新作のなかで、多くの仲間をあざむき生き延びようとする、血も涙もない人物を演じきった
・血も涙もないと思っていた上司の優しさに触れ、少し動揺している
「血も涙もない」の類語や言い換え表現
「血も涙もない」様子は、状況に応じて次の語句に言い換えられます。
・冷淡
・冷血
・クール
・無慈悲
「血も涙もない」の違いとともに、具体的な使用例を確認していきましょう。

「冷淡」
「冷淡(れいたん)」とは、物事に興味や関心を示さないことです。冷たい様子を表す点は「血も涙もない」と共通しています。
「人としてのあたたかみがない」という意味は含まれないものの、思いやりがないことも表す言葉です。
そのため、他者の痛みに興味がない様子は「血も涙もない」と同じニュアンスで「冷淡」と言い表せます。
・彼女が涙ながらに相談してきたのに、何も感じないの? 本当に冷淡な人だね
・彼女のそっけない対応は、どこか冷淡に感じた
▼あわせて読みたい
「冷血」
「冷血(れいけつ)」は、人間らしいあたたかみがないことを意味します。「血も涙もない」と、非常に意味の似通った言葉です。
また、血も涙もないような男性のことは「冷血漢(れいけつかん)」と言い表します。「漢」は男性を指し、心の冷たい男性を表す言葉として使われます。
・仲間が困っているのに見て見ぬふりなんて、これほど冷血な人だとは思わなかったよ
「クール」
「クール」には、冷静や冷ややかなどの意味があります。物事に簡単に動じない点は「血も涙もない」と同様です。ただし、思いやりがないという意味は含まれません。
また「クール」はかっこいい様子も表します。「血も涙もない」と比べると、使用範囲が広い点も大きな違いといえるでしょう。
「血も涙もない」に比べて批判的なニュアンスは弱く、冷静さを褒める言葉としても使用できます。
・いつもクールな先輩は、度重なるトラブルにも動じず冷静に対処した
・今日のファッションはダークカラーでまとめ、クールな印象に仕上げました
▼あわせて読みたい
「無慈悲」
「慈悲(じひ)」とは、他者をいつくしんだり、あわれんだりすることです。「無慈悲」は、そのような心がないさまを表します。
他者に対する思いやりがない点は「血も涙もない」と同様です。反対に、慈悲の気持ちが強い人は「慈悲深い(じひぶかい)人」と言い表せます。
・徹夜でトラブルを解決した部下に、労いの言葉ひとつかけないなんて。無慈悲にもほどがある
・他者の痛みに気を配ろうとしないのだから、無慈悲といわれても仕方ない
▼あわせて読みたい
「血も涙もない」の類語とされる慣用句
「血も涙もない」のように、2つ以上の語句が重なり新たな意味を生み出す慣用句には、さまざまな種類があります。
ここでは、辞書で「血も涙もない」の類語に定義されている慣用句についてみていきましょう。

「目も当てられない」
「目を当てる」とは、物事の動きに注目することです。「目も当てられない」は、ひどい惨状に目を向けていられない様子を表します。
物事に目を向けようとしない点は「血も涙もない」と似ていますが「あまりに気の毒で見ていられない」という感情が含まれる点が大きな違いです。
「見るに忍びない」
「忍びない」には、がまんできない、耐えられないなどの意味があります。「見るに忍びない」は、そのような気持ちから注視するのがつらい気持ちを表す言葉です。
辞書では「血も涙もない」の類語に含まれますが、思いやりのなさから見ないのではなく、自分がつらくて見られないといった状況に適しているといえるでしょう。他者のつらそうな姿に、自分の心が動かされた際に使用するのが一般的です。
▼あわせて読みたい
「目を背ける」
「目を背ける」とは、見ていられないという気持ちから視線を逸らすことです。関わり合いを避けるという意味もあり、さまざまな場面で使用できます。
たとえば「彼は彼女の苦しみを知っていながら目を背け、その場を立ち去った」という場合は、「血も涙もない」のように冷酷なニュアンスが感じられます。ただし「血も涙もない」のように、その理由が思いやりのなさからくるものとは限りません。
また「目を背ける」は「現実から目を背ける」のように、物事から逃避する意味でも使用できます。
▼あわせて読みたい
「血も涙もない」を使い表現の幅を広げよう
「血も涙もない」は、思いやりのない冷たい様子を表す言葉です。本来、人にあるはずの血や涙の存在が感じられないほど、冷たい人だと表現できます。
類語には「冷淡」や「冷血」などがあります。いずれも「血も涙もない」と似ていますが、細かな意味合いは異なるため使用時は注意が必要です。
慣用句を使うことで、表現の幅をより広げられます。それぞれの意味を正しく理解し、状況に応じた使い分けを検討してみてください。
メイン・アイキャッチ画像:(c)Adobe Stock



