物事を進めるとき、慎重に時間をかけるべきか、素早く対応するべきか迷うことがあるかもしれません。「巧遅拙速」という言葉は、そのような場面での判断に関係する表現の一つです。特に仕事や日常生活では、状況に応じてどちらを優先するべきかを考えることが求められるでしょう。「巧遅拙速」という言葉の意味や活用方法について見ていきます。
「巧遅拙速」とは? 意味や使い方をわかりやすく解説
まずは「巧遅拙速」の読み方と意味から確認していきましょう。
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「巧遅拙速」の読み方と意味
「巧遅拙速」は「こうちせっそく」と読みます。「巧遅拙速」は、「巧遅は拙速に如かず」の略です。辞書で意味を確認しましょう。
巧遅(こうち)は拙速(せっそく)に如(し)かず
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
《「文章軌範」有字集小序から》仕事の出来がよくて遅いよりは、出来はわるくとも速いほうがよい。
「巧遅拙速」は、「巧みに仕上げようとしてぐずぐずするよりは、不完全でも速いほうがいい」という意味です。
この言葉は、中国、宋代の散文選集『文章軌範(ぶんしょうきはん)』に由来します。
ちなみに、日本が誇る自動車メーカーであるトヨタグループでは、「巧遅より拙速」といわれ、現場で大切にされている言葉の一つであるそうです。
「巧遅拙速」の類語や対義語は?
「巧遅拙速」には、似た意味を持つ言葉や、逆の意味を表す言葉がいくつかあります。これらを知ることで、状況に応じた言葉を選びやすくなるでしょう。それぞれの言葉が持つニュアンスの違いを見ていきます。
類語:兵は神速を貴ぶ(へいはしんそくをたっとぶ)
「兵は神速を貴ぶ」は、戦いにおいては迅速に行動することが最も重要であるという考えを示した言葉です。遅れれば敵に備えられ、戦況が不利になるため、素早い決断と行動が求められるという教えを含んでいます。
「巧遅拙速」も時間をかけて完璧を目指すより素早く実行することの大切さを伝えている点で、この言葉と通じるものがあるでしょう。
特に、ビジネスやスポーツの世界では、早い対応が結果を左右する場面が多いため、実践的な考え方として使われることがあります。
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対義語:急がば回れ
「急がば回れ」は、早く目的を達成しようと焦るより、確実な方法を選んで進むことが、結果的に成功への近道になるという考えを表しています。「巧遅拙速」がスピードを重視するのに対し、「急がば回れ」は慎重に進むことの重要性を強調しています。
例えば仕事の場面では、準備をしっかり整えてから動いたほうがトラブルを防ぎ、結果的に効率がよくなることもあるでしょう。
どちらの考え方が適しているかは、その時の状況によるかもしれませんね。
「巧遅拙速」の使い方と例文
「巧遅拙速」という言葉は、さまざまな場面で使われます。具体的な活用例を通して、どのような状況で用いられるか見てみましょう。
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「彼の企画は素晴らしいが、完成が遅すぎた。まさに巧遅拙速だね」
ビジネスでは、どれほどいいアイデアでも、実行のタイミングを逃してしまうと評価されにくいことがあります。この例では、そのような状況を指しています。
「多少荒削りでも、まずは形にすることが大事だ。巧遅拙速の考え方が求められるね」
計画やプロジェクトでは、最初の段階で完璧を目指すよりも、進めながら修正していく方が効率的な場合もあるでしょう。この例では、そのような考え方が表れています。
最後に
「巧遅拙速」という言葉は、スピードと完成度のどちらを優先すべきかを考えるときに役立つ表現です。状況に応じて適切な判断をすることが求められる場面も多いでしょう。この言葉を知ることで、より柔軟な考え方ができるかもしれません。
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