この記事のサマリー
・「追伸」とは、本文のあとに、さらに書き加える文のこと。
・ 英語では“postscript” に相当し、“PS”もしくは“P.S.”と略式で書くことが多い。
・本文で伝えるべき内容を、「追伸」に書くのは控える。
ビジネスメールや手紙の末尾でよく見かける「追伸」という言葉。なんとなく使っているけれど、「正しい使い方は?」「メールで使っても大丈夫?」と不安に思ったことはありませんか?
本記事では、「追伸」の正確な意味や、英語表現、ビジネスにおける使用マナーを整理します。
「追伸」の意味と語源
「追伸」という言葉について、辞書に基づく定義とともに、現代の使用シーンに合わせた使い方を理解しましょう。
「追伸」の定義と使用文例
辞書に記載されている「追伸」の定義を確認しましょう。
つい‐しん【追伸/追申】
手紙などで、本文のあとに、さらに書き加える文。また、その初めに記す語。なおなお書き。追って書き。追啓。追陳。二伸。追白。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「追伸」とは、手紙の最後に加える一言を指します。「なおなお書き」「追啓」「二伸」なども、同義語です。
つまり、「追伸」は本文とは別に、気持ちの余白を伝えるパートといえるでしょう。堅い雰囲気の本文の後で、少しフランクな語り口を添えることで、印象がやわらいだり、素直な気持ち加えたりする効果もあります。
例えば、有島武郎の『或る女(1919)』には、こんな一節があります。
「追伸に〈略〉青年の持参した金は要らないからお返しする」
これは、手紙をいったん締めくくったあとに、大切な補足を添えた一例です。「追伸」は、本文に収まりきらなかった思いや、相手へのさりげない気遣いを表すために使ったりします。
こうした例は、「追伸」が手紙文化の中で長く親しまれてきたことも、うかがわせます。
「追伸」と“P.S.”との関連は?
「追伸」は、英語の “postscript” に相当し、“PS”もしくは“P.S.”と略式で書くことが多いでしょう。内容の補足や、感謝の気持ち、気遣いを追加する目的で使います。
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)

メールや手紙における「追伸」の使い方
「追伸」は本来、手紙のあとがき的な役割を果たす表現ですが、メール文化が一般化した今、その使い方にも変化が生まれています。ここでは、ビジネスやプライベートでの活用場面を整理しながら、使い方や注意点を紹介します。
ビジネスメールで「追伸」はNG?
ビジネスメールに「追伸」を加えるのは、カジュアルな印象を与えてしまうため、控えるのがベターです。特に、初対面の相手や目上の人に対しては、本文内に必要な情報をすべて整理して記載することが基本。
一方で、相手との関係性が築かれている場合などは、「追伸」が有効に働くこともあるでしょう。本文に書けなかった気持ちや、親しみ、余白を感じさせる一言として、例えばこんな使い方はいかがでしょうか?
「追伸 先日お話しされていた展示会は、いかがでしたか? またお話を聞かせてください」
このように、補足や気遣い、親しみをを伝える一文にとどめると好印象でしょう。
手紙での「追伸」の活用例と書き方
手紙における「追伸」では主文で書き忘れたことや、つけ足したいことなどを書きます。本文を一度きちんと締めくくったあと、「あ、そういえば……!」と思い出したようなことや、主文に入れられなかったけれど伝えたいことを書き加えることで、人間味のあるやりとりになりますね。
書き方は、以下のようにシンプルに記します。
「追伸 おすすめしてくださった映画を観に行きました。今度お会いしたときに、ぜひ感想をお伝えさせてください」
手紙の構成は大きく4つのパートがあります。時候の挨拶を入れる「前文」、伝えたい内容を書く「主文」、相手を気遣う「末文」、日付や自分の名前を書く「後付け」の4つです。「追伸」は、「後付け」の後に入る「副文」に当たります。

「追伸」の類語や言い換え表現
ここでは、「追伸」の言い換え表現をいくつか紹介します。
柔らかく伝えたいときの言い換え例
手紙やメールの最後に「追伸」と明示せずとも、同じような役割を果たす言い回しはあります。例えば、以下のような表現です。
「最後にひとことお伝えすると…」
「付け加えになりますが…」
「一筆添えさせていただきます」
これらの表現は、特に私信で、かしこまりすぎない文体として、追記内容を伝えることができるでしょう。
例えば、取引先への文末に、こんな一文を加えてみるのはいかがでしょうか?
「最後に一言。どうぞお身体には、十分お気をつけてお過ごしくださいませ」
「追記」や「補足」の意味は?
「追伸」に似た表現として、「追記(ついき)」や「補足」があります。それぞれの意味も確認しましょう。
「追記」
本文を書いた後につけ足して書くことを指します。英語では、「追伸」と同じく、 “postscript” に相当します。
「補足」
元の情報の不足を補い、情報をつけ足して補うことを指します。

「追伸」に関するFAQ
ここでは、「追伸」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「追伸」をメールに使うのは失礼ですか?
A. 初対面の人や目上の人に使うのは避けた方がいいでしょう。
相手との関係性が築かれている場合などは、「追伸」が有効に働くこともあります。
Q2. 「追伸」の英語表現は?
A. “postscript” に相当し、“PS”もしくは“P.S.”と略式で書くことが多いでしょう。
Q3. NGな使い方はありますか?
A. 本文で伝えるべき重要事項を「追伸」に書くのは避けましょう。
受け手にとって重要な情報が見落とされる恐れがあります。
最後に
「追伸」とは、本文の「おまけ」ではなく、相手への温かい気配りを伝えることができるツールとして考えてみると、使える幅が広がるかもしれません。
意味や使い方、ビジネスでの判断基準を整理して、印象に残る文章作成を実践してみてください。
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