「勧善懲悪」はどんな意味?
「勧善懲悪」とは善行を奨励し、悪行を罰することを指す四字熟語です。この概念は、悪行を許すことなく、善業をおこなおうとする信念に基づいています。
本章では勧善懲悪という言葉について、読み方や意味、例文、語源を解説するため、ぜひ参考にしてください。
「勧善懲悪」の読み方・意味
勧善懲悪は「かんぜんちょうあく」と読みます。一見難しい四字熟語であるように感じられますが、勧善懲悪は「善を励み、悪を罰する」という意味を持ちます。
シンプルに言い換えれば「よい行動を勧め、悪事を懲こらしめる」という意味です。
アニメや映画の物語に頻繁に登場する言葉であり、スーパーヒーローが善良な市民を悪から救うといったストーリーも、この概念に基づいて展開されているといえます。
かんぜん‐ちょうあく〔クワンゼン‐〕
出典:小学館 デジタル大辞泉
善事を勧め、悪事を懲らすこと。特に、小説・芝居などで、善玉が最後には栄え、悪玉は滅びるという筋書きによって示される、道徳的な見解にいう。勧懲。
「勧善懲悪」の例文
勧善懲悪を用いる際は、以下の例文を参考にしてください。
・この映画は、主人公が悪の組織と戦いながら、善良な市民を守るために奮闘する「勧善懲悪」の物語を描いている
・漫画のなかではヒーローが悪者を倒しながら、善行をたたえて悪行を罰する「勧善懲悪」の精神が強調されている
・このテレビ番組は毎回、主人公が悪事を働く人々に正義を示している。善を勧め、悪を懲らしめる「勧善懲悪」のストーリーだ
「勧善懲悪」の語源
「勧善懲悪」という四字熟語の起源は、孔子が編纂した歴史書『春秋』の注釈書である『春秋左氏伝』に由来するとされています。
また、聖徳太子が制定した十七条の憲法には「悪を罰し、善を勧めることは古くからの良い慣習である」という意味の一節があります。このことから日本でも、「勧善懲悪」の考え方が古くから根付いていたと考えられます。
「勧善懲悪」の対義語3つ
「勧善懲悪」は、善を奨励し悪を罰することを意味します。勧善懲悪の対象的な表現としては、悪逆無道や極悪非道、跳梁跋扈が挙げられるでしょう。
いずれも道徳や正義に反する行為や、悪意に満ちた振る舞いを指す言葉です。社会的な秩序や公正から逸脱した状態を表す言葉としても広く知られています。それぞれの四字熟語についてみていきましょう。
1. 悪逆無道
「悪逆無道(あくぎゃくむどう)」は、道徳や法に反する極めて悪質で非道な行為や振る舞いを指す言葉です。その字義通り「悪逆」は、正当な秩序や権威に逆らい、不正や悪事を働くことを意味します。
そして「無道」は、道徳的な規範や正義を無視し、道理にはずれていることを指す熟語です。
2. 極悪非道
「極悪非道(ごくあくひどう)」は、悪行や非道な行為を極限まで達成した状態を指す表現です。悪いことや非道なことを指す熟語のなかでも、その度合いが非常に深刻で極端な状況を表現する際に用いられる傾向にあります。
3. 跳梁跋扈
「跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)」は、思いのままに横暴で傲慢な振る舞いをする様子を指します。また、悪人がのさばり続ける様も表す言葉です。
社会や組織における跳梁跋扈の例としては、特定の個人や勢力が自己の権力や影響力を乱用して他者を圧倒したり、法や規範を無視して振る舞ったりする様子が当てはまるといえるでしょう。
不当な支配や挑発的な振る舞いをする人物・集団に対する、批判的なニュアンスを含む四字熟語です。
「勧善懲悪」の類義語2つ
勧善懲悪の類義語・言い換え表現には、遏悪揚善や破邪顕正などが挙げられます。いずれも「善を勧め、悪を懲らす」という意味を持つ言葉です。
本章ではそれぞれの四字熟語について解説します。
1. 遏悪揚善
「遏悪揚善(あつあくようぜん)」は、悪を抑えて善を挙げるという意味を持つ四字熟語です。倫理的な行動や社会的な正義を重視し、悪を防ぎつつ善を奨励するおこないを指します。
2. 破邪顕正
「破邪顕正(はじゃけんしょう)」は、仏語に分類される四字熟語です。邪悪や偽りを打ち破り、真実や正義を明らかにすることを表しています。
具体的には、人々が迷いや誤解によって生じる邪念や邪悪から自己や他者を守り、善良な道筋へと導く行為のことです。
「顕正」は、正しい仏の道理をあらわし示すことという意味を持つ言葉です。
「勧善懲悪」を正確に使えるようになろう
「勧善懲悪」は、善を奨励し悪を戒める意味を持ち、道徳的な行動を促す教訓です。その対義語や類義語からも、善と悪の対立を示し、正義を重んじることの重要性が強調されているとわかります。
社会や個人の行動において善を励み、悪を制することが求められることを教えている四字熟語なので、普段から「勧善懲悪」の精神を大切にしたいものですね。
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