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「コンコルド効果」を知っていますか?
「コンコルド効果」という言葉を見聞きしたことはありますか? 一見ビジネス用語のようですが、実は私たちの日常にも影響していることがあります。コンコルド効果に気がつくことができるかどうかで、さまざまなことが変わります。内容を知らない人や、曖昧な意味しかわからない人はぜひチェックしてください。
まずは、コンコルド効果の意味を見ていきましょう。
意味
コンコルド効果を辞書で調べたところ、「コンコルドの誤謬(ごびゅう)」と同義であることがわかりました。
【コンコルドの誤謬】
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
《Concord fallacy》サンクコストを惜しんで投資を続けてしまうこと。それまでに費やした資金や労力などの見返りを得ようとして、かえって損失が拡大すること。コンコルド効果。
コンコルド効果は、経済学の用語の一つとされています。投資をしても損失が出るだけだとわかっているのに、止めることができない状態を指す場合もあります。
コンコルド効果に陥ると、「これまでの労力が無駄になる」という気持ちがわき、客観的な判断をすることができなくなりがちです。
この言葉の由来は?
コンコルド効果の「コンコルド」は、イギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機に由来しています。1969年に初飛行したコンコルドは、多くの注目を集めました。しかし、開発コストが巨額になり、採算割れが避けられない状態に陥ってしまったのです。成功の見込みがないとわかりながらも開発を続行、損失が広がってしまいました。
大きな投資をしたからという気持ちが、損失を拡大させたことから、上述した意味で使われるようになったとされています。
「サンクコスト」も知っておこう
コンコルド効果の意味に登場した「サンクコスト」についても見ていきましょう。
意味
サンクコストについての意味は次の通りです。
サンク‐コスト【sunk costs】
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
すでに支出され、どのような意思決定をしても回収できない費用のこと。埋没費用。
回収不能となったコストが「サンクコスト」です。「sunk」は「沈んだ」を意味します。
サンクコストは無視でいい?
サンクコストは無視をするのが合理的とされています。どうやっても回収することができないため、見切りをつけ、損失拡大を防ぐことを優先する必要があるからです。
しかし、コンコルド効果がそれを許さず、投資を行なったことを正当化して継続しようとしたり、損失拡大を把握しながらも、見切りをつけることができずに過ごしてしまうケースがあります。
コンコルド効果がビジネスに及ぼす影響
ここからは、コンコルド効果がビジネスに及ぼす影響を見ていきましょう。
事業撤退の判断ができない
会社規模で見ると、収益が期待できない事業やプロジェクトの事業撤退を決断できない場合、コンコルド効果が影響しているケースがあります。これまでに投資してきたコストを考え、「ここまでやってきたのだから」といった心理が働き、見切りをつけられないのです。
このような感情に支配されると、冷静さを欠いてしまい、結果として損失をさらに広げてしまうことがあります。
コスト投下がやめられない
採算が見込めないにもかかわらず、「まだ可能性はある」と捉えてコスト投下を続けてしまうのも、コンコルド効果の影響です。「もう少し頑張れば逆転できる」「創業時から続けている事業だから」といった思いが強くなり、非合理的な判断に陥ってしまうことも…。その結果、さらにリソースを投入してしまい、損失が拡大するリスクがあります。
コンコルド効果が日常に及ぼす影響
コンコルド効果が、日常に影響を及ぼすケースも多くあります。特に、ギャンブルや課金ゲームは、影響が強いかもしれません。
ギャンブルや課金ゲーム
競馬や競輪、パチンコなどがやめられない場合、コンコルド効果の影響が強いかもしれません。これまでに注ぎ込んだお金をギャンブルで回収しようと考え、歯止めが効かなくなる人は多いです。「一発当てれば逆転できる」と考え、さらに借金を重ねるケースも少なくありません。借金が膨らみすぎると、自力で返済することが難しくなり、日常生活に多大な支障をきたすでしょう。
課金ゲームも同様です。「こんなに課金してきたんだから」と考えてしまい、なかなか課金をやめることができません。
恋愛にも影響する
実は、コンコルド効果は恋愛にも影響します。相手への気持ちは冷めているのに「ここまでつきあってきたんだから」と、交際を続けてしまうのは、コンコルド効果の影響といえるでしょう。
また、相手は自分を恋愛対象として見ていないとわかっているのに「もう少しがんばったら振り向いてくれるかも」と考え、プレゼントを贈ったり、相手の機嫌をとったりして、投資を続けようとするケースもあります。
コンコルド効果を防ぐには
コンコルド効果に陥るのを防ぐにはどうすればいいのでしょうか?
シミュレートする
もしお金が関連している場合は、一度冷静になるためにもシミュレーションを行いましょう。これまで投資してきた金額と、現在かかっているコストを計算し、今後の利益や損失がどうなるのかを数字で確かめます。シミュレーションの結果、損失の可能性が高い場合は撤退を選ぶほうがいいでしょう。大きな損失を抱えて動けなくなる前に、冷静に決断してくださいね。
ゼロベースにする
それまでに費やしたコストはゼロであると考え、白紙の状態で今後の選択肢を検討することも有効です。現状を継続するメリットやデメリット、そして撤退した場合のメリットやデメリットをそれぞれ比較しましょう。冷静な判断がしやすくなるはずです。
誰かに相談してみる
自分で判断が難しいと感じた場合は、信頼できる友人や知人、専門家に相談するのもいい方法です。第三者の意見を聞くことで、客観的な視点が得られ、冷静な判断がしやすくなります。
また、相談することで新たな視点が得られることもあります。「ピンチだと思っていたけど、これは生き方を変えるチャンスだ」と捉え、自分にとって本当に必要な投資が何かを見極める手助けになるでしょう。
最後に
コンコルド効果は、過去の投資や努力が判断を曇らせ、非合理的な決断を引き起こすリスクを持っているということがわかりました。冷静な視点を持ち、シミュレーションや第三者の意見を取り入れることで、この効果に囚われず、最適な判断を下すことが大切ですね。
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