「CSR」を知っていますか?
「CSR」とは「corporate social responsibility」の頭文字をとった略語です。日本では、「企業の社会的責任」と訳しています。さて、皆さんは企業の社会的責任ということを考えたことがありますか? また、あなたが勤める会社の社会的責任を理解しているでしょうか? そう言われたら、すぐにこたえられる人は少ないかもしれません。
かたい話のようですが、大切なことなので、この記事を通して考えてみましょう。
意味
「CSR」を辞書で調べてみました。
シー‐エス‐アール【CSR】
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
《corporate social responsibility》収益を上げ配当を維持し、法令を遵守するだけでなく、人権に配慮した適正な雇用・労働条件、消費者への適切な対応、環境問題への配慮、地域社会への貢献を行うなど、企業が市民として果たすべき責任をいう。企業の社会的責任。→社会的責任投資
「CSR」は、英語の「corporate social responsibility」の頭文字3つを並べた略語であり、「csr」ではなく「CSR」というようにアルファベット大文字で表すのが一般的です。「企業の社会的責任」という意味を持ちます。
企業の社会的責任とは?
企業の社会的責任とは、「企業がその活動を通じて社会や環境に与えるマイナス影響を除去し、地球や社会の持続可能性に貢献すること」です。具体的なガイドラインとしては、2012年に発効した国際規格「ISO26000」があります。さらに、2015年に国連が採択した「SDGs(持続可能な開発目標)」は、CSRの概念を広げたものです。
CSRを支える投資手法として「ESG投資」があります。ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を取ったもの。これらの分野で優れた企業に投資することを指します。ESG投資の総額は約2500兆円に達しており、企業の長期的な成長と価値向上を促進しています。
「CSR」の具体的な枠組みとは
CSRの具体的な枠組みは、国際規格「ISO26000」に示されていると先述しました。これは、CSRについての国際規格です。すべての組織で基本とすべき重要な視点として挙げられている7つの原則を紹介します。
《7つの原則》
1:説明責任
2:透明性
3:倫理的な行動
4:ステークホルダーの利害の尊重
5:法の支配の尊重
6:国際行動規範の尊重
7:人権の尊重
上記は、社会的責任を果たすために必要とされている原則です。
「CSR」のメリットとは
ここからは企業がCSRを行うことで得られるメリットを見ていきましょう。ここでは、4つ紹介します。
1:企業イメージの向上につながる
CSRの活動を行うことで、環境問題への配慮や地域社会発展に貢献していることをアピールすることができます。たとえば、環境に配慮した商品やサービスを展開することで、社会からの共感や賛同を得やすくなるでしょう。また、地域社会の発展に貢献することは、その地域での企業イメージアップにつながります。CSR活動により、社会からの信頼度が高まり、ブランド価値が向上するでしょう。
2:顧客満足度とロイヤリティー(忠誠心)の向上
社会的責任を果たしている企業は、顧客に対しても誠実であると判断してもらえるでしょう。CSR活動により企業イメージを向上させることができれば、さらに顧客の満足度やロイヤリティーが高まります。また、取引先からの信頼を得ることも期待できますね。
3:コンプライアンス(法令遵守)強化
昨今の報道で取り上げられることが多い企業内のハラスメントやデータ改ざんは、企業倫理が問われる事態に発展しています。今後、これまで以上にコンプライアンスが求められるでしょう。
CSRの活動を通して企業は、法令遵守や倫理的な行動を重視するようになります。それはコンプライアンスの強化につながりますね。
4:従業員のモチベーションとエンゲージメントの向上
CSR活動に積極的に取り組む企業は、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高めることもできます。自分が勤める企業が社会的責任を持って行動したら、誇りに感じますよね。また、CSRを通して労働環境に配慮することは、従業員のパフォーマンス向上や生産性アップにつながることが多いでしょう。
「CSR」のデメリット
CSRにおいてデメリットになりやすいことも見ていきましょう。3つ紹介します。
1:コストの増加
環境保護活動やコミュニティの支援など、CSRに関連する活動には相応の資金が必要になります。CSR活動は利益を考えて行うものではありませんが、コストはかかるため、企業によっては利益が圧迫される可能性があるでしょう。
長期的な視点で考えると、CSR活動が利益につながる可能性は高いといえます。しかし、創業まもない企業や、経営状態がよくない企業にとってはデメリットになるでしょう。
2:経営資源の分散
CSR活動には時間や労力、そして人材が必要です。企業のリソースがCSR活動に割かれることで、本来の事業活動に専念できる時間やリソースが減り、事業の効率が悪くなることが考えられます。
3:ROI(投資収益率)の不確実性
CSR活動によるメリットは、必ずしもすぐに目に見えて出てくるものではありません。ROI(投資収益率)が不明確であり、さらにCSR活動が直接的な利益に結びつかないと、業績を重視する株主からの理解や支持を得るのが難しくなることがあります。
「CSR」と似ている言葉
CSRと並んでよく登場するのが「SDGs」「ESG」です。それぞれの意味を見て行きましょう。
SDGs
《Sustainable Development Goals》
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
【持続可能な開発目標】
2015年に達成期限を迎えるミレニアム開発目標の後継となる、環境と開発問題に関する新たな世界目標。2012年6月の国連持続可能な開発会議(リオ+20)で策定の開始が合意された。持続的開発目標。SDGs(エスディージーズ)(Sustainable Development Goals)。
[補説]SDGグローバル指標(外務省プラットフォームより)
1:貧困をなくそう
2:飢餓をゼロに
3:すべての人に健康と福祉を
4:質の高い教育をみんなに
5:ジェンダー平等を実現しよう
6:安全な水とトイレを世界中に
7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
8:働きがいも経済成長も
9:産業と技術革新の基盤をつくろう
10:人や国の不平等をなくそう
11:住み続けられるまちづくりを
12:つくる責任 つかう責任
13:気候変動に具体的な対策を
14:海の豊かさを守ろう
15:陸の豊かさも守ろう
16:平和と公正をすべての人に
17:パートナーシップで目標を達成しよう
「持続可能」とは、何かをし続けられるという意味です。環境汚染や感染症、貧困、紛争など、人類が直面している課題は数多くあります。誰もが安心して暮らし続ける社会の実現に向け、2015年の「国連持続可能な開発サミット」で世界193か国の加盟国が全会一致で合意したのが、SDGsです。
ESG
先述しましたが、ESGとは「environment(環境)」「social(社会)」「governance(企業統治)」の頭文字を合わせた言葉です。
企業や機関投資家が、持続可能な社会に貢献するために心を配るべき3要素といわれています。
最後に
CSRは、企業が社会や環境に対して責任を持ち、持続可能な未来を築くための重要な取り組みだということがわかりました。
あなたが勤める会社や、日々利用している企業のCSR活動にもぜひ注目してみてください。私たち一人ひとりがCSRの意義を理解することで、よりよい社会にしていくことができます。持続可能な社会の実現に向けて、ともに歩んでいきましょう!
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