「悪戦苦闘」の意味をあらためてチェック
「悪戦苦闘」は、よく知られている四字熟語ですよね。会話などで使ったことがある人は多いでしょう。「苦しい思いをしながら努力する」の意味でこの言葉を用いることがあると思いますが、実はもう1つ意味があるのを知っていますか? 本記事では「悪戦苦闘」の意味や使い方などを一緒に見ていきましょう。
意味は2つ
【悪戦苦闘】
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
読み方:あくせんくとう
[名](スル)
1:強敵に対して非常に苦しい戦いをすること。
2:困難な状況の中で、苦しみながら努力すること。「少ない予算で—する」
「悪戦」は、不利な苦しい戦いのこと。「苦闘」は、苦しみに耐えながら戦うことを意味します。一般的によく使うのは「2」の方でしょう。自分にとって不利な状況の中で、懸命に努力することを表現する際に用いられています。
「1」は、手強い相手に打ち勝とうと必死で戦うことを表す際に使われます。ドラマや映画などで、強敵相手に主人公が必死に戦うシーンは「悪戦苦闘」のイメージそのものと言えるでしょう。
「悪戦苦闘」の使い方
「悪戦苦闘」の使い方を見ていきましょう。この言葉を使う場面や使い方の特徴を紹介します。
どんな場面で使う?
「悪戦苦闘」は、不利な状況にある時や、戦いが苦しい時に用います。懸命に努力をするけれど、なかなか上手く行かないさまを表現するのに適していると言えるでしょう。日常生活はもちろん、ビジネスシーンなど、さまざまな場面で使える言葉です。
使い方の特徴
「悪戦苦闘」は、以下の言い回しで使うことが多いです。
・悪戦苦闘する
・悪戦苦闘の連続
・悪戦苦闘が続く
・悪戦苦闘しながら
・悪戦苦闘しつつも
これらの言い回しを覚えておくと、スムーズに「悪戦苦闘」を使うことができるでしょう。
例文を紹介
「悪戦苦闘」の具体的な使い方を見ていきましょう。
《例文》
・新プロジェクトはトラブルが多く、悪戦苦闘の毎日だが、ようやく軌道に乗りはじめた
・できれば避けたいと思っていた営業職に配属され、悪戦苦闘の連続です
・ハイレベルの対戦相手に悪戦苦闘が続いたが、奇跡的に勝つことができた
・新人教育は難しいことが多く、悪戦苦闘しながら取り組んでいます
・強豪相手に悪戦苦闘しつつも、なんとか案件獲得を実現させようとしている
「苦しみつつ努力をする」「強敵相手に苦労する」を意味する例文を紹介しました。使い方のイメージはつかめたでしょうか?
会話で使う場合
会話で「悪戦苦闘」を使うパターンも見ていきましょう。オフィスでAさんとBさんが企画について話しています。
A「企画書の期限、明日だけど進んでる?」
B「まったく進んでいない。何も思い浮かばなくて完全にストップしてる」
A「そうだろうね。Bがめずらしく悪戦苦闘しているなと思ってた」
B「部長の出した条件をクリアするのが大変すぎるよ」
A「もしよかったら私も手伝おうか? 後輩のCさんにも頼んで、アイデア出しをしよう」
B「それは助かる!」
A「Bは大事な同期だからね、当たり前だよ」
企画書をつくるって、大変ですよね。アイデアが出ないと悶々とするでしょう。そんな時、サポートしてくれる仲間がいるとうれしいですね。AさんとBさんがお互いに信頼し合っていることがわかります。
「悪戦苦闘」に似た言葉
「悪戦苦闘」に似た言葉を紹介します。言い換えの表現として把握しておくのもいいですね。それぞれの意味をチェックしてください。
「四苦八苦」
「四苦八苦」は、とても苦労することや、苦悩することを指します。
「四苦八苦」が表すのは、人間のあらゆる苦しみ。「四苦」は生・老・病・死を指し、それに愛別離苦(あいべつりく:愛するものと別れる苦しみ)・怨憎会苦(おんぞうえく:恨み憎む相手に会う苦しみ)・求不得苦(ぐふとっく:欲望が満たされない苦しみ)・五陰盛苦(ごおんじょうく:心身の苦悩)を加えたのが「八苦」とされています。
「四苦八苦しながら」「四苦八苦する」のように使うことが多く、「悪戦苦闘」の言い換え表現になると言えるでしょう。
《例文》四苦八苦しながらも諦めることなく継続し、ようやく成功をつかんだ
「苦心惨憺」
非常に苦心していろいろやってみることを示す「苦心惨憺」。「くしんさんたん」と読みます。「苦心」は、物事を成し遂げようといろいろ試みたり考えたりして苦労することの意。「惨憺」は、心をくだき思い悩むさまを表します。「苦心惨憺たる〜」「苦心惨憺する」のように使うことが多いでしょう。
《例文》会社の再建に苦心惨憺しているが、諦めるわけにいかない
「苦慮」
苦心して、いろいろと考えることや、思い悩むことを意味する「苦慮」。「くりょ」と読み、「苦慮する」「苦慮している」の言い回しで使います。
《例文》商品認知度がなかなか上がらず、対応に苦慮している
「悪戦苦闘」の対義語
「悪戦苦闘」の対義語もチェックしましょう。紹介するのは「余裕綽々」「朝飯前」「楽勝」です。
「余裕綽綽」
ゆっくりと焦らないさまや、落ち着きはらったさまを意味する「余裕綽綽」。「よゆうしゃくしゃく」と読みます。「余裕しゃくしゃく」と表記することが多いかもしれません。「苦労する」という意味合いがない言葉のため、「悪戦苦闘」の対義語にあたると言えるでしょう。
《例文》初めてのプレゼンにもかかわらず、彼女は余裕綽々としている
「朝飯前」
朝食をとる前のわずかな時間でできるような、たやすいことを表すのが「朝飯前」。「あさめしまえ」と読み、「それくらいは朝飯前だ」のように使います。
《例文》それぐらいは朝飯前だよ。安心して私に任せて。
「楽勝」
「楽勝」とは、楽に勝つことや、たやすく行えることを表す言葉。「らくしょう」と読みます。「楽勝する」「〜なんて楽勝だ」のように使うことが多いでしょう。
《例文》ファシリテーターなんて楽勝だと思っていたけれど、甘い考えだったと反省している
最後に
「悪戦苦闘」について、意味や使い方、似た言葉や対義語を紹介しました。会話でもよく使う「悪戦苦闘」は、苦しみながらも懸命に努力するさまや、強敵相手に苦しい戦いをすることを意味する言葉です。さまざまな場面で使うことができるため、使い勝手のいい言葉と言えるかもしれません。それだけに、正しい意味や使い方を把握しておきたいですね。
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