今やビジネスシーンで当たり前のように使われるようになった、「イノベーション」という言葉。Oggi読者の中にも、新商品の開発などの「イノベーション」事業に携わっている人も多いかもしれませんね。「イノベーション」は技術革新とも呼ばれますが、具体的にどのような内容を指すのか理解しにくいのではないでしょうか?
本記事では、ビジネスパーソンに必須の「イノベーション」に焦点を当てて、その意味や近年注目されている「グリーン・イノベーション」などの関連語を学んでみましょう。
「イノベーション」の意味
「イノベーション(innovation)」の意味を辞書で調べてみました。
1 新機軸。革新。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
2 新製品の開発、新生産方式の導入、新市場の開拓、新原料・新資源の開発、新組織の形成などによって、経済発展や景気循環がもたらされるとする概念。シュンペーターの用語。また、狭義には技術革新の意に用いる。
「イノベーション」は本来「革新」という意味として用いられてきましたが、現代に浸透している経済学用語としての「イノベーション」の概念を生み出したのが、オーストリア生まれの経済学者であるシュンペーター(1883-1950)。彼は、起業家が新商品やサービスを生み出す革新的な取り組みが、経済発展の基礎であると考えました。
今までの価値観や固定観念に縛られていては、経済は停滞し、あらゆる産業がやがて衰退してしまうでしょう。そこで、企業が従来と異なる新しいやり方で、新たな資源や技術を生み出し、社会全体の経済活動を活発化させ「イノベーション」を起こすのです。
人々の暮らしを便利に変えた「イノベーション」
企業が行う「イノベーション」は、人々の暮らしに大きな変化を与えてきました。私たちが普段利用している電車やバス、オフィスビルなども、さまざまな技術革新があったからこそ存在しているものですよね。現代の生活の基盤を作るきっかけとなった、2つの歴史的な「イノベーション」についてみていきましょう!
1:イギリスの産業革命
18世紀後半から19世紀前半にかけてイギリスで起こった産業革命は、生活に大きな変革をもたらしました。特に、私たちも大好きな洋服の生地を作る、綿織物工業の発展が象徴的です。それまでは手作業で行われていた紡績や織布が、蒸気機関や機械の導入により大量生産が可能となり、安価で高品質な綿製品が市場に供給されるようになりました。
また、鉄道の出現も大きなイノベーションでした。鉄道は人々の移動や商品の輸送を劇的に効率化し、都市の発展や商業の活性化に大きく貢献しました。遠隔地の新鮮な食材や商品が手に入るようになり、生活の質が向上したのです。
2:日本の高度経済成長
日本の高度経済成長は、1950年代から1970年代初頭にかけて、驚異的な経済成長とイノベーションを遂げた時期です。この間、実質国民総支出の成長率が年率10%を超えることも珍しく、日本はアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国となりました。
この成長とイノベーションにより、電気洗濯機、真空掃除機、電気冷蔵庫が「三種の神器」として家庭に普及し、後には自動車、クーラー、カラーテレビの「3C」が加わりました。このことで家庭生活はぐっと便利になり、多くの人々が豊かさを実感したのです。
合わせて覚えたい「イノベーション」の関連語
先述したような基本的な「イノベーション」から派生して、さまざまな種類の「イノベーション」が生まれています。ここでは、主な3つの用語を紹介します。
1:リバース・イノベーション
リバース・イノベーションは、中南米や東南アジアなどの新興国で生まれた技術や製品を、先進国に導入して世界に普及させる概念を指します。一般的には、先進国の技術や製品を新興国に伝えるのが従来の方法ですが、それを逆転させて、新興国から先進国へとリバース(逆流)させるため、リバース・イノベーションと呼ぶのです。
2010年代初めに、ゼネラル・エレクトリック社(GE)最高経営責任者のジェフリー・イメルトらが提唱し、グローバル経営の新たな流れとして注目されています。
2:破壊的イノベーション
破壊的イノベーションとは従来の方法や常識とは異なる方法で、今まであった価値観や秩序を変え、業界構造に大きな変化をもたらすことを指します。この中には「ローエンド型」と「新市場型」の2つがあります。「ローエンド型」は、既存市場の低価格帯に焦点を当てたイノベーションで、「新市場型」は、まったく新しい市場を創出するイノベーションです。
たとえば、私たちが当たり前のように持っているスマートフォン(以下スマホ)は、「電話=相手と会話をする道具」という価値観を破壊したツールです。スマホは、写真撮影、キャッシュレス決済、インターネットブラウジングなど多機能を一台で実現しています。これにより、従来のカメラや財布、パソコンなどの役割を一部置き換え、私たちの生活に大きな変革をもたらしました。
従来品や産業自体を破壊するほどの激しい価値転換が行われることが、破壊的イノベーションと呼ばれる所以です。
3:グリーン・イノベーション
グリーン・イノベーションとは、エネルギーや環境分野における問題を解決する技術革新のことです。近年では、地球温暖化の影響で気温が上昇し、夏の猛暑日が続くなど、気候変動を身近に感じる機会が増えていますよね。この地球温暖化の原因の一つが、二酸化炭素(CO2)の増加です。
世界では、この二酸化炭素を資源として活用し、燃料やプラスチック原料を作る人工光合成という技術や、燃焼時に二酸化炭素を排出しない、水素やアンモニアなどの次世代エネルギーの開発が進められています。
最後に
「イノベーション」というと、企業や起業家が行うものだという印象があったかもしれませんが、それにより自分の暮らしが豊かになっていると思うと、少し親近感が湧いてきますよね。近年では、環境問題を解決する技術やシステムを作ることによる、「グリーン・イノベーション」が推進されています。地球環境を守りながら、暮らしが豊かになる新しい「イノベーション」が生まれるといいですね。
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参考/『日本大百科全書』(小学館)
『世界大百科事典』(平凡社)
『日経キーワード 2024-2025』(日経HR)