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「目から鱗が落ちる」の意味とは?
「目から鱗が落ちる(めからうろこがおちる)」とは、何かがきっかけになって、急に物事の実態などがよく見え、理解できるようになるたとえです。
目のなかに鱗が入っていると、物事はよく見えません。鱗が目から落ちることで、視野が広がり、周囲の様子や真実に気付けるようになります。
・家事に詳しい友人に正しい洗濯機の使い方を教えてもらった。今まで汚れが落ちていなかった原因がわかり、目から鱗が落ちたようだ
・彼のおかげで謎が解けた。まるで目から鱗が落ちるような思いだ
・指摘してもらったことで、目から鱗が落ちました
省略して「目から鱗」と表現することもあります。
目から鱗が落ちる
出典:小学館 デジタル大辞泉
《新約聖書「使徒行伝」第9章から》何かがきっかけになって、急に物事の実態などがよく見え、理解できるようになるたとえ。
新約聖書に由来する言葉
「目から鱗が落ちる」は、新約聖書の使徒行伝9章に書かれたエピソードに由来するとされる言葉です。
1世紀のローマでは、古代ローマの神々を信仰しないキリスト教徒は迫害を受けており、サウロはキリスト教徒を迫害する一人でした。
ある日、サウロはダマスカスに向かう途中、突然天からの光に照らされて倒れてしまいます。「なぜわたしを迫害するのか」という声を聞いて起き上がってみると、失明して何も見えませんでした。
サウロは一人で歩くこともできず、手を引かれてダマスカスに行きます。するとアナニアという名前の人物がやってきて、「イエス・キリストがわたしを遣わしました」とサウロに告げ、サウロの瞼に手を置きました。
そのときサウロの目から鱗のようなものが落ち、再び目が見えるように。サウロはイエス・キリストの教えに目覚め、パウロと名前を変え、熱心にキリスト教を伝導するようになったといわれています。
なお、サウロ(パウロ)の改宗は絵画のモチーフとしても有名です。ミケランジェロやブリューゲル、カラヴァッジョなどの錚々たる芸術家たちが、サウロの改宗を題材に美術品を制作しています。
目から鱗が落ちる? 目から鱗が取れる?
文化庁が毎年実施する「国語に関する世論調査」では、言葉遣いやカタカナ語など、国語に関する人々の意識を調査しています。平成19年度の調査では、「何かがきっかけになって、急に物事の本質が分かるようになること」を意味する言葉として正しいのは、「目から鱗が落ちる」か「目から鱗が取れる」のどちらかを問う設問が出されました。
8割超の方は「目から鱗が落ちる」と回答しましたが、1割弱の方は「目から鱗が取れる」と答えたようです。また、「両方とも使う」「どちらも使わない」「わからない」と回答した方は1割強もいました。
参考:文化庁|平成19年度「国語に関する世論調査」の結果について
「目から鱗が落ちる」の使い方を例文でチェック
「目から鱗が落ちる」は、次のシチュエーションで使われることがあります。
・視野が広がったとき
・真実に気付いたとき
それぞれのシチュエーションでの使い方を、例文を通して紹介します。
視野が広がったとき
誰かのアドバイスや本などから知識を得、視野が広がったときに「目から鱗が落ちる」と表現することがあります。
・今日の投資セミナーは大変勉強になったよ。定石が正しいのではないとわかって、目から鱗が落ちた気持ちだ
・彼の何気ない一言で目から鱗が落ちた
・この本には、目から鱗が落ちるような情報が多数紹介されている
真実に気付いたとき
何かのきっかけで真実に気付いたときも、「目から鱗が落ちる」と表現することがあります。
・彼の丁寧な説明により、わたしが今まで間違っていたことに気付かされた。目から鱗が落ちるとはこのことだ
・手当たり次第に本を読むことで、ようやく目から鱗が落ちた
・真実がわかり、彼はまるで目から鱗が落ちたかのようにすっきりとした表情をしていた
「目から鱗が落ちる」と類似・言い換え可能な表現
「目から鱗が落ちる」と類似した意味で使われる言葉には、次のものが挙げられます。
・腑に落ちる
・飲み込む
・膝を打つ
・合点がいく
それぞれの意味や使い方、ニュアンスの違いを例文を通して紹介します。
腑に落ちる
「腑に落ちる(ふにおちる)」とは、納得がいくことや、合点がいくことを指す言葉です。「目から鱗が落ちる」と同様、真実に気付いたときなどにも使われます。
・彼の説明で腑に落ちた
・最初は納得できなかったが、ようやく腑に落ちた
なお「腑(ふ)」とは、はらわたや内臓、心などの意味を持つ言葉です。「腑に落ちる」とは、口先や頭だけで理解をするのではなく、理解した内容が身体の奥底までしっかりと染みわたっているニュアンスを表現しているといえるでしょう。
飲み込む
「飲み込む(のみこむ)」とは、飲んで喉を通すことや噛まずにまる飲みにすることを意味しますが、「理解する」や「納得する」の意味でも使われます。
・すっかりコツを飲み込んだ
・彼女は状況を万事飲み込んでいるから、わからないことがあったら彼女に聞いてください
膝を打つ
「膝を打つ(ひざをうつ)」とは、急に思いついたときや感心したときの動作のことです。「膝を叩く」ともいいます。
・「うまい」と感心し、膝を打った
・得心がいき、思わず膝を打った
合点がいく
「合点(がてん)がいく」とは、理解できることや納得がいくことを指す言葉です。
・先ほどから何度も説明を受けているが、一向に合点がいかない
・問題集の解答を読んでも理解できなかったが、彼女の説明でようやく合点がいった
適切なシチュエーションで「目から鱗が落ちる」を使おう
「目から鱗が落ちる」は、何かをきっかけとして物事の実態や真実などに気付いたときに使う表現です。聖書を由来とした言葉ですが、日本でもよく使われています。
「目から鱗が取れる」と間違って使われることもありますが、聖書のエピソードも合わせて、本来の表現を押さえておくとよいでしょう。また、「腑に落ちる」や「合点がいく」などの言い換え表現も覚えておくと、言葉のバリエーションが増えるはずです。
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