「腹が減っては戦ができぬ」とは
「腹が減っては戦ができぬ」ということわざがありますが、この言葉の正しい意味を知っていますか? 会話で使うこともできる「腹が減っては戦ができぬ」について、意味や英語表現、使い方などをまとめました。まずは、意味を見ていきましょう。
意味
「腹が減っては戦ができぬ」とは、文字通り「空腹では何をやっても身が入らず、成果が上がらない」ことを表します。「はらがへってはいくさができぬ」と読み、物語でセリフとして登場することもあるでしょう。
実は、「腹が減っては戦ができぬ」と同じ意味を持つ似た言葉があります。それが、「腹が減っては軍は出来ぬ」です。
「腹が減っては軍は出来ぬ」の意味
腹(はら)が減(へ)っては軍(いくさ)は出来(でき)ぬ
読み方:はらがへってはいくさはできぬ
空腹では十分に活動できない。よい働きをするには、腹ごしらえが第一である。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「軍」は、「戦い」のやや古風な言い方。「戦」と同じ意味と考えてください。漢字や助詞が一部異なりますが、おそらくこの2つは同じ言葉。どちらを使っても問題ないでしょう。なお、この記事では「腹が減っては戦ができぬ」で表記を統一します。
「腹が減っては戦ができぬ」の英語表現
「腹が減っては戦ができぬ」を英語で表現する場合は、次の言葉を使うといいでしょう。
An army marches on its stomach.(軍隊は胃袋で行進する)
「軍隊は胃袋で行進する」、つまり空腹だと軍隊は進むことができないという意味。食料を補うことや、食べることの大切さを説く英語表現といえるでしょう。
「腹が減っては戦ができぬ」の使い方
「腹が減っては戦ができぬ」の使い方を見ていきましょう。どのように使うのでしょうか?
どういうシチュエーションで使う?
「腹が減っては戦ができぬ」を使うのは、勝負のときや、何かに取り組むときでしょう。しっかりと腹ごしらえをして挑むことが大切であることを意味する言葉ですから、空腹の状態や、何かを食べる前に使われるかもしれません。
「腹が減っては戦ができぬという」「腹が減っては戦ができぬという言葉がある」「腹が減っては戦ができぬだ」のような言い回しをします。
例文
「腹が減っては戦ができぬ」の使い方を例文で見ていきましょう。
《例文1》今日は残業になりそうだから、今のうちに食べる物を買っておこう。「腹が減っては戦ができぬ」というからね
残業になり、お腹が空くことを見越して食べ物を買おうと準備をするさまを表す例文です。何事もまず腹ごしらえをしてからというのは、みんなに共通することかもしれません。
《例文2》「腹が減っては戦ができぬ」という言葉があるので、面接前にたくさん食べたら、眠くなってしまった
たくさん食べて準備万端で挑もうとして、食べ過ぎてしまい眠気に襲われていることを表す一文です。満腹になると、眠くなってしまいがち。何かに挑む前に食べるときは、腹八分目にとどめるほうがいいかもしれません。
《例文3》今日のプレゼンのことを考えると、まったく食べる気にならない。しかし「腹が減っては戦ができぬ」だから、少しでも食べなければ
緊張したり、プレッシャーを感じたりすると、食欲が減退する人もいるでしょう。だからといって食べないのは、頭や体によくないと考え、無理やり食べることもあるのではないでしょうか? 例文はそのような心境を表しています。
会話で使う場合
「腹が減っては戦ができぬ」を会話で使うパターンを見ていきましょう。職場で先輩と後輩が話をしています。
後輩「先輩、ちょっと小腹が減ったので、お菓子をつまんでいいですか?」
先輩「別にいいけど、さっきも食べていたよね?」
後輩「緊張しているからか、お腹がすいちゃって」
先輩「腹が減っては戦ができぬというから、食べたくなるんだろうけど、少し食べ過ぎじゃない?」
「腹」を含む慣用句5選
ここからは「腹が減っては戦ができぬ」にもある「腹」を含む慣用句を紹介します。5つの言葉をピックアップしました。
「茶腹も一時」
「茶腹も一時」とは、茶を飲んだだけでも、しばらくの間は空腹をしのぐことができることの意。わずかなものでも、一時しのぎになることのたとえとして用いられる言葉です。読み方は「ちゃばらもいっとき」。
《例文》説明会が延び、空腹で困ったが、水を飲んでなんとかしのいだ。茶腹も一時とはよくいったものだ
「腹に一物」
「腹に一物」とは、心の中にたくらみがあることを表す言葉。「はらにいちもつ」と読みます。「いちもつ」を「いちもの」と読むのは誤り。言い間違えに注意したいですね。
《例文》あのドラマに出てくる脇役の彼、どうも腹に一物ありそうな気がして、気になるわ
「私腹を肥やす」
「しふくをこやす」と読む「私腹を肥やす」。公の地位や立場を利用して、不当に自分の財産を殖やすことを意味する言葉です。「私服を肥やす」と書くのは誤りなので、注意してください。
《例文》あの政治家が企業に便宜を図って、私腹を肥やしていたことがわかった。本当に許せない
「自腹を切る」
必ずしも自分が負担する必要のない経費などの費用を、自分の金で支払うことや、身銭を切ることを表すのが「自腹を切る」。「じばらをきる」と読みます。
《例文》いくらお願いしても会社が買ってくれないので、自腹を切って文具品を買うことにした
「片腹痛い」
「片腹痛い」とは、他人が実力以上のことを行っているのが、こっけいで苦々しく感じるさまを表す言葉です。「かたはらいたい」と読みます。相手の身のほどを知らない態度がこっけいで、おかしくてたまらないということを表現するときのたとえとして用いられています。
《例文》あの程度で上手くいくと思っているなんて、私からすると本当に片腹が痛いよ
最後に
「腹が減っては戦ができぬ」とは、空腹だと何をやっても身が入らず、成果が上がらないことを表すことわざです。何をやるにも、食欲が満たされていなければ上手く機能しないことや、基本的な欲求を満たすことの大切さを説く言葉といえるでしょう。
試験や仕事、スポーツなど、何かに取り組むとき、空腹だと集中力が落ちてしまいがち。準備の際は食事のことをしっかり考えたいですね。
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