十人十色とは? 読み方や意味を紹介
十人十色(じゅうにんといろ)とは、考え方や好みなどが各人それぞれに違っていることを意味する四字熟語です。10人の人がいれば、10人の個性やカラーがあります。
じゅうにん‐といろ
出典:小学館 デジタル大辞泉
考え方や好みなどが各人それぞれに違っていること。「—の服装」
日常生活でも、次のように十人十色を使ってみましょう。
・子どもたちに七夕の絵を描くようにいったところ、十人十色の個性豊かな絵ができあがった
・新しい彼女は兄に夢中で、十人十色とはよくいったものだ
考え方や好みは、必ずしも異なるとは限りません。次のように、十人十色が否定的に使われることもあります。
・教室にいるすべての女性が彼の隣に座りたがった。十人十色とはいうけれど、当てはまらないこともある
・個性を大切にというが、あまり個性的な格好は不信感を持たれることがある。十人十色といっても程度があるようだ
十人十色の言い換えに使える表現
十人十色のように、人によって考え方や好みが異なることを意味する表現はいくつかあります。たとえば、次の表現は、十人十色の言い換えに使えるかもしれません。
・蓼食う虫も好き好き
・千差万別
・各人各様
それぞれの使い方やニュアンスについて、例文を通して紹介します。
蓼食う虫も好き好き
蓼食う虫も好き好き(たでくうむしもすきずき)とは、タデの辛い葉を食う虫もあるように、人の好みはさまざまであるという意味の言葉です。次のように使われます。
・あんな突飛なデザインの服は売れないと思っていたが、2着も売れて驚いた。蓼食う虫も好き好きだね
・彼女は気が強くてわがままだが、なぜかモテる。言い方は悪いが、蓼食う虫も好き好きだ
蓼食う虫も好き好きは、おいしいとはいえないタデを例にしたことわざです。そのため、「好みや考え方が違う」といったニュートラルな立ち位置ではなく、どちらかというと「物好きがいる」といったニュアンスで使われることがあります。
他人や他人の行為に対して「蓼食う虫も好き好き」というのは、失礼になってしまうかもしれません。使う場所やシチュエーションを考慮してから使うようにしましょう。
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千差万別
千差万別(せんさばんべつ、せんさまんべつ)とは、種々さまざまの違いがあることや、違いがある様子を指す言葉です。次のように使ってみましょう。
・ハロウィンパーティーに生徒たちは千差万別な格好でやってきた
・勉強方法は千差万別なので、自分にとってよいやり方を子どもに押し付けてはいけない
千差万別は、単に「差がある」「違いがある」という意味の言葉です。蓼食う虫も好き好きのような失礼にあたり得るニュアンスはないため、日常会話の中でも使いやすいでしょう。
各人各様
各人各様(かくじんかくよう)とは、人によって、それぞれやり方などが違うことです。次のように使います。
・各人各様のやり方で仕事を始めるのは危険だ
・先生が叙勲されたというニュースを聞き、教え子たちは各人各様の反応を見せた
各人各様も千差万別と同じく、特に失礼なニュアンスは含まれません。人さまざまであることに対してネガティブな意味合いがないため、他人や他人の行為に対しても使いやすいといえるでしょう。
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十人十色と反対の意味を持つ表現
十人十色とは反対の意味合いで使われる言葉・表現としては、次のものが挙げられます。
・異口同音
・尋常一様
・口を揃える
・衆目の一致するところだ
それぞれの使い方やニュアンスの違いについて、例文を通して紹介します。
異口同音
異口同音(いくどうおん)とは、多くの人が口を揃えて同じことをいうことを意味する言葉です。十人十色とは異なり、すべての人が同じ話をすることを指し、次のように使われます。
・彼女の演技は素晴らしかった。観客は異口同音に彼女の表現力を褒め称えている
・明日のテストを延期してもいいか尋ねたところ、生徒たちは異口同音に賛意を示した
また、多くの人の意見が一致することを意味することもあります。
・サークル内で盗難が起こった。メンバー一人ひとりに犯人について尋ねたところ、異口同音にリーダーの名前を述べたようだ
・彼をリーダーとして再選するかという議題に対し、メンバーは異口同音に否と答えた
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尋常一様
尋常一様(じんじょういちよう)とは、普通と異なるところのないことや、その様子のことです。個性や自己主張のない状態を指すため、一人ひとり考え方や好みが異なる十人十色とは反対の意味の言葉と考えられます。
・尋常一様の努力では、成功するとはいえない
・彼女は尋常一様の教師ではない。教え方は奇抜だが、生徒の能力を引き出す点で優れている
口を揃える
口を揃える(くちをそろえる)とは、各人が同じことをいうことです。十人十色とは異なり、すべての人が同じ意見を持っているときに使われます。
・生徒たちは口を揃えて自習したいと主張した
・みな口を揃えたように「怪しい人は見ていない」と述べている
衆目の一致するところだ
衆目(しゅうもく)とは、多くの人の見る目や多くの人の観察のことです。そのため、「衆目の一致するところ」といえば「多くの人の意見が一致している」や「誰もが認める」といった意味で使われます。
・彼が人格者であることは、衆目の一致するところだ
・彼女が優秀であるのは衆目の一致するところだが、あまり知られてはいない彼女の面白さにおいても群を抜いて優れていると思う
十人十色を正しい意味で使おう
十人十色は、考え方や好みがさまざまであることを意味することわざです。単に「みんな違う」というニュアンスで使われるため、否定する意味合いのないニュートラルな表現といえるでしょう。
一方、蓼食う虫も好き好きは、ネガティブなニュアンスで使われることもあります。関係性やシーンに合わせて適切な表現を使うようにしましょう。
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