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「過ぎたるは猶及ばざるが如し」の意味と読み方とは?
年長者の方が「過ぎたるは猶及ばざるが如し」というのを聞くと、「なんとなく意味はわかるけど、正確な意味はどういうものだろう?」と気になりませんか? この言葉、実は『論語』の教えの一つなのです。
本記事では、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」の正確な意味や由来、英語表現まで紹介します。ぜひ、日常生活やビジネスシーンでも活用できるよう、身につけてみてくださいね。
読み方と意味
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」は、「すぎたるは なお およばざるが ごとし」と読みます。「何事においても、やり過ぎることはやり足らないことと同じように、よくない」という意味です。つまり、不十分なのも困るけれど、過剰なのもよくない。物事はやり過ぎるよりも控えめがいいということですね。
誤った解釈に注意
「過ぎたるは」を捉えて、「過ぎたことをいっても仕方がない」という意味だと解釈されている方もいらっしゃるかもしれませんが、それは誤りです。ここでいう、「過ぎたるは」は時間の経過ではなく、「程度」のことを表しています。間違えないよう、注意してくださいね。
由来は?
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」の由来は、『論語―先進』です。
孔子の高弟である子貢が、孔子に尋ねました。「2人の門人、子張(師)と子夏(商)とを比較して、どちらが優れているか…?」と。それに対して、孔子は「子張(師)は行き過ぎているが、子夏は行き足りない」とこたえました。子貢が「それならば、子張の方が優れているのですか?」と尋ねたところ、孔子は「過ぎたるは猶及ばざるが如し」とこたえ、“中庸”の大切さを述べ、程度の甚だしいことを諫めたと言います。
原文は以下の通りです。
子貢問、師与商也孰賢。子曰、師也過。商也不及。曰、然則師愈与。子曰、過猶不及
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」は、「過猶不及」の書き下し文となります。
なお、この言葉は、徳川家康の遺訓の一つにもなっていますよ。
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」の正しい使い方を例文でチェック
ここでは、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」の使い方を具体的な例文を交えながら紹介します。
1:全力でプロジェクト成功のために邁進していたけれど、途中で倒れてしまった…。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」とは、このことかもしれない。
この例文の場合、「過剰なのはよくない」ことを表しています。熱心なのはいいことですが、過剰にならないよう、気をつけたいですね。
2:原稿を書き直していくうちに、テーマがブレてしまった…。過ぎたるは猶及ばざるが如しという言葉があるけれど、ほどほどのところでストップしておけばよかったのかもしれない。
推敲を重ねるのはいいことですが、やり過ぎてしまうと、本来言いたかったことがボヤけてしまうこともあります。偏りがなく調和が取れている“中庸”というのは、難しいものですね。
3:過ぎたるは猶及ばざるが如しというけれど、“忙しいから”といって仕事をおざなりにしてはいけないよ。
やり過ぎもよくありませんが、いい加減な仕事もよくありません。現代人はとかく忙しいものですが、いい加減な仕事はしたくないものですね。
類語や言い換え表現は?
続いて、類語を紹介します。一見難しい言葉も多いですが、覚えておくと教養が一段と深くなると思いますよ。
1:念の過ぐるは無念(ねんのすぐるはむねん)
この言葉の意味は、「あまり考え過ぎると、かえって考えの足りない不完全なものとなる」です。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」と同様に、やり過ぎはよくないということですね。
2:分別過ぐれば愚に返る(ふんべつすぐればぐにかえる)
この言葉の意味は、「あまりに考え過ぎると、判断を誤る」です。「分別」とは、仏教用語で物事の道理をわきまえること。「愚」とは対極にある「分別」ですが、やり過ぎると「愚」になってしまうということを表しています。
3:彩ずる仏の鼻をそぐ(さいずるほとけのはなをそぐ)
この言葉の意味は、「念を入れすぎた結果、かえって肝心の部分が壊れてしまう」という例えです。「彩ずる」とは、紙などでぬぐって色をつけ、綺麗にすることを表しています。
この言葉は、「彩ずる仏の鼻を欠く(かく)」ともいいますよ。
英語表現をすると?
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」を英語で表現する時には、以下の2つが挙げられます。
1:Too much is as bad as too little.
直訳すると、「多過ぎるのは、少な過ぎるのと同じくらいよくない」となります。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」を表すときに使われるフレーズです。
2:Less is more.
直訳すると、「シンプルなのが効果的」ということです。「あれこれとやり過ぎるよりも控えめがいい」ということを表している言葉ですね。
最後に
「過ぎたるは猶及ばざるが如し」は、物事はやり過ぎるよりも控えめがいいという意味でした。「過ぎたことをいっても仕方がない」という意味で誤解していた方も、もしかしたら多いかもしれませんね。ぜひ、この機会に正しい意味を頭の片隅にでも置いておくといいでしょう。
この言葉は孔子の『論語』が由来であることも覚えておくと、話にちょっとした花が咲くかもしれません。ぜひ、活用してくださいね。
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