この記事のサマリー
・「マイペース」は和製英語。ネイティブには“in one’s own way”などで伝えるのが自然です。
・「マイペースな人」は自己調整力の高いタイプ。実はストレス耐性も強く、職場では貴重な存在です。
・マイペースは「ゆっくり」ではなく「丁寧さ」や「本質志向」とも解釈できる価値ある性格特性です。
「マイペースな人だよね」。そんなふうに言われて、嬉しいような、少し戸惑うような気持ちになったことはありませんか? 「マイペース」という言葉には、落ち着きや自分らしさがあるといったポジティブなニュアンスもあれば、時に「空気が読めない」といったネガティブな意味合いで使われることもあります。
この記事では、「マイペース」という言葉の意味やマイペースな人の特徴、マイペースな自分との付き合い方まで丁寧に掘り下げながら解説します。
「マイペース」とは? 意味と英語表現を解説
「マイペース」という言葉をなんとなく使っていませんか? まずは、意味から確認していきましょう。
「マイペース」の定義と使い方
「マイペース」とは、本来「自分のペースを保ちながら物事を進めること」を指す言葉です。辞書では、次のように紹介されています。
マイ‐ペース
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
《和 my+pace》自分に合った進度・方法。「―で勉強する」
「マイペース」は、「焦らず自分のやり方で進む姿勢」と捉えられる一方、場面によっては「協調性に欠ける」といった印象を与えることも…。例えば、職場で「彼はマイペースだね」と言われたとき、それが誉め言葉なのか皮肉なのかは、空気を読んで判断する必要があります。
私自身、上司に「もう少し周囲に合わせられるといいね」と言われたことがあり、その裏に「マイペースすぎる」という評価が含まれていたのだと後から気づいた経験があります。

英語の“my pace”との違い
「マイペース」は英語の “my pace” を語源としますが、ネイティブの会話ではほとんど使われない和製英語です。英語で自分のペースを保つことを表現したい場合は、“one’s own pace”や“in one’s own way”などが自然な言い回しです。
なお、“one’s own pace”は主に速度を示しており、“in one’s own way”は「自分に適したやり方」を指します。場面によって使い分けるといいでしょう。
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)
マイペースな人の特徴と心理
「マイペースな人」ってどんな人? と思ったことはありませんか。ここでは性格的な特徴や行動傾向を掘り下げ、共感や自己理解につながるヒントを紹介します。
マイペースな人の長所
マイペースな人の魅力は、何といっても「自分軸」を持っていること。周囲の雰囲気に流されず、自分の価値観やリズムを大切にできる人は、ストレスに強く、安定した判断ができる傾向にあります。例えば、仕事でトラブルが起きても感情に流されず冷静に対処できるのは、マイペースな人の大きな強みです。
マイペースな人の短所と誤解
一方で、マイペースな性格は誤解されやすい面もあります。周囲のペースに合わせないことで、「協調性がない」「のんびりしすぎ」と捉えられることも。特にチームワークが求められる場面では、他人のテンポを無視しているように見えてしまうことがあります。
筆者も、「あの人、マイペースすぎて指示が伝わらない」と言われて悩んだことがありました。相手には悪気がなくても、すれ違いが生まれるのがこのタイプの難しさです。対人関係では、自己開示や「今こう考えているよ」といった補足があると、誤解を防ぎやすくなります。
「マイペースすぎる」人へのイライラ・対処法
「マイペースすぎる人にイライラしてしまう…」という声もよく耳にします。特に、急いでいる場面や締切がある仕事では、「なんでこんなに遅いの?」と苛立ってしまうこともあるでしょう。
対処法としては、タスクの見える化や、時間管理の工夫を「お互いのために」提案することが効果的です。例えば、「〇時までに終わると助かるよ」とやんわり伝えることで、相手にプレッシャーを与えずに意識を共有できます。
また、マイペースな人のリズムに巻き込まれない意識も大切です。相手のペースに引きずられず、自分のリズムをキープする術を持つことで、よりよい距離感が保てるようになります。
マイペースな自分とうまくつき合うには?
マイペースな性格に悩んでいる人、自分を責めてしまう人に向けて、自分らしさを生かすヒントをお届けします。マイナスではなく「強み」として意識を転換しましょう。
自己理解とセルフマネジメント
「自分って周囲に比べて遅いのかな」「何かズレてる?」と不安に思うことはありませんか? でも、その「ズレ」こそが個性であり、思考の深さや繊細さにつながっていることもあります。
セルフマネジメントの観点では、自分の集中しやすい時間帯や作業スタイルを見つけ、スケジュールに組み込むことで生産性が高まります。例えば「朝はぼーっとしてしまう」というタイプなら、午前はルーティン業務に充てて、思考を要する仕事は午後に回すなど、リズムに合った工夫が有効です。
例えば筆者は、朝イチに会議が続くと疲弊してしまう体質ですが、午後のほうが発想が豊かになるため、重要な資料作成は意識的に午後に回すようにしています。

「マイペース=悪いことじゃない」と思える視点
「もっとスピード感を持って」と言われるたびに落ち込んでいた時期、ある先輩にこう言われました。「あなただから、気づけることがあるよ」。その一言で、自分のペースに誇りを持っていいのだと感じられました。
マイペースであることは、時に「ゆっくり」ではなく「丁寧」であり、「のんびり」ではなく「本質志向」です。経営学者ドラッカーも「成果を出す人は、自分のやり方を知っている」と述べており、自己理解と自己肯定が成果につながることを示唆しています。
また、組織や人間関係においても、マイペースな人は「場を落ち着かせる存在」「巻き込まれない冷静な視点」を提供できる貴重なタイプ。周囲と違うテンポを「調和を崩す要素」ではなく、「バランスをとる力」として捉えてみましょう。
大切なのは「相手に合わせるか、自分を押し通すか」ではなく、「自分を知った上で、どのくらい調整するか」という視点です。そう考えると、マイペースは伸ばせる力に変わっていきます。

マイペースに関するFAQ
ここでは、「マイペース」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1:就活で「マイペース」と言っても大丈夫?
A:面接やESで「私はマイペースです」とそのまま使うのは避けたほうがいいでしょう。相手によっては「協調性がない」と受け取られる可能性があります。
代わりに、「自分のペースを大切にしながらも、周囲と調和する姿勢を持っている」など、具体的な行動や姿勢で補足すると安心です。
Q2:恋愛でマイペースな人はどんな印象?
A:相手に安心感を与える一方で、「温度差がある」「気持ちが読めない」と思われることもあるようです。
コミュニケーションにおいては、マイペースだからこそ「こまめな声がけ」を意識することで、すれ違いを防げます。
Q3:マイペースな人にイライラしないコツは?
A:「自分の基準」を一度手放してみることが大切です。
相手の視点や価値観に立ってみることでイライラがやわらぐことがあります。具体的には「どうしてそのペースなのか?」を聞いてみたり、タスクの締切や優先順位を共有する工夫が効果的です。
最後に
「マイペース」という言葉は、時に誤解や戸惑いがつきまといます。でも、それは言葉の輪郭が広いからこそ。だからこそ、自分の立場や伝えたい相手に合わせて、丁寧に表現を選ぶことが大切です。
もしあなたが「マイペースかもしれない」と思っているなら、それはきっと、自分のペースを大切にしたいという気持ちの表れ。焦らなくていい、でも、伝える工夫を少しだけ意識してみる。それが、強くなる第一歩かもしれません。
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