眉唾物(まゆつばもの)とは?
「眉唾物(まゆつばもの)」は、真実かどうか疑わしい話に対して、「この話は眉唾物だ」といった形で使います。それでは、こうした事柄に「眉唾物」という言葉が使われるのはなぜでしょうか。
ここでは、眉唾物という言葉について解説。また、言葉の由来については江戸時代までさかのぼって説明するため、ぜひ参考にしてください。
「眉唾物」の意味
この言葉は、だまされる心配のあるものや話を表します。真偽の確かでなく、信用できないものを指して使われる言葉です。
近年は、SNSの普及によって、誰もが自由に情報を発信できる時代になりました。欲しい情報がすぐ手に入る反面、膨大な情報があることによって、情報を受け取る側にもリテラシーが求められます。
真偽の定かではない、眉唾物な話は鵜呑みにせず、慎重に正確に判断したいところです。
まゆつば‐もの
出典:小学館 デジタル大辞泉
だまされる心配のあるもの。真偽の確かでないもの。信用できないもの。「その情報は—だ」
「眉唾物」の由来
言葉の語源は諸説ありますが、「眉唾物」を略した「眉唾」の解説には以下のように書かれています。
まゆ‐つば
出典:小学館 デジタル大辞泉
《眉に唾 (つば) をつければ狐 (きつね) などに化かされないという言い伝えから》
(中略)
この言葉はその昔、人がキツネやタヌキにだまされないように行った対策に由来するとされています。古くから、キツネやタヌキは人をだます動物とされていたのです。「眉毛に唾を付けておけば、キツネやタヌキにだまされない」という迷信・俗信が広まり、現在の言葉になったとされています。
眉に唾を付けるとキツネにだまされない理由には、諸説あります。昔は唾に魔除けの効果があると考えられていたという見方や、キツネは相手の眉毛の数を数えることで人を化かしていたという見方などがあげられます。このことから、疑わしいことに対して「眉唾物」が用いられるようになったようです。
「眉唾物」の言い換え表現6つ
眉唾物のように、真偽が定かではない事柄に対して用いられる言葉は、他にも複数あります。たとえば荒唐無稽や胡散臭い、絵空事、首を捻る、懐疑的、疑わしいなどです。
ここでは、眉唾物の言い換え表現について6つの語句を解説します。
眉唾物と合わせて6つの語句も覚え、ボキャブラリーの向上に役立ててみてください。
1. 荒唐無稽
「荒唐無稽(こうとうむけい)」は、「荒唐」と「無稽」を組み合わせた四字熟語です。いずれも「発言に根拠がないこと」「内容がでたらめであること」という意味をもちます。
2つの熟語を合わせて「根拠がなくでたらめな話であること」という意味で使われるようになりました。また、あまりにも根拠に欠けていることから「現実味がない」というニュアンスが含まれるケースもあります。
日常的に用いられる言葉とはいえませんが、眉唾物と似た意味で用いられるでしょう。
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2. 胡散臭い
「胡散臭い(うさんくさい)」という言葉も、眉唾物の言い換え表現の一つです。眉唾物や荒唐無稽などと比較すると、日常的に使われている言葉といえるかもしれません。
「胡散」とは怪しいこと、不審なさま、疑わしいといった意味が含まれる言葉です。
語句の意味を正確に把握する際にポイントとなるのは、はっきりと断定はできないというニュアンスを含むことです。なんとなく怪しい程度に止まり、はっきり虚偽と断ずる言葉ではありません。
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3. 絵空事
「絵空事(えそらごと)」には「大袈裟なこと」や「ありもしない嘘」という意味があります。
画家などによって描かれた絵には、必ず作者の主観や意図が加わります。現実のものより美化されたり、実物と異なる部分があったりすることは、決して珍しいことではないでしょう。
このことから、大袈裟なことやありもしないことという意味で用いられるようになりました。
4. 首を捻る
「首を捻る(くびをひねる)」もまた、眉唾物の言い換え表現として用いられます。なんらかの話を疑わしく思うさまを表した言葉です。
しかし「首を捻る」には他にも、理解できずに考え込んでしまうといった意味もあります。
5. 懐疑的
「懐疑的(かいぎてき)」とは、物事の意味や価値について、疑いをもっているさまを意味する熟語です。また、特定の物事に対して、疑いをもって接するといった意味ももちます。
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6. 疑わしい
「疑わしい」とは、事実かどうかが不確かであることを表す言葉です。また、不審なことや怪しいことを指して、「あれは疑わしい」と表現することもあります。
眉唾物の使い方
眉唾物は、日常会話の中でも使える言葉ですが、実際にはあまり使われることがないかもしれません。言葉は実際に使ってみることで、自分の中に定着するでしょう。
本章では、「眉唾物」の使い方を解説します。語句の例文だけでなく、「眉唾」だけで用いる場合の使い方も解説するため、会話や文章で用いる場合はぜひ参考にしてください。
「眉唾物」の例文
「眉唾物」を使う場合は、以下の例文を参考にしてください。状況に合わせて柔軟に使い分けられる語句といえます。
・来年から我が社が、一部上場企業になるという噂話がある。噂を信じて、ストックオプション制度を使う社員もいるが、噂話の中には「眉唾物」な話もあるので注意しよう
・「誰でも簡単に稼げる」「損をしない投資」といった謳い文句は怪しい。どう考えても眉唾物なので、被害にあわないように気を付けてほしい
・昔は誰もが「眉唾物」と言って見向きもしなかったものが、科学の発展によって、いよいよ現実味を帯びてきた
「眉唾」だけで使う場合
「眉唾物」は、単に「眉唾」と表現することもあります。いずれも意味は同様であり、真偽が定かではない、怪しいことを表した言葉です。
たいていの場合「~噂」「~話」「〜情報」など、言葉を付け足して使われます。
・君は眉唾な情報を鵜呑みにしがちなので、冷静に真偽を確かめるようにしなさい
・上司の眉唾な話を信じている部下は一人もいない
会話や文章で「眉唾物」を使おう!
眉唾物とは、真偽が不確かであることに対する不信感を表す言葉です。インターネットだけでなく、世の中には嘘か本当か、不確かな情報が多くあります。眉唾物の情報は、その真偽をしっかりと確かめ、虚偽の情報を真に受けないように注意したいものです。
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