急がば回れの意味
「急がば回れ」の意味は、デジタル大辞泉によるとこのように書かれています。
【急がば回れ:いそがばまわれ】早く着こうと思うなら、危険な近道より遠くても安全確実な方法をとったほうが早く目的を達することができるというたとえ。
急いで気持ちが焦ってしまうときほど失敗してしまうことがあるので、遠回りでも確実な道を進むことが大切という意味ですね。これは私生活でもビジネスでも覚えておきたい戒めのことわざです。
急がば回れの語源・由来
◆急がば回れの語源
急がば回れの語源は、室町時代の連歌師・宗長の歌「もののふの矢橋の船は速けれど急がば回れ瀬田の長橋」からきています(平安時代の歌人・源俊頼の歌という説もあります)。
この歌は、江戸と京都を結んでいた五街道の一つ・東海道の途中にある琵琶湖のことを詠んだ歌です。「もののふ」とは武士のことを指し、「矢橋の船」とは、東海道五十三次草津宿(滋賀県草津市矢橋港)~大津宿(大津市石場港)を結んだ湖上水運・矢橋の渡し船を意味します。
◆急がば回れの由来
語源で解説した通り、琵琶湖が由来になっています。
京都へ向かうには、矢橋から琵琶湖を横断する方が瀬田の唐橋経由の陸路よりも近道。ですが琵琶湖の横断は危険な航路だったため、このような歌が詠まれたそうです。
急がば回れの類語
急いてはことを仕損じる
「あまりあせるとかえって失敗に終わり、急いでしたことが無駄になる」という意味です。
あわてる乞食はもらいが少ない
急ぎすぎると、かえって悪い結果を招くという戒めの言葉です。「先を争って貰おうとすると、かえって貰いが少なくなる」という意味合いがあります。
短気は損気
「損気」は「短気」に語呂を合わせたもので「短気を起こすと、結局は自分の損になる」という意味になります。短気を戒めた言葉です。
急がば回れの対義語
鉄は熱いうちに打て
「精神が柔軟で、吸収する力のある若いうちに鍛えるべきである」ことのたとえです。転じて、物事は関係者の熱意がある内に事を進めないと、あとになると問題にされなくなることを指す言葉でもあります。
先んずれば人を制す
「他人よりも先に事を行えば、有利な立場に立つことができる」という意味のことわざです。
中国前漢の武帝の時代に、司馬遷によって編纂された歴史書『史記(しき)』の「項羽本紀」が由来とされています。
急がば回れの例文
焦ってもいい仕事はできない、ビジネスは急がば回れが大切だ
商品開発やプレゼン作成など、ビジネスには締め切りや納期がつきもの。スピード感も大事ですが、焦ってやっつけ仕事になってしまっては、ビジネスは成功しません。大きな仕事ほど時間をかけて着実に成功させるべきという例文です。
すぐに結果が出るダイエットはリバウンドしやすい、急がば回れで着実に効果を実感するほうがいい
食事を抜くなどの過度なカロリー調整は、すぐに効果が出ても結局リバウンドしてしまい、結局無駄に終わってしまったという経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。食事の置き換えや運動して基礎代謝をあげるなど、時間がかかっても確実に効果が出るダイエットの方が痩せる近道になる場合も。
確実に試験に合格できるよう、急がば回れな勉強法を実践しよう
定期試験は一夜漬けでなんとかできても、期末試験や受験はそうもいきません。目の前の課題だけでなく、その先にある課題も踏まえて準備をしたほうが、後々自分のためにもなります。
急がば回れの英語表現
Haste makes waste.
「急げば無駄が出る」という意味で、「急いてはことを仕損じる」に近いニュアンスの表現です。
More haste, less speed
「急いでいる時ほど、スピードが落ちる」という少し分かりにくい表現になりますが、急いでする行動や選ぶ道ほど、逆に遠回りになってしまうという意味があります。
Slow and steady wins the race.
「遅くても、確実に行動する人がレースに勝つ」という、寓話『ウサギとカメ』の物語に少しニュアンスが似ていますね。
急がば回れは琵琶湖を回る?
由来でも解説した通り、「急がば回れ」は琵琶湖が舞台になっている言葉です。
「船で琵琶湖を渡る方が早くても、確実に目的地に行ける橋を渡り危険を回避すべき」という言葉ができるほど、琵琶湖は大きく、そして危険な場所だったのでしょうか?
◆琵琶湖の大きさ
琵琶湖は滋賀県にある日本最大・最古の淡水湖です。世界中で20ほど存在する古代湖のうちの一つでもあり、世界的にも有名な湖なんですね。
琵琶湖の面積は約670㎢で、東京ドーム約14,330個分。琵琶湖岸の延長は約235km(道路沿いに進めば約200km)あり、自転車で琵琶湖を一周するには、だいたい1泊2日ほどかかるそうです。
◆琵琶湖を船で渡るのは危険だった?
改めて琵琶湖の大きさを知ると、遠回りは相当な時間と体力が必要なはず。それほど当時の琵琶湖を船で渡ることは危険だったのでしょうか。
この時代の渡し船は、突風を受けると沈没や転覆をする危険性がありました。さらに「比良おろし」という、丹波高地から琵琶湖に向かい、比良山地南東側の急斜面を駆け降りるように吹く北西の風が吹くことがあったため、「遠回りでも安全な道を行くべき」という言葉が現在まで残っているかもしれません。
最後に
「急がば回れ」の意味や由来、類語、英語表現などを解説しました。意味や使い方を知っていても、語源や由来を知ることでさらに理解が深まりますね。
ビジネスの場面でもプライベートでも心に留めておきたい「急がば回れ」。焦ってしまうときほど、他にどんな選択肢があるか見極めることが大切なのかもしれません。
言葉の意味/デジタル大辞泉
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