「百舌勘定(もずかんじょう)」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか? 普段の会話ではあまり使われることがないものの、その背景を知ると、興味深い意味が込められていることがわかります。
この表現が生まれた由来や、どのような場面で使われるのかを理解することで、日本語の奥深さを改めて感じることができるかもしれません。本記事では、「百舌勘定」の意味や歴史、使い方について掘り下げていきます。
「百舌勘定」とは? 意味や由来をわかりやすく解説
「百舌勘定」という言葉がどのような意味を持つのかを見ていきましょう。この表現の背景には、日本語独特の発想が関係しているようです。
「百舌勘定」の意味とは?
「百舌勘定(もずかんじょう)」という言葉には、ちょっとした昔話が由来しているようです。辞書の定義を見てみると、その意味がより明確になります。
もず‐かんじょう〔‐カンヂヤウ〕【百=舌勘定】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
《鳩・鴫(しぎ)・百舌が15文の買い食いをして勘定をするとき、百舌は、鳩に8文、鴫に7文出させて、自分は1文も出さなかったという昔話から》勘定のとき、自分は金を出さないで他人にばかり出させようとすること。
この言葉は、支払いの場面で自分の負担を避けようとする態度を表しています。例えば、グループで食事をした際に、他の人に支払いを押し付けるような行動が「百舌勘定」に当たるでしょう。
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「百舌勘定」の由来と歴史的背景
「百舌勘定」という言葉は、昔話に由来しているとされています。その背景を知ることで、この表現の持つ意味がより明確になるでしょう。以下に紹介します。
ある日、モズ、鳩、シギの三羽が集まり、15文の食べ物を買いました。勘定をする際、モズは「鳩は八文(はちもん)、シギは七文(しちもん)」と言い、それぞれに支払わせましたが、自分は一文も出しませんでした。
この話から転じて、「百舌勘定」とは、支払いの場面で自分の負担を避け、他の人にばかりお金を出させることを指すようになりました。
この昔話は、人間関係や金銭のやり取りにおいて、負担の不公平さが生じることを戒める教訓として語り継がれてきたのかもしれません。現在でも、誰かが勘定の場面で責任を回避しようとするとき、「百舌勘定」という言葉が使われることがあります。
「百舌勘定」の使い方と具体的な例文
言葉の意味を知るだけでは、適切な場面で使うのは難しいかもしれません。「百舌勘定」という言葉がどのような状況で使われるのか、具体的な例文を通じて考えてみましょう。実際の会話の中での使い方を知ることで、ニュアンスをより明確にすることができます。
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友人たちと食事に行ったが、会計の際に彼は「小銭がない」と言いながら財布を出さず、結局みんなが払うことに…。まさに百舌勘定のような状況だった。
この場面では、食事代を払う場面であるにもかかわらず、一人だけ何かと理由をつけてお金を出さない状況が描かれています。こうした場面で「百舌勘定のようだ」と表現すると、的確な使い方となるでしょう。
旅行の計画を立てていたが、兄は「お金が厳しい」と言って、一円も出そうとしなかった。母が「いつも百舌勘定ね」と苦笑していた。
この例では、兄が旅行の費用を負担しない状況が描かれています。家族の中であっても、誰かがいつも支払いを他の人に押し付けていると、「百舌勘定」と言われることがあります。母親が苦笑していることから、非難するというよりも、半ばあきらめつつ冗談めかして使われていることが伝わりますね。
会社の飲み会で、「先輩が多めに出すから」と言われた後輩が、それをいいことに一円も払わなかった。先輩たちは「百舌勘定みたいだな」と呆れていた。
会社の飲み会では、上司や先輩が多めに支払うことがよくありますが、それを当然のように受け取る態度が「百舌勘定」に当たるかもしれません。
「百舌勘定」に関連する言葉や類語
「百舌勘定」に近い意味を持つ表現を知ることで、場面に応じた言葉の使い分けがしやすくなるでしょう。
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人の金をあてにする
「人の金をあてにする」とは、自分のお金を使わず、他人の金銭的支援を当然のように期待することを指します。この表現は、「百舌勘定」と似ていますが、より広い意味で使われることが多いです。
例えば、誰かが頻繁に他人が奢ってくれることを期待したり、経済的に自立しているにもかかわらず、親や知人の援助に頼り続けるような状況で使われることがあります。
「百舌勘定」が特に会計時の負担の押し付けを指すのに対し、「人の金をあてにする」は、長期的な依存や日常的な振る舞いにも使われる点が特徴的です。
「百舌勘定」の類語として、金銭に対する姿勢を表す際には「人の金をあてにする」の表現も適切に活用できるでしょう。
最後に
「百舌勘定」という言葉には、日本語特有の感覚が反映されているようです。意味を理解し、由来を知ることで、言葉の持つ背景がより深く見えてきますね。日常の会話では使う機会が限られるかもしれませんが、日本語の豊かさを感じるひとつの例として、知っておくと興味深い表現ではないでしょうか。
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