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「鶏鳴狗盗」(けいめいくとう)の意味とは?
「鶏鳴狗盗」とは、つまらないことしかできない人や、つまらない技能やくだらない芸でも何かの役に立つことを表す言葉です。
「鶏鳴狗盗」という言葉は、中国の故事から生まれました。故事とは、昔にあった事柄や古くからの言い伝えのことです。まずは言葉の由来を知り、使い方について確認しましょう。
「鶏鳴狗盗」の言葉の由来
戦国時代、孟嘗君(もうしょうくん)は、秦(しん)に幽閉されていました。秦王の寵姫(ちょうき)が白ギツネの毛皮を欲しがっていると知った孟嘗君は、犬のように盗みがうまい者に盗ませ寵姫に贈ります。
また、鶏の鳴きまねがうまい者を使って関所を開かせ、秦から脱出を遂げました。
犬のように盗みがうまいこと、鶏の鳴きまねがうまいことはくだらないことかもしれません。しかし、それぞれが秦からの脱出に役立ったことが「鶏鳴狗盗」という言葉の由来になっています。
けいめい‐くとう〔‐クタウ〕【鶏鳴×狗盗】
出典:小学館 デジタル大辞泉
《斉 (せい) の孟嘗君 (もうしょうくん) が秦に幽閉されたとき、食客のこそどろや、にわとりの鳴きまねのうまい者に助けられて脱出したという「史記」孟嘗君伝の故事から》にわとりの鳴きまねをして人を欺いたり、犬のようにして物を盗んだりする卑しい者。
「鶏鳴狗盗」の例文
「鶏鳴狗盗」という言葉は、日常生活では以下のように用いられます。馴染みのない表現かもしれませんが、正しい意味を理解したうえで活用してみましょう。
・鶏鳴狗盗という言葉があるように、どこで何が役に立つのかはわからない
・鶏鳴狗盗の技術があったからこそ、苦難を乗り越えられたと思っている
・自分には才能がないと思っていても、鶏鳴狗盗で役に立つ機会が訪れるかもしれない
「鶏鳴狗盗」と似た意味を持つ四字熟語
ここからは、「鶏鳴狗盗」と似た意味を持つ四字熟語を紹介します。
・有象無象(うぞうむぞう)
・牛溲馬勃(ぎゅうしゅうばぼつ)
・愚問愚答 (ぐもんぐとう)
いずれも、くだらないものや行動を表す言葉です。「鶏鳴狗盗」とのニュアンスの違いとともに、具体的な使い方もチェックしていきましょう。
有象無象(うぞうむぞう)
「有象無象」は、数が多いだけで、中身はくだらない人や物に対して使う表現です。元は仏教用語で、「象」には「かたち」という意味があります。
また、「形があるものも、ないものもすべて」という意味合いも。「鶏鳴狗盗」のように、くだらないけれど役に立つという意味はないため、使用時は気を付けましょう。
・有象無象の集まりだと思っていたが、その中でも彼の存在は目を引くものだった
・演説が始まると、駅の周辺は有象無象の人で混雑を見せた
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牛溲馬勃(ぎゅうしゅうばぼつ)
「牛溲馬勃」は、役に立たないくだらないものに対して使う言葉です。「牛溲」は牛の小便、「馬勃」は馬の糞を意味します。
また、「牛溲」には植物の「オオバコ」という意味も。「馬勃」はキノコの一種である「ホコリダケ」を指す言葉です。どちらも薬草ですが、安価でありいずれもささいなものとして扱われています。
そのため「牛溲馬勃」も、さほど価値のない役に立たないものを指すことが多いでしょう。
・サッカーをしようと誘われたが、ルールを知らない自分が参加しても牛溲馬勃としか思えない
・壊れて音が出ないスピーカーなど、持っていても牛溲馬勃だ
愚問愚答 (ぐもんぐとう)
「愚問愚答」とは、くだらない質問や回答のことです。聞くほうも答えるほうも、くだらないことを意味します。
・愚問愚答を繰り返すばかりで中身がない会見だった
・前回のように愚問愚答ばかりでなく、建設的な意見を交えた意義のある会議にしたい
・Web会議はいつも緊張してしまうため、愚問愚答ばかり繰り返さないように気を付けたい
「鶏鳴狗盗」のように故事から生まれた四字熟語
中国の故事からは、「鶏鳴狗盗」だけでなく以下のようにさまざまな四字熟語が生まれています。
・鶏口牛後(けいこうぎゅうご)
・鶏皮鶴髪(けいひかくはつ)
・鶏群一鶴(けいぐんいっかく)
さまざまな言葉の意味を知っていると、シチュエーションに応じた表現をしたいときに役立ちます。ここからは、それぞれの意味について深掘りしましょう。
鶏口牛後(けいこうぎゅうご)
「鶏口牛後」とは、「小さな組織でよいのでリーダーになるべきだ」という考えのことです。「鶏口」は小さいけれど首長であること、「牛後」は大きなものの言いなりになることを表します。
中国の戦国時代、遊説家の蘇秦(そしん)が韓王(かんおう)に対し、「小さな国であっても王としての権威を保つべきであり、強国の臣下に成り下がってはならない」と説いたことが由来です。
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鶏皮鶴髪(けいひかくはつ)
「鶏皮鶴髪」は、唐玄宗の「傀儡吟(かいらいぎん)」という作品に登場する言葉です。年齢を重ねて容姿が衰えた様子や、老人を意味します。
「鶏皮」は、皮膚が鶏の皮のように張りを失った様子のこと。また「鶴髪」は、鶴の羽のように真っ白になった髪のことです。
いずれも容姿の衰えに通ずる表現であり、他者に使う際は失礼に当たらないように注意する必要があります。
鶏群一鶴(けいぐんいっかく)
「鶏群一鶴」は、多くの凡人の中に、1人だけ際立って優れた人がいる様子を意味します。出典は、中国の歴史について書かれた書物「晋書(しんじょ)」です。
「鶏群」とは、ニワトリの群れのこと。その中に一羽だけ紛れた鶴を、優秀な人物にたとえています。「会社の中でも一目置かれる鶏群一鶴の人材だった」のように、他者を褒める際にも使われる表現です。
「鶏鳴狗盗」の意味を知り言葉の幅を広げよう
「鶏鳴狗盗」は、くだらないものやつまらないものに対して用いられる言葉です。また、そういったものでも時には役に立つことを表しています。
くだらないことを意味する四字熟語はさまざまですが、「鶏鳴狗盗」のように役に立つことを意味する語句はさほど多くないかもしれません。
それぞれの細かなニュアンスの違いを知り、言葉の幅を広げていきましょう。
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