「筋違い(すじちがい)」の意味とは
「筋違い」は、おもに人の道から外れた言動を指す言葉です。人として筋が通らない行いや、誤った発言などは「筋違い」に当たります。
また、「筋違い」には「見当違い」や「お門違い」といった意味も。これらは「筋違い」の類語といえますが、それぞれ異なる意味を有します。
他者に対して「筋違いだ」と伝える際は、その言動を注意したり、指摘したりといったニュアンスが強くなるといえるでしょう。ビジネスシーンでは失礼な印象を与えないよう、相手との関係性を考慮しながら使用したいところです。
すじ‐ちがい〔すぢちがひ〕【筋違い】
出典:小学館 デジタル大辞泉
[名・形動]
1 ある物に対して斜めの方向に位置すること。すじかい。「郵便局の筋違いに交番がある」
2 道理にはずれた言動をするさま。「筋違いな要求」
3 見当違い。おかど違い。「私に苦情を言うのは筋違いだ」
4 急激に無理な動きをして筋肉を痛めること。すじちがえ。

「筋違い」の使用例
「筋違い」という語句は、相手の言動が誤りだと感じるシーンに適しているといえます。他者の行いを否定する意味合いを含むため、適切な場面で使うことが大切です。
・「あなたが電話してこなければ、電車に乗り遅れなかったのに」「時間ギリギリに家を出ていながら、こちらのせいにするなんて筋違いじゃないの? 」
・残業になりそうだからと手伝っているのに、感謝されるならまだしも、やり方に文句を言われるなんてまったく筋違いだよ
・災害による電車遅延は致し方ありません。イライラするのはわかりますが、駅員に詰め寄るのは筋違いです
・筋違いだと思いつつ、現場のミスに対するクレームに、窓口担当として頭を下げた
「筋違い」と類語との違い
「筋違い」には、以下のような類語が挙げられます。
・見当違い
・お門違い
・場違い
それぞれ厳密な意味合いは異なるため、使用時は注意が必要です。ビジネスシーンで正しく使い分けられるよう、意味の違いを確認していきましょう。

「筋違い」と「見当違い」の違い
「見当違い」とは、判断や予測、または方角などを間違えることを指します。「見当」という言葉自体には、おおよその方向性や予測という意味があります。
「筋違い」と「見当違い」は、いずれも物事の判断や発言が誤っている状況で使われますが、「筋違い」は特に道理や筋道に反している行為を指すのに対し、「見当違い」にはそうした倫理的な側面は含まれないといえるでしょう。
単純に予測や推測が外れている場合には「見当違い」が適切ですが、行動や言動が道義的に逸脱している場合は「筋違い」と使い分けるとよいでしょう。
・まさか彼女がこれほど早く退職してしまうとは。見込みがあると思っていたが、私の見当違いだったようだ
・地図を確認していたはずが、たどり着いたのは、まったく見当違いの場所だった
けんとう‐ちがい〔ケンタウちがひ〕【見当違い】
出典:小学館 デジタル大辞泉
[名・形動]
1 推測や判断を誤ること。また、そのさま。「見当違いもはなはだしい」「見当違いな(の)返事をする」
2 方向を誤ること。また、そのさま。「見当違いな(の)方角」
「筋違い」と「お門違い」の違い
目的や推測を誤ることは「お門違い」と言い表します。「訪問すべき家を誤る」という意味ももつ言葉です。
「筋違い」と同様、「自分に問い合わせるのはお門違いだ」のように、他者の行動が誤っていることを指摘できます。
「見当違い」のように「道理に背く言動」という意味が含まれない点は注意しましょう。
・技術的なことを専門外の私に相談するなんて、お門違いだよ
・今回の責任を部外者のAさんに押し付けるのは、お門違いじゃないのかな
おかど‐ちがい〔‐ちがひ〕【▽御門違い】
出典:小学館 デジタル大辞泉
1 訪問すべき家をまちがえること。
2 目当てをまちがえること。見当ちがい。「その抗議はお門違いだ」
「筋違い」と「場違い」の違い
「場違い」とは、その場にふさわしくないことです。「筋違い」や「見当違い」、「お門違い」のような「言動を誤る」という意味は含まれていません。
「道理に背く行動」という意味もなく、おもに「場違いな雰囲気」、「場違いな恰好」といった言い回しで用いられます。
日常会話では、その場に適切でないと思われるさまを表す際に使用できるでしょう。
・今日のパーティーには各界の重鎮が集まり、自分には場違いな雰囲気に圧倒されてしまった
・来月は友人の結婚披露宴に出席する予定だ。場違いな格好にならないよう、装いに気を付けたい
「筋違い」のその他の類語
「筋違い」という言葉には、「見当違い」や「お門違い」以外にも、いくつか意味が似た表現が存在します。
・筋交い(すじかい)
・誤算(ごさん)
・頓珍漢(とんちんかん)
ここでは「筋違い」の意味をさらに掘り下げながら、それぞれの正しい意味と使用例をみていきましょう。

「筋交い(すじかい)」
斜めに交差していることやものは「筋交い」と言い表します。建築業界では、柱と柱の間に入れる斜めの補強材を指す言葉です。
「筋違い」にも、「斜めの方向」という意味があります。たとえば「道路の筋違いにある店」は、「道路の斜めの方向に位置する店」のことです。
「筋交い」も同様に、斜めを指す言葉として以下のように活用できます。
・いらなくなった雑誌をまとめ、紐で筋交いに縛っておいた
・道路を挟んだ筋交いに、新しいパン屋ができたらしい
「誤算(ごさん)」
「誤算」とは、推測や予想を誤ることです。「道理に背く」という意味はないものの、何かしらの誤りを指す点は「筋違い」と共通しています。
また「誤算」は計算間違いも意味します。先の予測や正確な計算が必要とされるビジネスシーンにおいて、使用機会が多い言葉といえるでしょう。
・ここまで新商品の売れ行きが不調だなんて…。当初の売上予想はまったくの誤算だった
「頓珍漢(とんちんかん)」
「頓珍漢」とは、文脈にそぐわない発言や行動を指します。鍛冶屋で職人2人が向かい合い、槌(つち)を交互に打つ音が、そろわない様子に由来している言葉です。
「筋違い」と異なるのは、間の抜けた言動や人も表す点です。他者を褒めるようなポジティブな語句ではないため、失礼に当たらないよう、使用時は気を付けてください。
・今日こそ話し合いをまとめたいが、頓珍漢な返答ばかりでまるで先に進まない
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「筋違い」と類語を上手に使い分けよう
「筋違い」という語句は、道理に背く言動に対して用いられます。類語である「見当違い」は、判断や方向を誤ることです。「お門違い」とした場合は、訪問すべき家を誤るという意味も含まれます。
さらに、筋違いの他にも、「筋交い」や「誤算」など関連する言葉があります。ビジネスシーンではそれぞれを上手に使い分け、状況や考えを他者に伝えましょう。
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