試行錯誤とは? 意味や使い方をチェック
試行錯誤(しこうさくご)とは、種々の方法を繰り返し試み、失敗を重ねながら解決方法を追求することです。解決方法を追求する際には思考を必要としますが、「思考」ではなく、試し実行する「試行」と表記します。
試行錯誤は心理学用語を由来とする言葉
試行錯誤は、心理学用語が由来となった言葉といわれています。
人を含め、一般的に動物は、今までに経験したことがない状況に直面すると、失敗を繰り返しながら解決方法を見付けるといった学習様式を見せることがあります。このような学習様式を「試行錯誤(trial and error)」といい、状況打破の一行動として名付けられました。
しこう‐さくご〔シカウ‐〕【試行錯誤】
出典:小学館 デジタル大辞泉
種々の方法を繰り返し試みて失敗を重ねながら解決方法を追求すること。「—を重ねる」
試行錯誤の使い方を例文で紹介
試行錯誤は日常会話からビジネス、改まった場での挨拶など、さまざまなシーンで使われる言葉です。例文から、使い方を見ていきましょう。
- 試行錯誤の結果、初めに提案されたプランで進めていきたいと思う
- どうすれば効率よく販売経路を巡回できるのか、地図を見ながら試行錯誤を重ねた
- 彼の配属先を試行錯誤し、才能を活かせるような部署への配属が決まった
試行錯誤の言い換えに使える表現
試行錯誤と同様に、なんらかの目的を達成するために思考や行動を繰り返す意味を持つ言葉は多くあります。たとえば次の表現は、試行錯誤の言い換えに使用できるケースもあるでしょう。
- 悪戦苦闘
- 暗中模索
- 手探り
- 四苦八苦
- 再三再四
- 返す返す
いずれも試行錯誤と似通った意味を持ちますが、ニュアンスや使用に適したシチュエーションが異なる点に注意が必要です。例文を通して、意味やニュアンスの違いを紹介します。

悪戦苦闘
悪戦苦闘(あくせんくとう)とは、強敵に対して非常に苦しい戦いをすることや、困難な状況の中で苦しみながら努力することです。困難な局面にぶつかっているのは試行錯誤と似ていますが、「戦い」や「闘い」といった文字を使っていることからも、並大抵の困難ではないときに適した表現といえます。
- このプロジェクトは注目度が低いのか、少ない予算と人力で悪戦苦闘した
- 悪戦苦闘の末、ようやく対応が終わったようです
- メンバー全員が悪戦苦闘する中、彼女だけはどこ吹く風と、努力する素振りも見せなかった
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暗中模索
暗中模索(あんちゅうもさく)とは、暗闇の中で、手探りしてあれこれ探し求めることです。
- 洞窟の中に宝があるらしい。懐中電灯を頼りに、暗中模索した
- 落とした財布を暗中模索したが見つからない
- お化け屋敷の中は暗闇だから、出口を求めて暗中模索した
また、暗中模索は手がかりのないまま、いろいろなことを試みることの意味でも使われます。試行錯誤は手がかりの有無は問いませんが、暗中模索は手がかりがないため、解決策を見付けるのに時間と手間がかかったニュアンスを表現できます。
- わたしたちの部署の売上は昨年以来、右肩下がりだ。打開策を暗中模索した
- 指導教授には声質が役に合わないといわれたが、長年の夢だった役を演じるためにも暗中模索して自分のものにしたい
- どうしたら彼女が心を開いてくれるのかわからないが、暗中模索すればいつかは良好な関係を築けるだろう
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手探り
手探りとは、見えない所にあるものを手先の感触で探り求めることです。暗中模索と似ていますが、暗中模索は暗くて見えない状態の中で探すのを指すのに対し、手探りは暗さ以外の理由で見えない可能性もある点が異なるといえます。
- 手探りでスイッチを探した
- 家具の後ろに写真立てを落とした。家具を移動させるのは面倒なため、手探りで探そうと思う
- カバンの中を手探りしたが、スマートフォンは見付からなかった
手探りは、 確実な方法がわからないまま、あれこれ模索することにも使われます。この場合は、暗中模索や試行錯誤と同じく、実際に手探りをするのではなく行動や思考を繰り返すことを意味します。
- ノウハウもコネクションもない中、手探りで新規事業に着手した
- まだプロジェクトの方針が定まらずに手探りしている状態です
- 手探りしてでもチャレンジを続けていけば、いつかは問題を打破できると思っています

四苦八苦
四苦八苦(しくはっく)とは、非常に苦労することや苦悩することを指します。
- 製品に欠陥があることがわかり、対応に追われて四苦八苦している
- ここまで来るのは決して楽ではなかっただろう。四苦八苦する様子を見ていたので、他人事とは思えない
- 彼女は言い訳に四苦八苦していた
四苦八苦は仏教用語由来の言葉といわれています。四苦とは生・老・病・死のことで、さらに愛別離苦(あいべつりく)と怨憎会苦(おんぞうえく)、求不得苦(ぐふとくく)、五陰盛苦(ごおんじょうく)を加えて八苦と呼ばれます。
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再三再四
再三再四(さいさんさいし)とは、繰り返し何度もという意味の言葉です。再三だけでも繰り返しという意味がありますが、さらに再四を付け加えることで、繰り返される様子を強調しています。
- 再三再四失敗しているが、懲りずにチャレンジしている
- 再三再四来ていただいても、わたしの気持ちは変わりません
- 同僚は再三再四「転職したい」というが、実際に転職活動している様子は見てとれない
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返す返す
返す返す(かえすがえす)とは、ある動作を繰り返す様子です。再三再四と同じく繰り返しを意味する言葉のため、試行錯誤のように解決方法を見付けるといったニュアンスはありません。
- 後任の後輩に営業の極意を返す返す説明した
- 間違いがないか、返す返す確認する
- 返す返す伝えておきたいが、わたしに遠慮せずに好きなことをしてほしい
状況に応じた適切な言葉を使おう
試行錯誤は解決方法を見付けるために、さまざまな挑戦をするときに使う言葉です。状況によっては暗中模索や悪戦苦闘といった言葉で置き換えたり、単に繰り返すときは再三再四や返す返すを使ったりしてみましょう。
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