「慈悲」とは?
まずは、慈悲(じひ)の意味について簡単に確認しておきましょう。慈悲をかける、慈悲がない、慈悲に満ち溢れている、などというフレーズを物語などで聞いたこと、ありますよね? ちょっとかしこまった雰囲気のシーンで使われることが多い慈悲ですが、2つの意味を持ち合わせています。
意味
慈悲には、いつくしみあわれむという意味と、仏や菩薩が人々の苦しみを取り除き、楽しみを与えるという仏教的な意味合いの2つがあります。サンスクリット語で「慈」は「友情」、「悲」は「同情」を指しており、慈悲は深いあわれみの心を表しています。
仏典では少し解釈が異なり、生きるものに幸福を与える与楽の意味が「慈」、不幸を抜き取る抜苦の意味が「悲」とされているようです。一般的には、前者のいつくしみあわれむという意味で使われることの方が多いでしょう。
よって、「慈悲深い」とは、いつくしみあわれむ気持ちが大きいことを意味します。
「慈悲」の類語と対義語
ここでは、「慈悲」の類義語や対義語をいくつか解説していきます。類語に関しては、それぞれ若干意味が異なるので使い分けに注意しましょう。
類語
類語には「慈愛」「恩愛」「情け」などが挙げられます。
「慈愛」は、親が子供をいつくしみ、かわいがるような深い愛情を表した言葉です。「恩愛」は恵みやいつくしみの意味のほかに、夫婦や肉親間の愛情、執着という意味も持っています。「情け」は、ことわざにもよく出てくる言葉ですよね。他人をいたわる人情や思いやりの意味を持っています。
対義語
対義語には「無慈悲」「酷薄」「非情」などが挙げられます。これらはどれも、思いやりの気持ちが全くないという意味の言葉です。その中でも、「酷薄」は残酷で薄情な様子を表しており、「非情」は、人間として当たり前にあるはずの思いやる気持ちがないさまを表します。
使い方を例文でチェック
意味について確認できたところで、使い方を見ていきましょう。「慈悲深い」は主に、人の特徴として語られることが多いです。“慈悲深い虎”という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、こちらは動物占いに出てくるキャラクターを指しています。以下で例文を3つ、紹介していきます。
どれだけ疲れている日でも、必ず他の人に席を譲る彼はとても慈悲深い
自分のことよりも他の人のことを気にかける姿勢は、「慈悲深い」と言えるでしょう。皆さんの周りにも「慈悲深い」人はいませんか? このような人に、私達は知らず知らずのうちに支えられているのかもしれません。
生き物を大切にする精神は慈悲深いと言えるだろう
いつくしみあわれむ気持ちは、人間だけでなく全ての生き物にも持つべきです。ペットを飼っている人は、家族のように動物も大切にしていますよね。動物や植物を大切に出来る人も、「慈悲深い」人の特徴です。
慈悲深い女性はやはり魅力的である
思いやる心を持った優しい女性にはやはり惹かれますよね。このような女性は、男性からも女性からも愛されるはず。慈悲深い女性になるためには、まず気遣いが出来るようになること。愛される女性を目指して、心がけていきましょう。
「慈悲深い」の英語表現
「慈悲深い」の英語表現には「merciful」と「charitable」の2つがあります。例文とともに意味を確認しておきましょう。
「merciful」
慈悲深い、情けに富んだなどという意味です。“to”や“toward”を用いることで、“〜に対して”というように使うことが出来ます。例文としては、「She is merciful toward friends(彼女は友人に慈悲深い)」などがあります。
「charitable」
貧窮者などの、寄るところなないものに対して惜しみなく施す、同情心に厚いなどの意味で使われます。また、貧窮者でなくとも他人に対して寛容であったり、思いやりがあるという意味も含まれています。
こちらも、“to”や“toward”を用いて使われることが多いです。「He is charitable to all in need(彼は困窮者全員に対して慈悲深い)」という例文があります。
また、後ろに名詞を付けることで“慈善的な”というように使うことも出来ます。例えば、「charitable enterprises(慈善事業)」というように表現します。
「慈悲深い」人ってどんな人?
ここまで「慈悲深い」の意味や使い方について解説してきました。では実際に、「慈悲深い」と言われる人はどんな人なのでしょうか? いくつか特徴を整理しておきましょう。
周りをよく見ている
「慈悲深い」人になるためには、気遣いが大事であると先ほど説明しました。誰か困っている人がいないか、常に視野を広く持っている人は、周りを気にかけることが出来ます。そのためには、自分のことで精一杯になっていてはいけません。まずは自分に余裕を持つことから始めましょう。
人に平等に接することが出来る
世の中には、自分とは合わない人や苦手な人も少なからずいますよね。しかしそこで人を区別してはいけません。相手も同じ人間ですから、困っている時はお互い様。「慈悲深い」人になるためには、分け隔てなく人と接する寛容な人柄が大切です。
見返りは求めない
自分の利益ではなく、相手のことを思って行動できる人こそが「慈悲深い」人と言えます。見返りを求めて行動するのはやめましょう。
生き物を大切にする
人間だけでなく、全ての命あるものを大切にできる人は思いやりのある優しい人です。動物や植物に対しても情を持って接しましょう。「慈悲深い」人は生き物に限らず、身の回りのものも大切にするはずです。
相手の立場に立つことができる
なにか発言や行動をする前に、相手の人がどんな気持ちになるのか想像してみましょう。傷つけるような発言はしていないか、失礼にあたる行動をしていないか、相手の立場に立って考えることが大切です。そのように振る舞いを心がけていれば、自然と周りの人も同じように振る舞ってくれるでしょう。
最後に
「慈悲深い」は、思いやる気持ちの強い人を表す言葉でした。しかし「情けも過ぐれば仇となる」ということわざがあるように、どれだけの親切や好意でも、度が過ぎればかえって相手の迷惑になることもあります。「慈悲深い」のは良いことですが、深くなりすぎないように気をつけましょうね。
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