錦を飾るとは?
「錦を飾る」という言葉をご存じでしょうか。「なんとなく縁起がよさそう」と感じた方もいるかもしれません。錦を飾るということわざは「故郷に錦を飾る」といった使い方をすることが多い言葉です。
ここでは、錦を飾るの意味やことわざの由来、関連する言葉を解説します。知らなかったという方は、語句の基礎知識として押さえておきましょう。
錦を飾るの意味
錦(にしき)を飾るとは、美しい着物を着る行為を意味します。また、そこから転じて、成功して美しく着飾った姿で故郷へ帰ることを意味することわざです。
「故郷へ錦を飾る」と表現することもありますが、単に錦を飾るだけでも、故郷へ帰るという意味が含まれる場合もあります。
長らく故郷を離れていた人が、立身出世して華々しく故郷へ帰ってくる様子が浮かぶことわざといえるでしょう。
錦を飾る
出典:小学館 デジタル大辞泉
美しい着物を着る。転じて、成功して美しく着飾って故郷へ帰る。「故郷に—・る」
錦を飾るの類語・言い換え表現
「錦を飾る」は、美しい着物を着て(着飾って)故郷へ帰ることを意味することわざです。錦を飾ると同様の意味をもつ言葉は、他にもさまざまなものがあります。
たとえば「名を成す」「顔が立つ」「一花咲かせる」などです。ここでは、それぞれの表現について、その意味を解説します。「錦を飾る」とあわせて覚えておきましょう。
名を成す
「名を成す」とは、多くの人に名前を知られるようになることです。また、世間からよい評判をたてられるといった意味でもあり、「名声を得る」と同様の意味で用いられます。たとえば「作曲家として名を成す」といった使い方をする言葉です。
故郷に帰るという意味は含まれないものの、「立派になる」という点では「錦を飾る」の類語といえるでしょう。
顔が立つ
「顔が立つ」とは、世間に対して面目・名誉が保たれるという意味で用いられる言葉です。顔ではなく「面目が立つ」と表現することもあります。こちらも外(世間)から見て立派であるという点で「錦を飾る」と同様といえるでしょう。
▼あわせて読みたい
一花咲かせる
「一花咲かせる」とは、成功して一時的に華やかに栄えることを表現した言葉です。成功しているという意味では「錦を飾る」と同様ですが、「一時的に」というニュアンスをもちます。「〇〇の前に、もう一花咲かせたい」のような使い方をします。
「着物」に関連する慣用句
前述したように、錦とは「着物」のことです。日本特有の文化である着物を使った日本語表現は「錦を飾る」の他にも複数あります。
たとえば「石臼に着物を着せたよう」「帯に短し襷に長し」「無い袖は振れぬ」「借り着より洗い着」などです。ここでは、それぞれの慣用句について解説します。
石臼に着物を着せたよう
「石臼に着物を着せたよう」とは、着物の着付けが不恰好なことを意味する慣用句です。着物は現代の人にとって、あまり着用する機会のないものといえ、着付けができないという人も少なくないかもしれません。適当に着てしまうと、まさに「石臼に着物を着せたよう」な姿になってしまいます。
帯に短し襷に長し
「帯に短し襷(たすき)に長し」も、中途半端な状態を意味する慣用句の一つです。帯として使うには短すぎるものの、襷として使うには長すぎるもの、つまり中途半端で役に立たないことを指します。
同じ意味をもつ慣用句に「襷には短し手拭(てぬぐい)には長し」というものがあります。これは襷にするには短いものの、手拭として使うには長すぎるものです。
▼あわせて読みたい
無い袖は振れぬ
「無い袖は振れぬ」とは「無いものはどうしようもない」という意味で用いられます。ただし、袖がお財布を入れるところという認識が定着しているため、基本的にはお金以外のものに用いることはない傾向にあります。
借り着より洗い着
「借り着より洗い着(かりぎよりあらいぎ)」とは、人から借りた着物で着飾るよりも、自分で洗った着物を着たほうがよいという意味の慣用句です。言い換えると、人の力に頼って贅沢をするよりも、たとえ貧しくても自分の力でやっていくほうがよいという意味で使われます。
贅沢や見栄を張るのではなく、しっかりと地に足をつけた生き方が好ましいといった戒めとも捉えられる慣用句です。
錦を飾るを正しく使おう!
「錦を飾る」という言葉は、成功して着飾る、もしくはその格好で故郷に帰ることを意味する言葉です。錦を飾るの類語には「名を成す」「顔が立つ」「一花咲かせる」などがあります。いずれも成功するという点では「錦を飾る」と同様です。この記事も参考に、錦を飾るという言葉の理解を深めてみてください。
メイン・アイキャッチ画像:(c)Adobe Stock