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「開いた口が塞がらない」の2つの意味
「開いた口が塞がらない」には、次のような2つの意味があります。
1. 呆れている様子
2. うっとりしている様子
正しく使用できるよう、それぞれの意味を確認していきましょう。
意味1. 呆れている様子
すっかり呆れて物も言えない様子は「開いた口が塞がらない」と言い表します。思いもよらない出来事に、呆れ返った場面に適した表現です。
そもそも「呆れる」には、あまりにも意外なことに驚いたり、唖然としたりなどの意味があります。言葉自体にネガティブなニュアンスはないものの、他者に対して使う際は注意が必要です。
場合によっては、相手の行動や様子を否定しているように受け取られる可能性があります。
「開いた口が塞がらない」とすると、呆れ返り、怒り驚いているという意味合いが強くなるため、使用時は相手に失礼のないように心がけましょう。

意味2. うっとりしている様子
「開いた口が塞がらない」には「物事にうっとりしている」という意味もあります。「呆れ返る」とは、まったく異なる表現です。
たとえば、我を忘れるほど何かに心惹かれた様子は「開いた口が塞がらないほど見入ってしまった」などと言い表せます。
現代社会では「開いた口が塞がらない」は「呆れ返った」という意味で使用するのが一般的です。そのため、相手を褒めるつもりで使っても、呆れていると誤解されてしまう可能性があります。
「開いた口が塞がらないほど素敵だった」と相手を褒めたい気持ちがあったとしても、「開いた口が塞がらない」は使用しない方が無難といえるかもしれません。
あい【開】 た 口(くち)が塞(ふさ)がらぬ
出典:小学館 精選版 日本国語大辞典
① あきれ返った状態。あきれてものも言えないさま。
② うっとりしている状態。我を忘れたさま。
「開いた口が塞がらない」の使い方と例文
「開いた口が塞がらない」は、呆れ返ったという意味で使用するのが一般的です。ここでは、呆れや怒り、驚きの気持ちが伝わる例文を紹介します。
・3日連続で遅刻するなんて。昨日はあれほど反省した様子だったのに、まったく開いた口が塞がらないよ
・え、〇〇さん退職されたのですか!? 指導担当の自分に今頃になって知らせが届くなんてどういうことだろう。開いた口が塞がらない…
・出張が決まったときから、新幹線のチケットだけは忘れないでと口を酸っぱくして言ってきたじゃないですか。忘れ物の常習犯とはいえ、本当に開いた口が塞がらない
・推しがまたSNSで炎上している。ここまで同じことを繰り返していると、さすがに開いた口が塞がらない
・冷蔵庫の奥から干からびたチーズが出てきた…。我ながら開いた口が塞がらない
「開いた口が塞がらない」の類語や言い換え表現
「開いた口が塞がらない」には、次のような類語や言い換え表現があります。
・呆れが礼に来る
・呆れて物も言えない
・二の句が継げない
・呆気に取られる
・棒立ちになる
それぞれの正しい意味と使用例を知り、表現の幅を広げていきましょう。

「呆れが礼に来る」
「呆れが礼に来る(あきれがれいにくる)」は、「開いた口が塞がらない」のように、呆れ返った様子を指します。
「あまりに呆れすぎて、まるで呆れのほうからお礼にくるよう。お釣りがくるほどだ」という心情を表すことわざです。「開いた口が塞がらない」に比べ、本当に呆れてどうしようもないという気持ちを強調できます。
・会議の途中にいびきをかいて居眠りとは。度胸がいいというか何なのか。呆れが礼に来るよ
・商談に遅刻したうえ、失礼な態度で先方を怒らせるなんて。呆れが礼に来るとはこのことだ
「呆れて物も言えない」
「呆れて物も言えない(あきれてものもいえない)」は、言葉が発せないほど呆れた様子を表します。「開いた口が塞がらない」とニュアンスの近い表現です。
目の前の状況に驚いたり、なぜこのようなことになったのかと残念に思ったりする気持ちを言い表せます。
・自分のミスをいつも助けてくれる同僚のせいにするなんて、呆れて物も言えない
・度重なる不祥事のニュースに、もはや非難する気持ちも起こらない。呆れて物も言えない気持ちだ
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「二の句が継げない」
「二の句が継げない(にのくがつげない)」も、驚いて言葉が出ない様子を指す表現です。「二の句」は次に言う言葉のことで、「二の句が継げない」とすると次に発するべき言葉を失った状態を表します。
・そんな大事な話をメールで済ませるなんて。驚きで二の句が継げない
・発売間近だった商品に欠陥が見つかったらしい。驚きで二の句が継げないとはこのことだ
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「呆気に取られる」
「呆気(あっけ)」とは、思いもよらないことに驚き呆れることです。「呆気に取られる」とすることで、どうしてよいかわからず、茫然とする様子を表します。
・普段は寡黙な彼が、上司の理不尽な対応に理路整然と抗議する姿を見て呆気に取られてしまった
・システムトラブルを短時間で解決した彼女の姿に、その場の誰もが呆気に取られた
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「棒立ちになる」
「棒立ちになる(ぼうだちになる)」とは、まるで棒のように立ち尽くすことです。思いもよらない事態に茫然とし、その場から動けない様子を表します。
・プロジェクトがすべて白紙になったと聞き、驚きのあまり棒立ちになった
・出張先へ向かう列車がすべて運休になってしまい、ただただ棒立ちになるしかなかった
呆れた様子は「開いた口が塞がらない」と表現しよう
「開いた口が塞がらない」を使うと、呆れ返った気持ちを表現できます。「うっとりしている」という意味も含まれますが、近年は驚いたり、呆れたりしたときに使うのが一般的です。
他者に対して使うときは、状況や関係性を見極めることが大切です。相手を非難するようなニュアンスも含まれるため、目上の人への使用はとくに気を付けましょう。
「呆れが礼に来る」や「呆れて物も言えない」など、その他の表現と上手に使い分けながら日常会話に取り入れてみてください。
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