この記事のサマリー
・「きゃぱい」とは、キャパオーバーを略した若者言葉です。
・「きゃぱい」は「容量オーバー」の意味が基本ですが、若者の間では「最高」「かわいすぎる」といった感動を示す言葉としても使います。
・「きゃぱい」の由来は、モデルのゆうちゃみさんにあるといわれています。
「まじできゃぱい」「きゃぱくて無理」など、SNSや身近な会話で耳にすることが増えた「きゃぱい」。これは「キャパシティオーバー(キャパオーバー)」を短縮した言葉で、「容量や処理能力が限界を超えた状態」を意味します。意味や使い方が気になり、戸惑った人もいるのではないでしょうか?
この記事では、ビジネスでも使うことがある“capacity”の意味を土台に、「きゃぱい」が表す感情や使いどころを整理します。
「きゃぱい」の意味を整理
最初に、もとになっている「キャパシティ」の意味を出発点にして、「きゃぱい」がどのような状態や気持ちを表す言葉なのか整理します。
「キャパシティ」の意味
「きゃぱい」は「キャパオーバー」を短く言い表した言葉です。まずは、「キャパシティ(“capacity”)」の意味を、辞書で確認します。
キャパシティー【capacity】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
1 収容能力。また、容量。キャパ。
2 物事を受け入れる能力。受容力。キャパ。
「キャパシティ」には、会場の座席数や収納量といった物理的な容量と、人の心身・業務の処理能力といった抽象的な受容力の2つの意味があります。
「キャパオーバー」から「きゃぱい」への変化
「キャパオーバー」は「キャパシティ」が示す「どこまで受け止められるか」という限界を超えた状態を指す言葉です。本来はタスク過多や、物理的・精神的に抱えきれないと感じるネガティブな場面を表す言葉として使われていました。
ここから、「きゃぱい」もその感覚を表す表現として生まれたことが理解できます。
若者語としての変化・拡張
一方で、若者の間では「やばい」に近い肯定的な意味でも使うように変化しました。
「最高」「可愛すぎる」「幸せすぎる」など、気持ちが高ぶった場面を一言で表すときに「きゃぱい」を使うことがあります。
ネガティブ・ポジティブの両方で用いる、幅の広さが特徴です。
「きゃぱい」の由来
若者言葉は、SNSをきっかけに広がることが多く、「きゃぱい」もその一つです。モデルのゆうちゃみさんが、会話の中で「キャパオーバーは長いから、きゃぱいでよくない?」と言い始めたことが広まったきっかけの一つとして知られています。
「ぎゃるぴ(ギャルピース)」「かわぽ(可愛い)」などと同様に、ひらがなの柔らかな語感も相まって、若い世代を中心に急速に浸透しました。
参考:『デジタル大辞泉』、『現代用語の基礎知識』、『日本国語大辞典』、『ランダムハウス英和大辞典』、『ビジネス技術実用英語大辞典V6』(すべて小学館)

「きゃぱい」の使い方
「きゃぱい」は、気持ちが追い詰められているときにも、高揚しているときにも使える表現です。具体的な例文で、どのような場面で使われているかをイメージしてみましょう。
ネガティブな意味の「きゃぱい」の使い方例
受容力が不足した状態を表す「きゃぱい」は、心身に余裕がなくなった場面や、タスクが多すぎるときによく使います。
「胃がきゃぱい」
「胃のキャパオーバー」という意味で、お腹がいっぱいになったとき、物理的な限界を超えた感覚を表現します。
例:
「食べすぎて胃がきゃぱい」
「最近、お酒きゃぱいんだよね」
「仕事が重なりすぎてきゃぱい」
忙しすぎで、余裕がなくなっている状態、処理能力が限界に近づいている感覚を表しています。
例:
「働き詰めで睡眠足りなくてきゃぱい」
「レポートが終わらなくてきゃぱい」
ポジティブな意味の「きゃぱい」の使い方例
若者の間では、いい意味で気持ちが高まったときにも「きゃぱい」と表現されることがあります。以下に例を紹介していきましょう。
「今回のライブガチできゃぱい」
こちらは、肯定的な意味での「やばい」と同じく、心が大きく揺さぶられ感動している場面で使います。
例:
「推しの笑顔きゃぱい」
「この限定コスメ、きゃぱい」
「家の近くに好きな店できてきゃぱい」

「きゃぱい」と似ている他の言葉
同じ若者言葉や、意味が似ている言葉を集めました。それぞれのニュアンスの違いを知っておくと、より表現への理解が深まります。
「詰んだ」
行き詰まってどうにもならない絶望的な状態を指します。「キャパオーバー」に近いネガティブなニュアンスです。
例:
「終電逃して詰んだ」
「明日締切なのに終わらなくて詰んでる」
「きつい」
「しんどい」「苦しい」といった意味で、限界を超えたときに使われます。
例:
「予定詰まりすぎてきつい」
「お腹いっぱいできつい」
「アツい」
こちらはポジティブな意味の言葉です。「最高」「すごく良い」「期待できる」という高揚感や興奮の意味です。
例:
「え、それはアツい!」
「この展開アツすぎる」
「きゃぱい」と関連語
「きゃぱい」には、「キャパ」「キャパる」「キャパがない」など、「キャパシティ」に関する表現が多くあります。いずれも受容力や収容能力を軸にした言葉です。
「キャパる」「キャパった」
キャパシティが限界に近い状態を指す表現です。
「キャパがない」「キャパが狭い」
「キャパがない」「キャパが狭い」は、物事を受け止める余裕がない心理状態を指す言い方です。タスクが重なり、余裕がないことを示す語として理解しておくと、会話への理解が高まります。

「きゃぱい」に関するFAQ
ここでは、「きゃぱい」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「きゃぱい」は、感動や喜びで「泣く」時にも使えますか?
A. 喜びの感情が容量を超えてしまう場面でも使われます。「きゃぱい、泣く」のように組み合わせて使われることもありますよ。
Q2. ビジネスシーンで上司に使うのはNGですか?
A. 「きゃぱい」は極めてカジュアルな表現のため、ビジネスシーンには不向きでしょう。
業務上の報告や目上の方への敬意を示すべき場面では「業務が多忙で」や「対応が難しい状況です」など、具体的で丁寧な言葉を選びたいですね。
Q3. 「きゃぱい」は正式な日本語として辞書に載っていますか?
A. 一般的な辞書に掲載はありません。もとになる「キャパ」「キャパシティ」の理解を前提に使う若者言葉の一つです。
最後に
若者の言葉には、その時代のスピード感や感情のテンションが反映されています。
「きゃぱい」もまた、現代の感覚から生まれた言葉で、容量や受容力が限界に近い状態を示す言い方として押さえておくと、円滑なコミュニケーションに役立ちます。
大人の語彙力として若者言葉のトレンドを理解しておくためにも、ぜひ活用してくださいね。
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