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「一寸(いっすん)」の意味とは?
「一寸(いっすん)」には、2つの意味があります。
ひとつは、尺貫法の長さの単位のことです。尺貫法は日本古来の単位で、現在も不動産や建築業界で用いられています。
もうひとつは、わずかな時間や距離、量などのことです。たとえば、わずかな隙もないことは「一寸の隙もない」と言い表します。
いっ‐すん【一寸】
出典:小学館 デジタル大辞泉
1 尺貫法の長さの単位。→寸
2 わずかな時間・距離・量、また小さい物事のたとえ。「—のひまも惜しむ」「—のすきもない構え」
「一寸」の長さは約3cm
「一寸」の長さは、約3cmです。古くから、日本で使われていた尺貫法では長さや重さ、広さなどの単位を以下のように定めていました。
- ・長さ 1尺(しゃく)=30.303cm
- ・質量 1貫(かん)=3.75kg
- ・体積 1升(しょう)=1.8039L
- ・面積 1坪(つぼ)=3.3058㎡
「一寸」は「尺」の次に短い単位です。さらに短いものには「分(ぶ)」、「尺」より長いものには「間(けん)」、「町(ちょう)」などがあります。
- ・1里(り)=3.9273km
- ・1町(ちょう)=109.09m
- ・1間(けん)=1.8182m
- ・1尺(しゃく)=30.303cm
- ・1寸(すん)=3.0303cm
- ・1分(ぶ)=3.0303mm
尺貫法は、明治期以降「メートル法」と併用されていました。メートル法とは「m(メートル)」や「g(グラム)」など、現代の私たちの生活に身近な単位のことです。
昭和34年(1959)尺貫法は原則廃止され、さらに昭和41年(1966)以後、日本の単位はメートル法に統一されました。

ただし、不動産や建築業界では、現在も「尺」や「寸」、「坪」などの単位を用いるのが一般的といえます。土地や部屋の広さを表す「坪」は、とくに聞きなじみのある単位かもしれません。
また、着物の仕立てにおいても、基本的に「寸」や「尺」などの尺貫法が用いられます。
上記にあるように、「寸」は「尺」の10分の1と、とくに短いものを指す単位です。このことからも、「一寸」がわずかなものや小さな物事のたとえに適していることがわかるでしょう。
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「一寸」の別の読み方は「ちょっと」
「一寸」という漢字は、「いっすん」のほかに「ちょっと」という読み方があります。
「一寸(ちょっと)」も、わずかな時間や物を表す言葉です。「ちょっとそこまで行ってくる」のように、行動における軽い気持ちも表します。
一方で、「ちょっと名の知れた人物」のように、ある業界において「かなりのもの」である様子も意味します。
さらに「ちょっと答えられない」、「ちょっとわからない」など、判断が難しいときにも使用できる言葉です。
ただし「一寸(ちょっと)」には「一寸(いっすん)」のような単位の意味は含まれません。日常会話で誤用しないよう、それぞれの違いを正しく押さえておきましょう。

「一寸」の類語は「寸分(すんぶん)」
「寸分(すんぶん)」とは、「一寸」や「一分」のような短い長さのことです。また「一寸」のように、わずかな量や物事も表します。
また、「寸分」は打消しの語を伴って使うのが一般的です。打消しの語は「ない」や「ぬ」、「まい」などのことで、前の語句に続けることで否定を表現します。
・彼の計算は、いつも寸分たがわぬ正確さだ
・測定業務には、寸分の狂いもない精度の高さが要求される
「一寸」を使った慣用句やことわざ
わずかなことを表す「一寸」には、以下のような慣用句やことわざがあります。
・一寸先は闇
・一寸の虫にも五分の魂
・一寸の光陰軽んずべからず
気持ちや状況を端的に言い表したいときは、これらを使用してみてください。活用例を参考に、それぞれの正しい意味も確認していきましょう。

「一寸先は闇」
「一寸先は闇(いっすんさきはやみ)」とは、ほんの少しの未来もまったく想像できないことです。「一寸先」とすることで、ほんのわずか先のことを表しています。
日常会話では、予想できなかった不幸や悪いことに対して用いるのが一般的です。
ビジネスで思いもよらない事態に遭遇したときや、トラブルに巻き込まれた際など、以下のように使用できます。
・ようやく契約を取り付けたと思ったら、製品の販売自体がストップしてしまうなんて…。一寸先は闇とは、まさにこのことですね
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「一寸の虫にも五分の魂」
「一寸の虫にも五分の魂(いっすんのむしにもごぶのたましい)」とは、どんなに弱く小さなものにも、それ相応の意地や考えがあることのたとえです。
小さな一寸足らずの虫も、その半分にあたる「五分」の魂をもっているのだから、決してばかにしてはいけないという意味が込められています。
会話では対象人物を「一寸の虫」という弱い立場に置くことになるため、シーンや相手に配慮しながら使用してください。
・一寸の虫にも五分の魂。自分より格上の選手が相手だとしても、絶対に諦めはしない
・彼が自分よりずいぶん年下で経験不足だからといって、その実力を軽んじてはいけませんよ。一寸の虫にも五分の魂というでしょう
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「一寸の光陰軽んずべからず」
「一寸の光陰軽んずべからず(いっすんのこういんかろんずべからず)」は、時間の無駄遣いを戒めることわざです。
「光」は昼間、「陰」は夜のことで「軽んずべからず」と続けることで、それぞれのわずかな時間も無駄にしてはいけないと言い表しています。
・一寸の光陰軽んずべからずというし、今年は1日1日を大切に過ごしていきたい
・先輩から「一寸の光陰軽んずべからずだよ」と言われて以来、移動時間にビジネス書を読むようになりました
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読み方に気を付けながら「一寸」を使ってみよう
「一寸」という漢字は、読み方で意味が異なります。「いっすん」という読み方は、意味に長さの単位が含まれることが特徴です。
また「一寸(いっすん)」という語句は、「一寸先は闇」のような慣用句やことわざとして使用できます。
「ちょっと」という読み方があることもふまえつつ、「一寸」という語句を日常会話に取り入れていきましょう。
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